メインイベント メインイベント ヘビー級 キング・オブ・パンクラス タイトルマッチ/5分3ラウンド
○高橋義生(1R 5分00秒、TKO(ドクターストップ)/グラウンドのパンチによる) 小澤強×

前回、昨年の暮れ、ディファ有明でノンタイトル戦で同じカードが組まれました。その試合と同じ様な滑り出し、というと同じ様ですが、状況は大きく変っていました。というのは、その時点の高橋選手というのは、昨年いくつかのマスコミには流れてますが、ヘビー級チャンピオンになったという事で、彼は体重増加に入りました。色々食事なり、サプリメントなり、練習なりという事で体重の増減というものを図ったのですが、私はそのメニューを見て危惧してました。チャンピオンが自分で考えて実践している事なので様子を見ていました。案の定、増量に因る、肝臓障害。血液疾病のいくつかで病気になってしまいました。アスリートを目指している方、格闘家を目指しているファンの方、色々なトレーニングをしているトレーニングファンの方、色々な方がいらっしゃいます。ですが、いわゆるアミノドリンクとか、どこでも簡単に飲める時代ですが、それだけ飲んで栄養分を取り過ぎてしまう事が弊害として出ています。そんなものに頼るのではありません。今日色々な厳しい事を言ってますが、やはり人間、格闘家、己の肉体というものをまず一番始めに信用する事と鍛える事です。あくまでもサプリメント等というものは、そういうものの援助でしかありません。そういう意味で高橋選手は身体を壊して、ドクターストップが掛かっているの中での前回の試合でした。そういう中で足元をすくわれたというのがあるんですが、それはそれで判定勝ちをした小澤選手が強かったからです。私はこの部分で、今年に入ってから高橋選手のコンディショニングを彼から任されて、一緒にトレーニングをしながら、彼のコンディショニング調整にこの半年費やして来ました。お陰で、病気も改善しましたし、試合の会場で彼がリングに上がって来た時に、十分絞られた身体を見て、会場からどよめきも上がっていましたが、形よりも彼の動き、スポーツというのは形の問題ではなく、あくまでも人間の形は機能美です。身体機能が上がっているというところにファンの方は注目してもらいたかったです。

そんな意味合いの中で、小澤選手も鍛えて来たと思いました。スピード、身体の捌き。タイトルを十分意識してやって来たなと思いました。ネームバリューでは差はあるものの、一般に思うほど、2人の実力差は無かったのではと思うぐらいでした。彼は練習をして来ていました。それを私は認めます。そんな中で高橋選手のプレッシャーに負けないで、前に前に出てくる小澤選手というのはその裏付けだったと思います。小さなパンチの打ち合いの中の両足タックルの中で、それに耐える高橋、そこから投げにいきたい小澤。もともと背面への反り投げの上手い選手ですから、前回はそれでやられてます、そこから速い反り投げを見せるのですが、それを上回る高橋選手の受け身。それから小澤選手より速く立ち上がっている高橋 義生がいました。しかも立ち上がった後に、小澤選手に攻撃を仕掛ける為に、もうロックオンしていました。これは野球等でダイビングキャッチをして取って立ち上がった時には、もうどこに投げるかを決めて投球フォームに入っている一流選手の、それに似た闘いの中では、どこからも意識を切らない、そういう意味の充実振りが伺えました。そこからは得意の左のストレート。これで小澤選手はバランスを崩したというよりは、あまりの強さに後ろにぶっ飛んでいった形でした。90kg以上の人がワイヤーアクションの様な形で後ろにぶっ飛ぶというのは、希にしか見る事が出来ないので、「これは凄いな」と改めて高橋選手の潜在能力の高さも感じましたが、その時点で小澤選手の意識は飛んでいたのでは?と思います。逆にいうと本当の高橋選手ならそれで終ったかもしれません。本当の意味で言うとです。打ち抜けなかったので相手が飛んでいったというのがあります。そこまでが1分強です。そこからは相手が倒れていくスピードと追っかけるスピードが同じスピードでした。高橋選手がその時点で上手くハーフマウントからサイドポジションの中でコントロールしながら後は4分間殴り続けた、というところです。

その中で相手のセコンドを威圧してみたり、ちょっとタイミングやリズムを変えて、という形で、恐ろしさの中に余裕を秘めた高橋 義生がいました。まるでU.F.C.の金網の中で闘っている高橋 義生を彷彿させるような凶暴さとクレバーさが同居していました。良い時の高橋 義生がそこにいました。それで十分、要所要所、急所急所をきっちり打ち込んでいく高橋選手のパンチの中に、私はメインレフリーでもサブレフリーでもなかったので、審判部長として下から見ていたのですが、私でしたら5分終了の時点でKOを宣言するかな?いうぐらいダメージが溜まっていました。案の定、終了のゴングと共に高橋選手は自分のコーナーに戻って行ったんですが、小澤選手はそこから自分で立てませんでした。梅木レフリーが小澤選手の脇を抱えて自分のコーナーに返していったんでが、その時点でKOなので、このドクターストップというのは、私は否めないと思います。逆に、タイトルマッチなのだからまだ闘わせてあげたい、レフリーストップにしないでドクターの意見を聞いて試合を止めたというところに、私は梅木レフリーの愛情があるなと思いました。私であれば、ゴングの終了と共に、グラウンドでのKOとして極めて珍しいケースではありますが、ばっさり切っています。それぐらい高橋選手は自分の仕事を完璧にしたと思います。これぞチャンピオン、これぞ王者という試合でした。但し、小澤選手、次にリマッチをしてくるとすれば、今度の小澤選手はこのプレッシャーに耐えて1R来たわけですから、私は油断出来ない相手だと思うし、こういう闘い方を見た禅道会の選手達が、また奮い上がって来た時に、私は高橋選手が王者のベルトを守れるかどうか?というのはまだまだ疑問です。もっともっと高橋選手はレベルを上げていかないといけないと思います。油断はできないなというところの試合でした。