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■ 第8試合 (5分3R) ヘビー級王者決定トーナメント決勝戦
○高橋義生(1R 1分12秒、KO)藤井克久×
実は高橋選手も近藤選手同様試合の10日か一週間位前からちょっと体調が良くなく、身体がぱんぱんに張ってしまい動きがかなり緩慢になってしまいました。その中で、最終的に調整をしていき試合を迎えましたが、試合の4〜5日前からミットを持つトレーナーも過去最高のパンチの威力で体重が増えたのではないか、と思われる様な本当に凄いパンチだという感想を漏らしていた事と、高橋選手はあらゆるパンチを打っても、どのパンチも威力があってコーチが悲鳴をあげてミットを置いてしまうのをみて奥歯で笑いをかみ殺した、という位、体は凄く安定して回転しているという状況でした。一般的には体がきれている、というコンディションで試合を迎えたというのは、やはりベテランです。そしてそこに新チャンピオン、試合後その“新”というのが大切だと語っていたのですが、やはり彼もUFCにはやり残した事があるという事もあって、ベルトを一つ土産に名乗りをあげたい、という事でのベルトを完全奪取するつもりでのこの半年間だったと思います。そういう並々ならぬものが普段安定して無表情で自分のペースでやっていく藤井選手の出鼻を挫いたのはやはりその迫力だと思います。頭を坊主がりにしたわけでもないし、元々人相が悪い事でもなく(笑)、内側からでるベルトへの執着というものが藤井選手はちょっとプレッシャーをかけられてしまったというところが、ちょっと見受けられたかなと思います。
藤井選手は自分の間合いに入る前に距離の長い強烈なフックを食らってしまった為に、その序盤のワンパンチで試合が決まったなと思いました。私はサブレフェリーをしていたのですが、パンチの攻防の後に序盤の何十秒代の中で一発目の右のリードからのフェイントの右フックが当たるのですが、その後にスタンドで組み合う様な形で、またそれをスタンドレスリングで追い込んで高橋選手がロープ際で外に出していくんですが、そこから立ち上がる藤井選手がふらついていたんですが、その時点でノックアウトになってもおかしくないくらいの良いパンチが当たっていました。藤井選手としては一発目を食らった事で試合を憶えていなかったかもしれません。それでもパンチに蹴りを合せて勝負に出ていくという所に、やはり藤井選手もこの後また再チャレンジをして、ベルトを巻いてくる時にはますます恐い存在になってくるだろうなという片鱗をみせました。いかんせんその後、波状攻撃で今度は右のフックからのパターンを左のアッパーに変えて行くという、その辺にベテランのクレバーな闘い方を見せた高橋選手が光って、それによってのノックアウト勝利という形でした。自分の形、闘い方をはっきりアピールしたという事では全8試合16人の選手の中で一番“らしさ”で闘ったと思います。体重を増やし体形を変え、闘い方に磨きをかけ、自分の可能性にどんどん集中していった高橋選手のベルトにかけての意気込みが届いたのかもしれませんが、UFCの方からチャンピオンベルトを一つの土産にオファーが来たという様な噂も聞いていますから、来年早々にまた動きがあるのではないかなと思います。万全をきし、UFCのヘビー級のタイトルホルダーになろうと高橋選手はがんばると思いますので、また来年もあの恐い顔に注目といったところでしょう。
第2試合の三崎選手、第3試合の美濃輪選手、第4試合の菊田選手、渡辺選手、第5試合の佐々木選手、第6試合の郷野選手、近藤選手、第7試合の國奥選手、メインの高橋選手といった、この日だけでもはっきりとした自分の目標を掲げて今年がんばった選手がそれぞれに結果をだしてきたと思います。明日を見つめて(こうなったら良いな、ではなく)明日の自分、未来の自分を自分の中で造形するという事を克服してきた選手に(大変息の長い、詰まった練習、もしくは課題ではあるんですが)、より多くの拍手が送られたんだなというところでの2001年、良い締め括りのパンクラスの試合だったのではないかなと思います。
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