第6試合 10分1本勝負
○近藤有己(10分00秒、判定/3-0)山田学×

 判定という形になりましたが、レフリー廣戸30-25、サブレフリー梅木30-25、ジャッジ小菅30-26という、パンクラスのジャッジ判定にしてはやや大差がついた、5ポイントから4ポイント差が開いた試合でした。

 試合の中盤ぐらいですが、山田選手がグラウンドで呼吸を荒くしました。これは身体に何か変調が起きたなと、私がレフリーだったので試合を止めようかと思った程ダメージがあったんですが、スタンドからグラウンドに移行する時に肋軟骨を骨折したというところで、ダメージのポイントと実際のテクニカルポイントという事でも、山田選手を近藤選手が大きく凌いだというか、大きく圧倒した試合だったと思います。

 これも、今まで近藤選手は踏み込みの速い直線的な動きで相手を圧倒していくという試合が多かったんです。それが昨年のタイトルマッチで敗れはしましたが、シュルト選手との闘いの前に行った合宿からの経験の積み重ねですね。その中で彼が近頃多く口にしているバランスという言葉。それがよりいっそう、逆に彼のパワーとスピードを向上させていったという結果だったと思います。それに応じて試合中の変化に富んだ攻撃というのが本当に山田選手を苦しめたと思います。ある時は思い切り良い踏み込みで直線的に顔面をとらえ、ある時は引き際、または入り際に自分の身体を大きく変化させて斜めから柔らかい攻撃で入っていく。そしてグラウンドでも直線的に入ると見せかけては曲線的にコントロールすると。それで物凄いスピードの中で矢継ぎ早に入って来た時に、さすがの技師・山田もなすすべが無かったと。本当に圧倒されたと言っていいと思います。事前の近藤選手の強気な発言がそのまんまま試合に出た試合だったと思いますね。

 その事からも、今回6試合の内、KO決着が1試合、残りは判定決着という結果ではあったんですが、その中で光ったところを見せたのが高瀬選手、そして石井選手、カーター選手、山宮選手、ライトル選手、そして近藤選手。特にその中で高瀬選手、石井選手、渋谷選手、近藤選手というのは去年大きな試合を経験して、そして思い通りの結果が出せなかった。苦杯を舐めた選手が、年を新たに自分が苦杯を舐めたその試合の結果を十分克服して試合に臨んで来たと。 そして逆に2000年にかけての良いスタートを切っていったなというところで、やはり努力に勝る物は無いんだと。コツコツとやっていった者が必ず認められていく、日の目を見るというパンクラスのリングは、ますますもってその効力が高まって来たなというところだと思います。

 そういう点では、若い選手の台頭も十分有り得る、第2のデビューしたての近藤選手の近藤旋風が巻き起こるような予感も十分させるパンクラスの1月23日 だったと思います。グローブ効果も十分出てました。しかしそれよりも、自分の欠点、もしくは自分の足りなかった部分を補うきちんとした錬習を、ビジョンを立てた練習をしてきた選手がビジョンを立てた試合をしていくというところに、やはり勝機は多く傾くということで十分今年の期待出来る選手の名前がクローズアップされて来るんじゃないかなと思います。今回の6試合で一番光 った選手、MVPは誰だと言うのであれば、やはり石井大輔選手。これで決まりで す。続いて準MVPは誰だと言えば近藤選手というところで、1月23日・後楽園ホールの結果を終了したいと思います。今後に十分期待して下さい。