●今日、船木さんの試合結果、全部出力してきたんです。
船木:俺も最近、それよく見るんですよ。一番調子のいい時って、ここ(96年頃)なんですよね。で、やけに早いんです。試合がみんな。この近藤とやる前くらいですかね。フランクの後から。それからルッテンにしか負けてない。しかも17分もやってる。この頃は負ける気しないっていうのがずっとあったんですよ。相手の前に立つだけで、相手が何かちょっと後退してくるっていうか、そういう感じでしたね。

●船木さん自身で、自分のピークはそのへんだと思いますか。
船木:今、思い返せばそう思います。ちょうどトレーニング方法を変えだしたのが、こっからですね。近藤に負けてから(97年)。このへんから練習の量を減らしていって。

●できなくなったってことですか。
船木:そうです。この頃はもう、傷めても注射打って麻酔かけて、それでやってるような状態でしたから。

●今、総合格闘技とかそういうものが普通にやられるようになってきて、これだけの試合数を年間やってる人っていないですよね。
船木:いないですね。たしかに少しは実力差のある選手ともやってるんですよ。だから目茶苦茶つらいって感じではなかったですけど。でも、毎月試合があるっていうのは、完全にUWFからの流れで、「やらなきゃいけない」っていう。

●そういう状況に疑問はなかったですか。
船木:なかったですね。5エスケープにも疑問はなかったです。今思うと大変ですよね。

●いちど決められてるのに、またやらなきゃならない。だからこう(試合結果を)見返して、一番思ったのはまず試合数ですね。モーリス・スミスとやった頃なんて、月三試合のペース。
船木:高橋と終わった後で、ちょっと「だるいな」と思いましたね。だけど次の年の頭にルッテンとやってるんですよ(笑い)。

●ピークは96年ですか。体大きくしてた頃ですね。その先にルッテンとのタイトルマッチがあった。
船木:96年の中で一番の目標だったのが、ベルトを巻くことだったんですよ。それがルッテンに敗れて、一瞬「これだけ調子いいのに負けてる。これはもう無理だろう」と思ったんですね。それまでがすごい自信があったから。

●その頃言ってましたもんね。
船木:ええ。なのに負けて、本当に無理だろうなって思ったんですけど。もしかしたらここで一回引退したかもしれないんですよね。でもこの時に引退してたら、やり残したことあるんで、もしかすると一年後くらいに戻ってきたかもしれない。よくボクサーの人とかでもいるじゃないですか。一年休んで復帰とか。そういう形をとったと思うんです。だけど一人のファンが、ルッテン戦が終わってマイク掴んでしゃべろうとしている時に「船木、やめないでくれー!」って。必死でこう訴える人が一人だけいたんですよ。

●(笑い)一人じゃないですよ。
船木:いや、一人だけそばまで来たんですよ。それで「現役続行」ですよね。

●その時そのファンがいなかったら…。
船木:一回引退。「休む」って言ったかもしれないですね。

●その後、すぐやりましたね。
船木:やりました。

●ベルト挑戦トーナメントだ。あれ、どうでした?
船木:気乗りしなかったですね。気乗りしなかったけど、やって、結果、十二月にチャンピオンになってしまったんです(笑い)。

●(笑い)なってしまった。そんな感じですか。
船木:そうですね。ホント、だから逆にそれが(自分を)急がせたっていうか、寿命を縮めたっていうか。…ヒクソン戦が決まる前ですね、ちょうど…

●パンクラチオンマッチを始めた頃ですか。
船木:ええ、その頃に、そろそろ身をたたむ準備をしようと思ったんですね。まあ闘った相手には悪いんですけど、テーマのない闘いはしたくないって思ったんですよ。それでいくつか自分のやりたいテーマを書いて、こっから後二年くらいですか、その間にこれをやろうと思ったんですね。

●書いたこと、ぜひ教えてもらえませんか。
船木:まずアルティメット。オクタゴンに挑戦ってことですね。何人か選手の名前を挙げて。それからもう一回タイトル狙おうということ。引退試合誰とやろうかなということ。その時はとにかく鈴木が調子悪くて、無理だろうなって思って…。ちょうどその頃に謙吾が出てきたんで、謙吾と。そういうふうに思ってたんですね。で、その二年の間で、やってない若い選手いるじゃないですか。その選手と全員やっておきたい。と思ってたら、ヒクソン戦が決まったんですよね。ホント不思議で。残された二年間(の過ごし方)を、このヒクソン戦で全部まとめられるんじゃないかと思ったんですよ。

●もうやり残したって感じはないんでしょ?
船木:ないですね。オクタゴンとか以上のものが、あそこにはありましたからね。ホント逃げが利かない場所が。そういった意味では究極でしたね。

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