1993年5月16日、パンクラス設立発表記者会見が行われた(この日より株式会社ワールドパンクラスクリエイトが発足)。参加選手は船木誠勝、鈴木みのる、冨宅祐輔(現・飛駈)、高橋義生、柳澤龍志、稲垣克臣、國奥将竜(現・麒樹真)、ウェイン・シャムロック。この場で「リング上は完全実力主義」と発表された。つまり真剣勝負としてのプロレス団体の設立である。だがこの真剣勝負という言葉をパンクラスは封印した(公には2001年9月30日・横浜文化体育館で鈴木みのるがリング上で発言するまで封印され続けた)。「真剣勝負」という言葉は団体のウリになる。 だがそれを発言しなかったことがパンクラスの現在に至るまでの歴史において数々の論争を生むことにもなったと言える。おって、スローガンとロゴマークが発表される。ロゴマークに書かれた「HYBRID WRESTLING」は、あらゆる格闘技のエッセンスを交配して進化する雑種格闘技であると説明され、そのクロスしたロゴマークは斬新的なデザインとしてプロレス界にデザイン革命を起こすことになる。

また、パンクラスでは身体作りにも着手した。これは廣戸聡一トレーナーからの、パンクラスに協力するにあたってのリクエストでもあった。廣戸トレーナーと船木の指導のもと、各選手が旗揚げ戦に向けて身体作りに取り組んだ。そして、道場開き第1回入門テストプレ・デビューイベント合同合宿と続き、それぞれの中身の斬新さもあり、旗揚げ戦への期待は否応なく膨らんでいく。



05.16 :  パンクラス設立
06.14〜20 :  船木・鈴木、オランダ視察
06.21 :  格闘技道場パンクラス(横浜)道場開き
7月上旬 :  スローガン・ロゴマークを発表
07.23 :  第1回入門テスト
08.04 :  金丸智行、格闘技道場パンクラス入門
08.15 :  旗揚げプレイベント「PANCRASE PRE DEBUT AT TFM」
08.19 :  公開合宿
08.22〜28 :  柳澤タイ武者修行
08.27 :  旗揚げ戦(9/21東京ベイNKホール)対戦カード発表記者会見
09.01 :  加藤誠、格闘技道場パンクラス入門


船木・鈴木、オランダ視察
1993年6月14日〜20日、船木と鈴木はオランダへ視察に出向く。目的はオランダでの選手発掘である。
何人かの選手とコンタクトを取った。その中でも運命的な出会いとも言えるのがバス・ルッテンである。その驚異的な身体のバネは二人を驚かせた。そしてこれがキッカケとなり、彼は旗揚げ戦のリングに上がることになる。

格闘技道場パンクラス(横浜)道場開き
1993年6月21日。ようやくパンクラスの地盤となる道場『格闘技道場パンクラス』が神奈川県横浜市港北区(現都築区)に完成した。敷地は60坪の広さで、練習場にはリングがあり、その横には神奈川県アマレス協会から贈られたアマレスマット、そして船木が自宅で使用していたトレーニング器具も置かれた。カーテンで仕切られた奥は食堂と選手の合宿所となる6畳のプレハブ部屋が3つ置かれ、高橋、柳澤、稲垣、國奥の4人が入居した。
鈴木が実際に20件ほど物件をまわり、設立3日前に道場の大家さんを口説き落として安価で借りた、まさに最良物件である。最良というのは広さも勿論であるが、周辺に娯楽が何も無く練習だけに打ち込むことが出来る、選手にとっては最高の環境である。
この日、13時よりマスコミ・関係者へのお披露目を兼ねた道場開きが行われた。神主さんによるお祓いの後、船木、鈴木、冨宅、高橋、柳澤による豪快な鏡割りで盛大にその船出を祝った。

スローガン・ロゴマークを発表
団体のスローガンとロゴマークが発表された。スローガンである「HYBRID WRESTLING」と、団体名である「PANCRASE」をクロスしたそのロゴマークは、当時としては斬新であり、その視覚的効果はパンクラスの知名度を高めることに一役買った。
また旗揚げ戦が9月21日・東京ベイNKホールに決まり、ツアー名は「YES, WE ARE HYBRID WRESTLER」と発表された。 そして旗揚げを前に、プレ旗揚げイベントが8月15日・東京FMホールで行われることも合わせて発表された。
■スローガン
“ハイブリッド(雑種)レスリング”は、「様々な格闘技のエッセンスを消化することによって進化し、最強のスタイルをつくる」という、パンクラスの方向を示す。
『柔道の投げが素晴らしいなら、その血を入れよう。ボクサーのパンチこそ本物というなら、教えを乞おう。そして俺が最強になる。初めての技術は闘いのDNAに記憶され、ハイブリッド(雑種)レスリングはまた一歩、新たな進化を遂げるのだ。これは、もはやスポーツなどではない。格闘技の交配によって、人間がどこまで強くなれるかを問う、壮大な実験である。』

■ロゴマーク
クロスをテーマにしたマークは格闘技の交配、すなわちハイブリッド・レスリングの考え方を象徴する。


柳澤龍志、タイ武者修行
柳澤龍志は8月22日〜28日までタイで武者修行を行った。全日本キックボクシング連盟が企画した「前田憲作と一緒に行くムエタイツアー」のゲストという形での参加である。これは年頭の1月31日『トーワ杯カラテ・ジャパン・オープン』で、柳澤の健闘ぶり(ベスト8に入賞)を見た全日本キック関係者からのお誘いである。練習はムエタイの名門ジム「ソーワラビン・ジム」と「ギャラクシー・ジム」で行った。1週間という短期間ではあったが、前田憲作と共にムエタイテクニックの指導を受け、良い刺激となったようだ。