第6試合 大将戦 (5分3R)
×郷野聡寛(3R、0分52秒、TKO)近藤有己○

この試合では郷野選手の入れ込みようを私は注目していました。郷野選手は、風貌に似合わずと言っては失礼ですが、大変クレバーでトリッキーな選手です。そして骨太な選手と言う事で、ある意味外国人選手の様な闘い方をしてくる一面のある、思い切りの良い闘い方ですから、そういう意味でグラバカの今年の勢いというのを、今年最後のこの大将戦で、郷野選手がパンクラスのチャンピオン狩り、ベルト狩りとでも言いましょうか、その種のプロローグとしてどう見せるのかという、この入れ込みようが、これはもう注目に物凄く値しました。それに対してパンクラス東京の近藤選手。この夏以降ちょっと元気のない、少し体の何ヶ所かにケガをしてましたから、そういう意味ではポジション的には言い難いという部分ではあったんですが、その中できちんと自分なりに練習を積み上げているというところにポーカーフェースの近藤が常に安定を目指しているという、また新たに21世紀版の近藤のチャンピオン像みたいなものをまた来年開花するかなみたいなところでもまた注目していました。試合の方は立ち合いから組んで投げるという郷野選手に対して、スタンドレスリング以降から近藤選手がペースを掴んでグラウンドで細かいパンチを適確に当てていきながら自分の試合のペースに持っていきました。郷野選手はちょっとここに来て体重を増やしたりちょっと大きくした部分があって、2Rに入ったあたりからちょっとスタミナが切れてきたというところにもその後の試合の流れの危惧というものがあったような気がします。

試合の方は2R中盤にグラウンドのパンチが適確に入って、その中で郷野選手の右目がかなり腫れて潰れてきました。そしてその後のスタンディングの攻撃等でダメージが蓄積した郷野選手が3R開始早々コーナごしに追い込まれて、あの郷野選手が背中を向ける様な形で顔を背けてパンチを逃げるようになりました。それくらい近藤選手は威力のあるバランスの良いパンチを回転良く打ち込んで行ったという、それは近藤選手の真骨頂でした。思い起こせば東京ドームでのあの一戦(VSサウロ・ヒベイロ)、あれを思い出してもらえればそのまま納得して貰えると思います。あの回転の良いパンチが郷野選手を叩き潰していった、マットに沈めっていった、というところで近藤らしさありという事と、立ち居振舞いがまたちょっと今迄の近藤選手とはちょっと違うぞと、プレッシャーに勝った大一番で彼はここまで冷静に闘えるのかというところに、近藤選手は21世紀もまた、UFCでやり残した事にいかにもう一度やっていくかという、無念を晴らす男の凄さというものを見たような気がします。