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■ メインイベント ライトヘビー級キング・オブ・パンクラス/5分3R
×菊田早苗(3R 0分08秒、KO/スタンドパンチ)近藤有己○
さあ、因縁の対決です。思い出せば5月、(判定)1-1-1という究極のドローでした。前回の闘いからどんな闘いになっていくのかと、その中で菊田選手も近藤選手もこの夏に厳しい試合を迎えて、それぞれ自分のレベルを上げてきてのタイトルマッチでした。同じ試合はないだろうという、お互い技術を上げてきて、相手を知って切磋琢磨して、研究をして、相手以上に自分が伸びて来ているという、実力を伸ばしての対決ですから、試合はどうなるかと注目の一戦でした。1つ注目したいのは、これはさすが近藤選手だなと思うところですが、前回、自分より随分重い相手と試合をして、「体重差の影響というのは結構あるのかな?」というのを少なからず感じたりするのが普通の人間だと思います。そう考えると、今回の菊田選手はこのクラスのリミットギリギリの89.7kgで試合に臨んでいるんですが、相変わらず近藤選手は87kgという体重でした。そういうところが近藤選手の素晴らしいところです。一喜一憂しない、微動だにしない、自分が信じた道を淡々と歩いて行く。これは求道者です。求道者、まさにこのスタイルです。こういう男がパンクラスにいる以上、パンクラスは、道は絶対に曲がりません!
そしてこの試合で注目したのは、第1R立ち上がりで、菊田選手が執拗に組み合う、スタンドの組み合いに持ち込みたいというところに対して、近藤選手はやはり第1試合の前田選手よろしく、ロングのパンチで普通は距離を取りたいのですが、そういうセオリーを全く無視して、自分のスタイルの短いパンチを駆使しながら、菊田選手の動きを封印していくというところに、あっ、流れは近藤が作るんだなということが1Rで見て取れました。その中で、この試合の流れを大きく決定付けたのは、結局組み合いになった後にテークダウンを奪いにいって、テークダウン、トップを取ったのは実は近藤選手だったという事です。今回、近藤選手はずば抜けて伸びてました。それはやはり勝った負けたではなくて、自分に大きなターニングポイント、リスクを犯しても、きちんと何かを経験しているという事です。今は経験する時に、そこに勝つとか、負けるとか、得する、損するみたいな打算が働いている選手が多いです。船木 誠勝のismに対する批判は、私はまずその部分にあると思っています。打算が多いんです。やったら得か?損か?という事では無くて、嫌でも何でもやらなければいけないという事は、我々は幼稚園、小学校の時に習っているはずです。大人になるとエスケープ出来る言い訳がいっぱい出て来ます。それで怠けます。だから船木君は何だかんだ言っても、パンクラスの選手達怠けるなよと、俺達が一生懸命やって来たものを汚すなという事が言いたかっただけの話しです。それを近藤選手はこの試合で見事にやってくれました。
菊田選手も相当練習していました。でもその菊田選手の伸びよりも、今回は近藤選手の伸びの方が、ずば抜けて良かったです。彼は出稽古をしていて、どんな練習をしていて、どんなに技術力が上がっているかという事を、私は別ルートからも聞いているので、やはりそれはさすがだと思いました。それは、24時間闘おうとしている男達は、絶対に強く進化していきます。駄目な選手は練習の時間だけ働いて、遊ぼうとします。この滅多に見る事の無いタイトルマッチ3連戦で、「圧倒する」という力を、この3試合で見せつけられました。勝った國奥選手、アルメイダ選手、近藤選手。相手の良いところを全く出させず、一気に封印していきました。これは相手が弱かったのではありません。勝った人がものすごい出力で強かったんです。強くなったんです。これはものすごく素晴らしい結果だと思います。ファンの皆さんは、1試合1試合見た後、もう一回一気に(タイトルマッチ)3試合を見て下さい!どんな顔をして、どんな血相を変えて、どんな思いをして、このチャンピオン達が相手に一気に良い所を出させないで闘おうとしているか? 一気にまくし立てているか? そこにものすごい決断があります。そこには、一歩間違ったら勝利を焦って墓穴を掘るという、大きな落とし穴が待ち受けています。野球で言えば、3球三振をとるピッチャーは素晴らしいのですが、2ストライクを取った後に簡単に勝負にいって、直球勝負で2ストライクを取った後にもう一回ストレートの直球勝負で3球三振になったら素晴らしいものを、待ってましたとばかりにホームランされるケースだってあるわけです。そうしたら勝負が早いだの、単調に攻めたのと、色々な事を言われます。でもそれは、ちょっとでも遊ばせたらこいつらは何を仕掛けてくるかわからないという、相手の強さを十分認めているからこそ一気に攻めなければやられるという、正に戦場の気持ちです。
そういう厳しさの中に、実は試合が終った後に菊田君を心配して見舞う近藤君がいて、潔良く「今回俺は何も出来なかった」、「本当に近藤選手は強かったよ」と素直に言える菊田選手の心があり、バックステージで相手をたたえるマーコート選手がいて、それに応えて試合直後のごたごたは嘘の様に、笑顔で返すアルメイダ選手がいました。ビデオで見て下さい、國奥選手は芹澤選手にコーナーまで行って、私はその言葉を言いませんが、一生懸命何かを伝えています。彼はそういう男です。涙をいっぱい溜めながらもそれに応えようとする芹澤選手がいて、全力を出しきって、相手の強さを認められた時に、それが1つの形として、パンクラスというリングをまとめていく、統括されていく、融合していくというところでは、この3試合の後に、このリングの上でまたパンクラスはハイブリッド、配合しました。新しい血がまた混ざり合って、パンクラスのリングはまた強くなると思います。
そういうところから生まれてきた私達の王者が、さあまた違う血の流れるリングにどう上がって行くのか? これも年末から来年にかけての大きな楽しみになると思います。そういう上位選手が、もしくは、今回出場した主だった選手達は、第1試合の前田選手も、三崎選手も、郷野選手も、國奥選手も、アルメイダ選手も、近藤選手も、相手に良い所を出させずに一気にまくしたてました。これがパンクラスのリングです。そしてこの部分から遅れていく選手は、パンクラス、もしくは他団体の選手がより一層大きく水をあけられるのは2004年だと思います。私は言っておきますが、2004年前半、遊んだ選手は一気に落ちます。彼等チャンピオンは24時間、寝る時間まで闘い続けるという事をしていて、今回この両国出場というものを勝ち得て、そして今言ったように、一気に自分らしさというものを相手に、観客に見せ付けて得た勝利です。これを見習わずして、若手の選手、色んな選手、今回出場できなかった選手で、何も感じない奴がいたらそいつは闘う事を辞めるべきです。そのぐらい今回は、この両国、10周年という部分でまた大きく配合・ハイブリッドされたという事は、新しい扉を開けたという事です。日本の、そして世界の格闘技の分布というのも、またここで大きく豹変して来たました。これが2004年にどう繋がるのか?目を離せません。12月のディファから選手達がどう闘うのか? どう目の色を変えて闘っていくのか? 今迄とまたちょっと違うリングが見られると思います。大いに期待して会場に観に来て下さい。
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