●さて、ムリーロ・ブスタマンチ戦です。まず、相手のことをどういうふうに評価してますか。
菊田:柔術の中でも、グレイシー柔術とブラジリアン柔術ってのがあって、ヒクソンは別格としても、グレイシーと名前がついてるからといって、だから強いとは限らないわけですよ。ホントの柔術トップと言えるのは、ブラジリアンの試合に出て勝ってる選手。その中でもサウロ・ヒベイロやブスタマンチっていうのは、トップ中のトップなんですね。しかも彼はヴァーリ・トゥードの闘い方もすごく巧い。やっぱり柔術のランクは、そのままヴァーリ・トゥードに当てはまらないんですよ。例えばムリーロより強い柔術家がいて、マウント取ってムリーロよりキープの仕方が巧いとしましょう。でもヴァーリ・トゥードの場合、パンチを出しますよね。そのパンチの出し方が、ムリーロのほうが巧かったりするわけですよ。そういうわけで「総合的に強い選手」だなあっていう。

●逆にブスタマンチにしてみれば、菊田選手って、自分がこれまで対戦してきた相手の中でどういう選手になるんでしょう。やっぱり柔術系の選手として見てるんでしょうか。
菊田:そうでしょうね。

●その同じ技術で、まともに行きます?
菊田:やりますね。

●特別なことは考えてません?
菊田:あえて言うなら「ムリーロの上になる」ってことだけです。僕はやっぱ寝技しかないんで。もちろん打撃はそんなに行かないですよ。でもそれをフェイントで使って、なんとか投げたい、倒したい。そこで今レスリング練習してるんですけど。これで上になれれば、八割九割は取られることはない。レスリング負ければどうなるか分からないんで、そのへんがポイントでしょうね。なんでパンチはあくまでフェイントで、レスリングにこだわるかというと、安生さんの試合(今年4月にUFCジャパンでブスタマンチと対戦)ありましたね。多分(安生選手は)K-1の試合とかに出て、かなり打撃の練習に時間費やしたと思うんですよ。だけどゴング鳴ってどうなったかっていうと、一発パーンと行ったところをムリーロにダッキングされて、そのまま腰に付かれてグラウンドにもっていかれちゃったんですよ。打撃を出せばスキができますよね。打撃のスペシャリストならいいですけど、僕の打撃じゃ逆に寝技で不利になるだけですから。だからそこは無視して、スタンドレスリング勝負。八割はそこで決まると思います。

●なるほど。向こうもそんな打撃には来ないですね。
菊田:絶対来ないですね。もし来たら、倒すチャンスはすごくある。

●まさに、グラップリング馬鹿、日本ブラジル対決。
菊田:はい。…ただ、ファンの人、あんまりよくブスタマンチのこと知らないと思うんですけど。

●そんなことないでしょ。あ「ホントの凄さ」ってことですか?
菊田:僕にとってみれば、これがホント、ホントの憧れの選手だったんで。4年くらい前にバーンと出てきた頃から、ずっと注目してましたから。

●トム・エリクソン戦ですか。
菊田:そうですね。あれで引き分けたときに「ああ、この人が柔術界で一番強いのかな」と思ったくらいの選手なんで。すごく特別も特別。

●念願の対戦なんですね。
菊田:やれるってだけでも、もう。これ(掲載は)ナシでいいんですけど、実は彼が来日するたびに僕、写真撮ってます(笑い)。それくらいファンなんです。アブダビ行っても話しかけて。「いやあ、ムリーロ、俺のこと知ってたよ」みたいなね(笑い)。

●ちょっと今、聞いてて不安になったんですけど(笑い)。大丈夫ですか?
菊田:大丈夫です(キッパリ)。それと試合とは別ですから。でもそれくらい尊敬してる選手だってことは間違いないです。いや、僕らヴァーリ・トゥードでやってる選手にしてみたら、彼は憧れもいいとこですよ、やっぱり。ホントに柔術の技術で勝ってきてる選手なんで。

●それに、柔術の技術で勝ちたいんですね。
菊田:そうです。だからパンチで勝ってもしょうがないんですよ。寝技が楽しみなんですけど、僕、ヒーガン・マチャドとアブダビでやったとき、完敗したんですよね。取られはしなかったですけど、パスガードされて抑えこまれて、実力の差っていうのをすごく感じたんですよ。それから二年たって、今の自分の技術が柔術トップにどれだけ対抗できるのかっていうのがすごく楽しみですね。

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