第8試合 ミドル級キング・オブ・パンクラス タイトルマッチ/5分3ラウンド
×國奥麒樹真(3R 4分36秒、KO/ヒザ蹴り)ネイサン・マーコート○

最後の最後に國奥選手はベルトを守る事ができなくて、たいへんガックリしたでしょうけれども、試合の方はマーコート選手も左の目尻を切ったりとかという形の、お互いがダメージの応酬というものでした。近い距離からの細かい打撃も両者とも上手く、スタンドのレスリングも両者ともに上手い。一年前、二年前の対決であれば、マーコート選手が長い手足を利してテコを使いながらコーナーに追い込んでいく、ロープ際に追い込んでいくという姿が見られたのですが、さすがにこの月日、キング・オブ・パンクラシストとしての経験が國奥選手を、マーコート選手をコーナーに追い込んだり、ロープを切り返たり、ロープを背にさせたりという形の、そういう部分での拮抗というのも強く見えて面白かったです。来日して試合前にマーコート選手に会いましたが、腕、肩、上半身を大きくしてきたなと思いました。これは先の竹内選手の試合の時に拳を痛めるという不幸な形で、序盤のスタートの良いリズムを最後まで持っていく事ができず、負けたという事。でも私は、当人はそれだけではなくて、やはり組み技になった時に力負けした感覚とか、何かの課題を自分が感じたので直ぐに対応して身体を大きくしてきた。そういうところが見受けられて、やはりマーコート選手はさすがだなと、そういう影があって初めて返り咲いたりするんです。

國奥選手も最後の最後まで苦しい、彼らしい闘い方をしました。これは既に國奥選手に注意を与えたんですが、國奥選手の打撃は大変光ります。ただ、大きな欠点があります。全てのパンチを強く打とうとしてしまいます。強く打って手応えのあるパンチと、相手を倒すパンチの質は違います。今度は相手はチャンピオンですから、一撃でも相手を倒すパンチを打つ練習が必要です。今回王者から退いたわけですが、これはマーコート選手も一年をかけて返り咲いたわけですから、國奥選手も二階級王者にもう一度返り咲くというつもりで新しい技術を憶えて、今度は先に出た竹内選手という、新たなライバルも出現しましたので、先ほど言いましたように、パンクラスのミドル級の王座は多分世界一過酷なものになるでしょう。そういう状況になって初めて竹内選手、國奥選手、そしてマーコート選手、ライトル選手といったこの四人が順々にベルトに名を連ねていくという、そんなドラマが見てみたいという希望を持たせつつ、2003年の幕が開けるのではないかなと思います。返す返すも郷野選手、山宮選手、近藤選手、アライ選手、大場選手、そしてマーコート選手、竹内選手。國奥選手、ライトル選手もそうです。何か希望を持ったり苦しい思いをしたり、苦汁を舐めた選手は、必ずそれに対応して出てきます。そんなドラマが今回のディファ有明にはあり、そして勇気を与えてくれる試合でした。