第7試合 ライトヘビー級戦(5分2R)
△美濃輪育久(2R 5分00秒、判定)百瀬善規△

私は禅道会の選手達は相当レベルが高いと思ってますから、今回、美濃輪選手は体調を崩していたのですが、そんな事うんぬんよりも、危機感あるぞというのをそのまま見せてくれた試合でした。百瀬選手は本当に勇気のある試合をしてくれました。1Rは美濃輪選手が積極的にどんどん攻めて行きました。1R序盤からグラウンドに引き込んでのアームロック等で自分のペースで闘いました。殆どアームロック、バーに関しては殆ど決まりそうでした。私が止めてもおかしくないほど決まってました。百瀬選手の良い所は技術的な部分で身体を柔らかく使えるなというのを感じました。1Rで肘自体は決まりましたが、肩に近い部分の対処がまだ出来るだろうという事でギブアップしなければ止めないようにしようというところで、みてました。そうしたら案の定上手く柔らかさの中の技術で逃げてパスしてくれましたから、そういう意味で美濃輪選手は力を出しきってしまいました。逆に百瀬選手はそこから上手く立ち返ってくれたというところで2Rのフルタイムまで繋がったのではと思います。

後半はやはりちょっと疲れの見えた美濃輪選手に対して百瀬選手が立場を入れ替えてグラウンドから攻めて行くというのも十分見られましたので、そういうところでは大変面白い試合ではなかったかと思います。終盤間際30秒切った辺りからラッシュしたのは美濃輪選手でした。ここが美濃輪選手の怖さ凄さです。ただ、それは何回か繰り返していくと、それは美濃輪選手の形ではない闘い方だと思います。後半ラッシュしてがんばるというのは、おまけの部分、オプションの部分だと思います。美濃輪選手の闘い方は序盤できっちり決めて行く、取れる時に決めてさっさっと帰って行くのがスタイルだと思います。お客様はそれを望んでいる中でそれが出来ない時に最後にそれを出し切るという闘い方を賞賛するのであって、最後までだらだらと長引いて、そこで苦しくてもがんばる姿を期待してるわけではありません。そこを美濃輪選手は勘違いしない様にしないといけません。そういう中で一つ苦言を呈するならば剛の美濃輪に対して柔の百瀬というのがこの試合のイメージでした。ここで言いたいのは剛の美濃輪の時は弱いです。実は美濃輪選手は剛のタイプではなく柔のタイプです。柔のタイプの中でここぞという時に瞬発力を見せるのが柔術の使い方です。この試合は剛術に偏ってしまった為に危うい場面に落とされてしまったという感じだと思います。ですからその部分で自分の闘い方のイメージをきちんと取り直していく事。それをしないと剛の美濃輪は弱い、これが今回のキーワードだと思います。

この試合、判定の時、百瀬選手が後半がんばっていたので会場からドロー判定の時ブーイングもあったんですが、梅木レフェリーも私もドローにつけてます。何故かと言うと簡単な話しです。良く考えると1R関節を完全に決まった状態に持っていった美濃輪選手に我々はポイントをつけてません。タップ寸前まで追い込んで行った美濃輪選手に対して1Rの判定が10ー10です。だから後半少しがんばってパンチか何かが当たったとか、その様な所で観客の皆さんがワッと盛り上がってくれるのは構わないのですが、百瀬選手が美濃輪選手に何を決めたかというと特に技としては何も決まっていません。流れが百瀬選手に傾いたというだけです。それを考えたならば、このまま本当にシビアな判定をしたら、私は美濃輪選手につけたかもしれません。それ位技が決まりかかった、一本取れるか取れないかというのは重要な事です。ですからここで判定が梅木レフェリーとメインレフェリーの私がドローにつけたというのは、こういう状況でも間違いではないと自信を持って言いいます。観客の皆さんはその辺を今後見て頂くと、よりパンクラスの判定基準というのが明確になるのではと思います。