第6試合 ミドル級戦/5分3ラウンド
×國奥麒樹真(3R 5分00秒、判定/0-3)クラウスレイ・グレイシー○

パンクラスが旗揚げした同じ1993年に、総合格闘技界に二つの巨星が現れました。一つはパンクラス、一つはUFCに於いてのグレイシー柔術。その二つの名前が、いよいよ10年かけて遂に接点を持って火花を散らします。ここ数年、國奥選手はUFCを目指して、出たい出たいという話しもありました。そういう意味では登竜門という形、グレイシーにしても、第1回UFCのウェイン・シャムロック参戦から数えて10年、ようやくグレイシーという名の一つの格闘家がパンクラスのリングに上がって来ました。歴史的な一瞬だったかなと思います。そんな中でのこの試合は、フルタイム3Rで闘って3-0でクラウスレイ・グレイシー選手の勝利でした。内容はボクシング、キックという形で、互いに厳しいパンチ、キックを送り込みながら、相手をコントロールしていくという感じでした。お互いにきつかったと思います。互いのキック、パンチともかなり重かったです。互いに切れる刃物で切り合いながら、掴み合おうとするので、相手の懐に入っていく時の強い気持ちはなみなみならぬものではありません。そんな中で、クラウスレイ選手は自分から自分から取りにいきました。私はいつも國奥選手から見習う事が多く、感心する事が多いのですが、今回は、「何でお前はここまで来ておいて、そんなのでおじけづいたんだ?」という感じがありました。

私はパンクラスの中で最も危険な男、冷酷に相手を殴り倒せる男は國奥麒樹真だと思っていますが、その怖さがありませんでした。ちょっとなかった。思い切りの良さが。ただ、これは人間のやる事なのでしょうがないのですが。でもやはり、相手が前へ出てきたのであれば、それを押し返して自分で出ていくという様な心の強さ。計算してしまうが故に弱さというのは出てきます。あまりにも色々な事を考え過ぎて、全て後手に回る事というのは凄くあります。1個歯車が狂ったら、計算したものが、何も考え無かった事よりも酷い結果になりますから、そういう意味では野生という部分、闘うファイターとしての部分で、私はグレイシー選手に國奥選手が負けたんだなと、それがこの判定の結果だったなと思います。内容、技術の勝負に関しては、私は全く遜色はなかったと思います。たまたまフックが國奥選手の右目尻に当たって切れました。そういう思い切りの良いパンチをお互い出してましたから、これは仕方の無い事です。それよりも、やはりさっきもお話しましたけど、低くて鋭いタックルを出さなくなった國奥 麒樹真は、やはり翼を1本もぎ取られているように私には思えます。相手がなんだろうと自分から仕掛けていくという事が無いと、ただただ立って蹴っているという、K-1ファイターVSプライドの選手みたいな、それよりも、うんと酷い状態です。出来るのにしないという闘い方というのは、私は一番いけない事だと思います。それだったら、総合格闘家なんて名乗らなければ良いです。出来るのであれば、相手が何だろうと自分のベストを出していくというのがファイターの心構えだと思います。そうでなければ自分より弱い相手としか闘えない奴になってしまいます。そう考えたら、さぁ、この判定負けを薬にするか、毒にするか? 國奥 麒樹真、後半戦に期待しましょう!

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