第8試合 (5分3R) ミドル級タイトルマッチ
○ネイサン・マーコート(3R 2分13秒、三角絞め)星野勇二×

マーコート選手は長い手足を駆使して大変バランス良く闘って行き、若い選手ですが勝負所、節目節目を大変心得た理解出来ている選手とイメージしてます。それに対して星野選手はレスリングをベースに大変攻撃的な思い切りの良い試合をします。星野選手自身がここのところ自分の中で伸び悩んでいると、勝利という一つの結果になかなか結びつかない、という事で星野選手自身が悩んでいる、という事を夏くらいに一度、私は言ったと思います。昨年のNBTの優勝というものの呪縛から早く逃れなくてはならないという様な時期を経て、今回、星野選手はタイトルの挑戦者となり、闘い方を見まして、どうもそれがカンフル剤となって一皮剥けてきました。やはり星野選手の場合は自分から攻撃を仕掛けて自分の展開をしていき、それをしつこく繰り返して行く間に自分の勝機が見えて来る、丁寧に丁寧に、しかも思い切り良く闘うという星野選手のスタイルが私は復活したような気がします。

2Rまではほぼ互角で進んで行き、終始グラウンドではマーコート選手がイニシアイチブをとるケースが多かったのですが、それにしても自分から仕掛けて行き攻め込んで攻め込んで行くだけにマーコート選手も逆に自分のペースで攻めあぐんでしまう、そんな繰り返しでした。試合は正に電光石火で決まりました。3R約2分、タックルからテークダウンを狙った星野選手に対して、何とマーコート選手は空中で腰の位置をスイッチさせて、キャンバスに自分が落ちて行く時には三角締めの形に既に入っている、というほど、あまりにも見事なクイックな攻撃でした。試合後に、とても素早いフィニッシュだったねと言ったら、当人はニヤッと笑っていましたが、それを狙ってやったのか、反射的に出たのか、いずれにしてもやはり、この一瞬のきらめきがあるから防衛する事が出来るんだな、懐が深いとはこういうことなんだなという事が強く試合後に感じた事でした。星野選手が試合中闘いの中で右肩を脱臼して攻撃力が落ちたというところもマーコート選手が勝利に起因、追い風になって事は否めませんが、試合中に既に星野選手の右肩を脱臼させたとすれば、さすが、という言葉以外にありません。

さて、この防衛が成功した為に國奥選手がマーコート選手のタイトルに挑戦するという図式が成り立った訳です。試合後、國奥選手と話す機会があったので、さあいよいよネイサンだぞ、どうするんだ、ということをちょっと聞いたところ、イメージしたらばデルーシア選手に近いのではないかなと、小柄なデルーシア選手の様な、たいへん似てるなという印象だという事を彼はちょっと語っていました。正にいいえてみょうかなと思います。パワフルには見えないけれども身体をきちんと使っていって下からの返しも、技に入るフィニッシュの正確さも正にそんなイメ-ジかなと思います。デルーシア選手程回転が速くて威力のある打撃の姿が見えない、姿を消しているというのはありますが、いずれにしろデルーシア選手も並みの選手ではないわけですから、そういうイメージをもって、緊張感を持って多分、國奥選手は試合に向けて練習して行くでしょうし、マーコート選手も日本に残って防衛戦に向けて練習を繰り返すという事ですから、これは12月の防衛戦は今回以上に目の離せない試合になるのではないかなと思います。攻撃一辺倒の試合が期待できるんではないかなと、そんなイメ-ジを与えてくれるメインイベントのタイトル戦でした。たいへん楽しみです。星野選手もマーコート選手をここまで追い込んだという事で、グラバカの勢いに負けずRJWの旗手になって旋風を巻き起こしてもらいたいなと思います。

今回の試合では7人の勝者がいるわけですが、勝利を得た7選手の共通点は何かというと、大石選手もレスリングをベースにして自分の信じた形を貫ぬき、岩崎選手もストライプルで行なっている、もしくはアマチュアの闘いの中で経験して来た、NBTの中で経験してきたという事をベースにきちんと組み立てて来た、三崎選手に関してはNBTで優勝したスタイルとその後の先輩達の姿を信じて自分のスタイルを作ってきた、窪田選手はDEEPなり対外試合なりプレッシャーのかかる試合を経てきた経験がようやく形に表れて来た、佐々木選手も自分の形を、バランスの良い闘い方を絶対に崩さない様に闘ってきた、郷野選手も更なる自分のパワーアップ、レベルアップを狙いながら安定した自分のスタイルを貫いた、マーコート選手に関しては節目節目勝負をかける時の閃光の様な一瞬の技をいつ出すかというところを虎視耽々と狙っていた。自分のスタイルを信じて闘った人間が7人、この日は勝利したんだというところに、選手の人はもう一度この現実を見て普段の練習をして行かないと、ただただ練習時間を積んでも、もう勝てない時代です。観客の皆さんも、そんな形の、スタイルの発見の仕方をして観てくれると面白いかなと思います。