PANCRASE 1998 ADVANCE TOUR 1998.10.26 後楽園ホール

メインイベント ランキング戦 15分1本勝負
  • 船木誠勝
  • vs
  • 國奥麒樹真
×船木誠勝(15分00秒、判定)國奥麒樹真○

まず國奥選手、たいへん良いところがきちんと出た試合だったと思います。先輩・後輩、師弟対決みたいな書かれ方を専門誌でもされてましたが、それを意識して闘ったのはどうも船木選手のようでしたね。序盤、打撃は出しているんですが顔面に出していないんですよね。ボディ-という形ですよね。まあ、そういう部分では少し國奥選手を意識してしまったかなという感じですね。國奥選手は逆に、あの素直な性格がそのまま出ました。来い!、闘え!と言われたから、僕は闘うという様な純粋な気持ちですよね。船木選手が闘えと言ったから僕は闘います、と言ったような形で、國奥選手はどちらかというと船木選手を意識して闘っていると言うよりは、相手が船木選手かどうかということよりは自分が一生懸命闘うんだと言うことを努めてやったと。

その差がどうもグラウンドの攻防から、一瞬にして膝十字の形に入っていった、あの國奥選手の切れ味と言うんですか、國奥選手の真骨頂なんですが、柔術の特訓というのが功をそうした、そんな感じだったと思います。そんな形で一瞬の隙を突かれたという感じでしょうね。後半エスケ-プを取られてから船木選手は有る程度膝蹴りですとかラッシュを駆けていきましたけども、國奥選手のガ-ドが固かったということですね。

ここもキ-ワ-ドになるのは、國奥選手のすごく良いところ、これはきちんと立っていること。これは立った姿ということと、自分がどこに立てば相手の攻撃をまともに食らわないかということ。もしくは、相手の攻撃を出しにくくさせるかということ、自分が何処に立てば相手の動きを封じ易いのか、自分が相手から封じようとしたものを相手が逃げないようにするには、どこに居れば良いのかということを、なんというか國奥選手もものすごい格闘センスの中で身に付けて来てるんですよ。それをしっかり理論として身に付けようとしているところが、やはり凄く良かったんですね。打撃と組技というものをやはりさっきの山宮選手と同じ様に統一化して闘おうとしているところというのが、すごく見てとれました。

船木選手としてもさほど調子が悪くはなかったと思うのですが、船木選手にしては國奥選手の闘い方からしてやはり、いつもよりは一つの技にこだわったというんですか、通常だったらここまで攻めて取れなければ他の技に移ろうという部分がやはり業師、テクニシャンの國奥選手を相手にしている部分だけ技の転化するとき逆に切りかえされるんじゃないかということがあったと思うんですよ。と言うことでちょっと粘って技を掛けた為に逆に自分が疲労したり、身体を痛めるということがちょっとあったような気がしました。船木選手もちょっと試合の間近になって右肩をケガしまして、それが試合中ちょっと動きのなかで強引に技を掛けた時に再発させたような感があったので、そういうことも大きく作用しての勝敗だったと思います。しかしこれは船木選手が負けたというよりは、國奥選手が勝ったんだという風に捉えてあげたほうが良いと思います。

一生懸命闘った船木選手に対しても、國奥選手に対しても、ファンの方は失礼にあたりますので、勝ったのは國奥選手ですから、船木選手が負けた試合と捉えないようにしていただきたいですね。船木選手は膝十字をとられたんですが、これもそうとうにこらえました。足首、膝をのばされないというとこでかなり執拗に崩しにかかりましたし、國奥選手は逆に半分技を解かれながら、そこからまた膝十字にちゃんと持ってこれるという部分では、柔術のテクニックもそうとう身につけて居るぞという感が拭えませんでしたね。これが旧ル-ルだったら、多分船木選手はすぐエスケ-プしたと思うんですよ。現行の新ル-ルになった為にそう簡単にエスケ-プが出来なくなった。いままでだったらすぐエスケ-プして、体勢を整えてすぐエスケ-プを取り返しにいけばいいやという部分で見切りが出来たと思うんですが、やはり現行ル-ルではそれが直ぐに出来ないというところも何かまた試合の流れの彩を微妙に変えていく一つのエッセンスに成ったなと、僕はレフリングしながらそんな感じで思いました。

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