悔やんでも悔やみきれない

●欠場してから初めてのインタビューですよね。今回いちばん聞きたいのは、その間どんなことを考えてたかっていうことなんですね。
郷野:ああー。

●ひとつだけ、雑誌に入院日記が出てましたね。全然ヘコんでなさそうな(笑い)。ホントはいろいろキツい思いもあったと思うんですが。
郷野:まあ、過ぎちゃえばもう忘れてるんで。そんなにキツくなかったと思いますよ。入院中にやってたことといったら、こっそりフトンの中でメール送ったりとか本読んだりとか、あの日記を一生懸命執筆したり。で、看護婦さんに写真を撮ってもらって。うーん、だから特に考えたことはないですね。

●そうですか。入院中の選手って時間がたっぷりあるから、自分のこれまでのこととか今後のこととか考えるって聞きますけど。
郷野:ま、考えたんでしょうけど、覚えがないですね。ホントに考えてたんだったら結構覚えてるはずなんですけど、「隣のおっさんのイビキがひどかった」とか、そういうのしか覚えてないですから。庇ぇこくし、ブーブーブーブー(笑い)。

●あの近藤戦は、振り返って郷野さんの中ではどんな試合だったんですか。
郷野:「やっちゃったな」っていう。ま、油断ですね。俺の言葉に乗って周りが盛り上がったけど、いま思うと自分で自分の言葉に乗せられて、最後に救急車にまで乗せられちゃった(笑い)。

●菊田さんからはどんな話を?
郷野:「自爆だね」って感じで。結局、相手が強いとかじゃなくて俺のほうに気のゆるみがあったということで、うん。

●えー、そうですか?僕はあれだけのことを言ってたんだから、相当の心構えも覚悟もあったと思いますけどね。
郷野:いやあ、心の底からナメちゃいましたからねえ(笑い)。悔やんでも悔やみ切れないですね。

●でも「次の試合は気を引き締めて」って感じもなさそうですね。
郷野:次?いけないんでしょうけど、ま、性格ですからね(笑い)。

●自分ではどういう性格だと思います?
郷野:飽きっぽいですね。集中力も続かないし。

●試合中に別のこと考えたり?
郷野:考えますね。たとえばコーナーで差し合ってるときとか、チラッと客席に視線を落として「可愛いコいるかな」とか(笑い)。

●見えますか?
郷野:見えますね。最前列で女のコがこんな顔して「あ~こんな怖いコトやってるぅ」みたいなの見ると、「俺ってすごく見えるのかな」って思って、つい肩パンチやったり(笑い)。

●えっと…ほかに原因は考えられます?
郷野:うーん、疲れちゃいました。

●スタミナ負け?
郷野:スタミナですねー。1ラウンドやって疲れなきゃ全然負けないなと思ったんですけどね、疲れちゃいましたね。

●ismの選手って全体にスタミナ感じません?
郷野:ま、技術ないから。スタミナだけはありますね。

●あ…。
郷野:ただやっぱり、体力とスタミナがあるっていうと、それだけでかなり技術の差、つまっちゃうんですよね。特に長引けば長引くほど。それを感じましたね。ただ俺、近藤以外だったらスタミナ負けはすることはないと思うんですけどね。だって山宮戦でも俺のほうが全然スタミナ残ってたし。渡辺戦はまあ、疲れる前に終わっちゃったから何ともアレだけど。

●あの、ismのシステム…つまりほとんど素人みたいな新弟子採って雑用からなにからやって、それで選手になると。これに関して郷野さんはどう思ってるんですか。
郷野:俺は…時間の無駄だと思いますけどね。

●だったら練習したほうがいいと?
郷野:はい。ただそこで、多分精神力がつくと思いますね。つらいと思うんですよ。新弟子で雑用やって。先輩のシゴキとかもあって。よく夜逃げするっていうじゃないですか。そこで残った人は、試合でピンチになっても簡単にはあきらめないような精神力はつくと思いますけどね。

●逆にグラバカでは、そういう精神力が養いにくいということはあります?
郷野:うーん、まあそうですね。結局そういうふるいがないじゃないですか。僕たちはそういうふるいにはかけないですから、ただ単に強いか強くないかでチームに入るかどうかみたいな。だからそっから「技術のグラバカ」「体力と精神力のism」と。スタートから違いますね。

●なるほど。この試合のリベンジっていうのは、いまの目標にはなってるんですか。
郷野:そういうふうには思ってなくても、いつかまたやるだろうから。自分としてはあと3回くらいやりたいですけどね。3回全部やっつけて、溜飲を下げるというか、気持ちよく。

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