第7試合 ウェルター級戦/5分2R
○伊藤崇文(2R 5分00秒、判定/2-0)花澤大介13×

伊藤選手のターゲットになる選手に対しての、五重の塔とでも言いましょうか、いくつも自分の壁をぶち破り上がっていかなくてはいけない、一つの復帰戦であり、第1関門を突破するという、一種、登竜門の入口というべき試合でした。それにしては、今回の花澤 大介13選手、ファーストマッチの相手としてはレベルが高いのではないか?という様なマッチメークでもありましたが、伊藤選手の鼻息の荒さというのは試合前から十分伝わって来ました。ただ、伊藤選手の思いをそのまま展開させてくれるほど花澤選手は優しくありません。試合は判定になり、拮抗しました。その中で、やはり自分から仕掛けていくという事がいかにリスキーなのかということが、こういう試合にはある部分あります。ただ、“力”のある人は、ファーストコンタクトで相手に何らかの影響を与えます。それが秒殺を生んだりします。そういう意味では初めからテークダウンを取りにいくんだ、相手をコントロールするんだ、というところで、自分から仕掛けていった伊藤選手は、自分の使命、メインイベンターとしてやらなければいけないという自負を持って試合に臨んでいた事を、並々ならぬほど感じました。それに対して花澤選手は、相手がどうであれ、自分が何番目の試合であるかは関係無く、きっちり自分のやる事をしていった所はさすがだなと思いました。

1R目は、花澤選手が中盤からテークダウンをとる中でバックを上手く取るポジションになりましたが、そこから伊藤選手の守りの堅さに展開を進める事が出来なかったのが、判定の分かれ道だった様な気がします。もう少し1Rでバックを取って、立体的な展開になったとしたら、このラウンドの印象は変ったと思います。そこを上手く凌がれてしまった、逆にその守りの状態からダメージを与えていった、伊藤選手のタフさというのも、やはり無差別級から闘って来ている精神力の強さ、そういものが光った部分ではあったかも知れません。2R目に入った時点では、伊藤選手の真骨頂ともいうべき動きが見受けられました。自分の速いタックル、速い差し引きの中からテークダウンを取ってのコントロール、アームロック。完全なポジションでは無い所からでもアームロックをかけていきました。これは逃げられたり、展開によっては自分が不利になるかも知れません。そのリスクを負っても、技を仕掛けていく。要するに流動的なものを自分の方へ引き寄せる為の仕掛けとして考えるのか、現状が無くなるから、流動的な場面では技を仕掛けないかの二者択一の世界です。伊藤選手は敢えて流動的なポジションからアームロックを仕掛けていきました。そして花澤選手に凌がれそうになりながらもポジションを元に戻して、そこからいくつも展開を狙っていったところが判定の分かれ道になった様な気がしました。お互い1Rづつ自分の形には入りました。それが、ドローを付けたレフェリーもいたという事です。そしてそこからもう一つ駒を進めて攻めたもの、そのまま守ったもの、攻めあぐねてしまったもの、という中で、採点が分かれた試合になりました。

今大会は、「攻めなければ勝てない」という、模範の様な1日だった気がします。特に若い世代の選手が多かった大会ですから、そういう意味では、10年経ってパンクラスの流れは、今後ますますもって攻撃型に傾倒していくというのが一つ見えた様な気がします。それによって練習内容を逸早くチェンジ出来た者、それがこの後の上位に名を連ねていく選手になるのではないかと思います。

意識革命の時がいよいよ来た。そんなグランキューブ大阪大会でした。