ライトヘビー級も実に激しい試合のトーナメントだったと思います。ミドル級と比べて打撃、投げ技等にしても力強さ、一つ一つの技に凄みのある部分が強調されるクラスなので、試合をする選手としては一番大変なクラスなのかも知れません。ミドル級のスピードとテクニック、展開の速さというものを兼ね備えながら、無差別級のワンパンチ、ワンキックのパワーを秘めているという点での質の高さ。そういう意味で見所のある、見やすい変化に富んだ結末が待っているという様なクラスということで、6月から見てました。締め技にしても関節技にしても、スタンドレスリングの投げ技にしても、パンチ、キックのノックアウトにしても確率の高いクラス。そして選手としては一番リスキーなクラスなのかなと私はある意味思いました。ファンの方から見たら一番変化のある、見所のある試合なのかもしれません。

その中で外国人選手が、ブイシェ選手を筆頭に外国人選手パワーというのを示してくれました。それと予想通りに山宮選手、美濃輪選手という二枚看板が勝ち上がってくれたのはパンクラスとしては嬉しい事だと思います。やはりこの2人がライトヘビー級トーナメントの24日の準決勝、決勝に残って来たというのは、昨年から今年にかけてパンクラスの看板を背負って対外試合に出て行ったり、そういう意味での幅広い闘いで、自分自身にプレッシャーを掛けてきたのでしょう。その経験値というのが、頭一つ出て行く為の素晴らしい特効薬になったのではないかなと思います。

その中で美濃輪選手がKO、ギブアップの山を築いて快進撃をしているイメージが物凄く強かったんですが、その影に隠れて極め技が無いとか、展開がどうだとかいう中で、山宮選手が判定で勝っていき、印象度という意味では少し損をしていたと思うのですが、私は山宮選手は自信を持った方が良いよという話を以前からしていました。何故かと言ったら、彼ほど多くのスパーリングパートナーをこなしていたり、初めての対外試合の場に入っていくという意味での物凄いプレッシャーを背負い、矢面に立って真正面から吹きつけられてきたのは、私は山宮選手だと思います。船木選手、高橋選手、謙吾選手のパートナーを務めたり、他団体の選手のパートナーを務めたり、彼には休む間がずーっとありませんでした。そういう経験を得て、ずっと判定でどうだのこうだの言われて来た山宮選手が、24日、ランキングトーナメントの晴れの準決勝において極め技としてフロントチョークを使い、ブイシェ選手からギブアップを取った試合は、私は山宮選手のこの1年半の努力がこういう所に表れて来たんだなというのを感じます。彼の必殺技の左アッパーを怖がって中途半端に入って来た者に対して、今度はフロントチョークで極めていくんだという、二つの必殺技を山宮選手は手に入れ始めました。

そういう意味では自分の形というのが出て来てますし、美濃輪選手との決勝戦では、これはちょっと判りづらいのですが、そこはビデオを見ていただければ判ると思いますが、彼の右のリードパンチがきちんと美濃輪選手のタックルに入って来ようというところを上手く制しています。これはU.F.C.で高橋選手が使った戦法と丸っきり一緒です。ファンの方は両方の試合をビデオで見比べていただければ解ると思います。速い美濃輪選手のタックルに対して、物凄い反応力を持って山宮選手はタックルを切りに行っています。切りにいきながら左のアッパーとかを出しています。これは未だ他のパンクラシストは使えないです。こういう闘い方は未だ出来ないです。これは山宮選手だけの宝になってます。そういう、見えないけど技として成立しているものを山宮選手は手に入れました。ここからベルトを死守していくという一つのプライドが出て来た時に、また一つ山宮選手が大化け出来る様な予感が私はします。ますます頑張ってもらいたいと思いますし、このまま黙っているブイシェ選手でもないだろうし、美濃輪選手でもないでしょう。美濃輪選手はパンチにしてもキックにしても十分良い所を準決勝、決勝で見せていました。そして美濃輪選手の素晴らしい所はタックルからリフトが出来るという所です。その部分の非凡さ、そういうものも含めて質の高いクラスの面白い試合を今後も期待したいなという風に思うライトヘビー級です。