第8試合 ライトヘビー級戦/5分2ラウンド
▲近藤有己(2R 5分00秒、判定ドロー/1-0)ガブリエル・ベラ▲

展開としては細かいパンチで近藤選手が距離を詰めていき、ベラ選手が組技からテークダウンを取っていくという試合でした。近藤選手に関してここのところ危惧するのは、簡単に後ろを取られてしまうというところです。その部分はさすがに危機感をもった方が良いかなと思っています。これは怪我をした膝をかばう為なのか、どうなのかというのはありますが、若干そこは改善した方が良いでしょう。今回もそういう意味では獲り損じています。テークダウンの取られ方自体のイメージが良くないのと、取られた後必ず、良い位置で捕まれてしまうから、テークダウンを取られそうな時、もしくはもう一度反り投げ系の技で投げられる事が多いです。これはUFC等のケージマッチを前提にしたとすると大変危険な事ですから、そういう事から若干の焼き直しは必要だと思います。やはり剛柔どちらが欠けてもいけません。彼は見た目よりも、きつい倒すパンチを持っています。そういう意味では剛です。という事はもっと柔らかく立てたとしても、もっとしなりのある立ち方が出来ると思うのですが、柔らかく立っているんだけども、テークダウンのされ方を見ていると最終的に固くなっています。体ごと持ち上げられてしまうというのも固さ故の部分があります。ですからそういう意味ではファイトスタイル自体の改善というのは上半期で充分に行なっておかないと、近藤選手には目指すものがあると思いますから、その部分では焼き直しが急がれると思います。ベラ選手はハイアン・グレーシー柔術からの参戦という事で大変期待通りの選手だったと思います。私はもう少し手荒い選手なのかなと思ったんですが、比較的計算して闘ってくるタイプの選手で、また面白い存在になるのではないかなという予感のする試合でした。

近藤選手は連戦なんですが、その部分で考えさせられる部分がありました。というのはここのところ、選手層が多く厚いという事も含めてというのもありますが、若手の選手がのんびりしています。必死にやっているのは伝わって来ます。ただ、根本的な考え方として、エースの近藤選手が連戦している事、試合が終ってダメージを抜く為の休みもそこそこに練習にすぐ参加し始める等の現状を、若い選手はどう見ているのだろうという事です。後は自分のフォームの練習をやらないの?という選手がいるのも考えものです。そういう意味ではエースの一人である近藤選手が試合をする使命感であるとか、喜びだとかを一生懸命感じながら、自分の夢、目的を達成する為、色々なものを犠牲にして前進しようとしています。他の若い選手は自分の置かれた身の丈というものを十分考えて、おちおち休んでいたら駄目だよという事です。身の丈に生きる、生き残らなければいけません。試合がありました、勝っても負けても傷つきました、休んでから体調を整えて、それから練習しましょうと言えるのは、それなりのランクを付け実績を積んで来た選手が経験上でその様な考えをするのならば良いのですが、一つの権利の様に試合の翌日は必ず休むとか、試合の翌週は休みにするとか、その根性自体が時代錯誤しているのではないかなと私は思います。

そういう意味では鈴木選手、高橋選手然り、ベテランのパンクラシスト、近藤選手を含めての上級の選手達が、自分達が追われている立場だとリアルに感じている人達はその中で何かを考えて発動させながら努力をしています。その中でパンクラスという看板の元に、ぼんやりと、安閑として休みと練習を繰り返している若手選手は絶対にこれからは生き残れません。私はそう思います。やはり若手なんだから勝手に自分でランキングをして自分の感覚の中で自由に選択出来る事がパンクラシストとしての特権みたいな気持ちでいるのかも知れませんが、その為にはやはり、きちんとした知識・計画性を身につけなければなりません。なんとなく練習をして、なんとなく試合をしている人が多く感じます。GRABAKAの選手にしても、こうやって飛行機に乗って参加してくるヘンゾ、ダース選手、ベラ選手しかり、沖縄から来る武∞限の選手しかり、ロデオ・スタイルやSKアブソリュート、慧舟會の選手、みんな何かを持って来ます。初めからそこにあるが故に、「何だ君達はismというのは看板だけなの?」という、その部分です。そこのところに私は危惧を感じます。私達トレーナーなりが、「もういい加減少し休め、ここはこういう風に休んで、このようにしなさい」という指示を出すんだから、言われた事をちゃんとやらないのに、勝手に休む奴が多いです。言われた事は、言われた事でちゃんと守って、そして言われないのであれば休まないで一生懸命に練習するという、そんな若い選手がismの中から何人出て来るかというのが私は生き残る唯一の糧だと思います。そういうところをお客様は会場で感じるのだし、それが誌面、言葉、映像になってイメージとして選手について回ります。イメージが出ない、自分の色が出せないというのを、髪型や肌の色、コスチューム、入場曲で自分の色を出そうとか、せこい事を考える前に日常を変えて個性を出してもらいたい。それがパンクラスのリングで、他団体の方も含めて、生き残る最善で、最も能率/効率的な闘い方、練習の仕方だと思います。でもそれをやる事は物凄くしんどい効率的な手段です。