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■第8試合 ライトヘビー級戦/5分3ラウンド
×KEI山宮(1R 4分00秒、TKO)ニルソン・デ・カストロ○
今回試合前に「KOを狙いに行きます」と、山宮選手は珍しくサービストークをして自分の意志を前に向けての試合でした。ケガで返上したとは言え、ライトヘビー級の初代チャンピオンですから、山宮選手もここでちょっと息を吹き返したいところです。でも、今回私は良く試合前の戦歴を聞いていましたが、窪田選手も勝率5割を越えています。多分今回負けたので5割になったと思います。KEI山宮選手はさすがにチャンピオンでしたから、大きく5割を越えている勝率を持っています。はっきりいったら半分以上勝てていれば強い選手です。そういう部分を、「本当は俺、強いんだよ!」というオーラを出せるかどうかは、自分の内なるモノです。自分の意志や、頭脳がどこに向いているかで人は光って見えたりオーラがあったりという事になるんだと私は思っています。厳しい言い方をしますが、そういう点では今回の山宮選手は、まさに口だけの選手でした。
それに対して初参戦のニルソン・デ・カストロ選手。シュート・ボクセの所属でパンクラスのリング初登場ということでしたが、そんなプレッシャーの中で思い切り良く闘ってくれたと思います。パンクラスのリングがどんなところかというのが判っていて、それでリングに上がって来たわけですから、それなりの闘いをするんだろうなと思っていたんですが、予想以上に長い手足を利して、きちんとした総合の試合をしていった、というのが良く見えました。それに対してパンクラスismという名前を継承しながらも、ただ単にボクサーとしてボクシングをした山宮が私には見えました。確かに今回サービストークで湘南アッパーで沈めてやるという、必殺技を公言して闘いに出てきたんですが、ボクシングの試合ではありませんから、開始早々向き合って、いきなりパンチを打っても当たらなければしょうがありません。どっちがパンクラスのリングでデビュー戦なのかという事を強く感じるべきだと思います。ものには過渡期というものがあります。だからライトヘビー級の初代チャンピオンの時に次いできた過渡期に、パンクラスのリングの成熟度というものと、総合格闘技全体のリングの成熟度というものの途中経過の中で、山宮選手はそういう闘い方をしてチャンピオンに成れたかもしれません。でも、それ一辺倒でやって来た時に、どんどん時代からズレて来た自分に気付かなくてはなりません。その証拠にちゃんと足首を取ってテークダウンを取れました。それに試合を優位に進めました。グラウンドに持ち込めたのに、ここ数試合の山宮選手は、やっぱりそこにいました。相手にガードポジションとられて、取り敢えず相手をカバーしてグラウンドの展開になった時に、何すべきでもなく上に乗っかって、逆に下から顔面を殴られる山宮選手がそこにいました。それは自分自身が何か変らないといけないし、何しにこのリングに上がったのかという事を考えた時に、私はライトヘビー級の初代チャンピオンであり、2003年6月7日のディファ有明大会のメインを飾るのは相応しくない闘い方をしたなと思いました。
最終的に私はレフリーストップで止めました。あんなんで止めちゃった、と思うかもしれませんが、私が見ていたら、グラウンドの展開のパンチの中で、ほぼ9割のパンチが山宮選手に当たっていました。ただし近藤選手のようなインパクトのあるパンチではないから、それなりの選手だからまだ出来ると思って立ち上がれたかもしれないですけど、あれが近藤選手であれば立てません。近藤選手の様なインパクトのあるパンチであれば立てなかったと思います。それ位適確に当てられていました。ガードをしていたとはいえ、ガードの上からも、間からもパンチを受けていました。ですから試合を止めるしかしょうがありません。試合後のアピールに私は一切耳を貸しませんけれども、これはレフリーサイドからの全員の一致で、あれはもう止めるべきでしたね、というところでの判定です。ここで必要なのはシュート・ボクセと名前の付くカストロ選手がきっちりと総合の試合をしにきているのに対して、パンクラスismというハイッブリッドレスリングを継承しているはずの山宮選手が、私はボクシングをしにリングに上がって来てしまったところに、私はこの試合の結果があるような気がします。
総括しますと、私はこのディファ有明大会の面白かった試合は、はっきり言って第1、2試合、オープニングの2試合が面白かったと思います。それは観客の皆さんが自然に声援をして拍手を送ったのがこの2試合だからです。私は後半出て来た選手にそういうものが届いているのだろうかと思いたいです。殆ど判定でした。判定でも試合が終って、判定が出るまでに観客が興奮していた試合と、「あ〜なんか判定だ」と思われている試合というところを、やはり選手は大きく感じなければいけないと思います。負けない試合ではなくて、勝ちにいき、何かを表現する。格闘技は暴力ではありません、スポーツだけでもありません。体を動かすというのはクリエイティブな仕事です。そのクリエイティブなものが人を感動させたり、心を動かすんだという事をしっかりと頭に入れないと、ただの筋肉バカになるし、筋肉バカが勝てる程パンクラスのリングは甘くありません。人間は遅々として常に変化をしていかなければ、過去の栄光も無いし、現在もありません。日々進歩していく為の鍛練、それが修行という名の元にあるわけです。そういう意味では、私は若いヤングジェネレーションの北岡選手、大石選手、佐藤光留選手。今回試合はありませんでしたが、大いに私はこの3人なんかに期待しています。彼等の試合は何かをしたいというのが伝わってくるようになってきました。そういう意味では今回引き分けが多かった大会ですが、選手には、内なる闘志が表に伝わってくるような、観客に「自分は何がしたい」というようなものを感染させてあげられるような強い病原菌のような、そういう闘い方をしてもらいたいです。
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