メインイベント ライトヘビー級戦 5分3ラウンド
○近藤有己(1R 4分01秒、ギブアップ/チョークスリーパ)スティーブ・ヒース×

総合の試合で12戦というキャリアを持つヒース選手。グラウンドのテクニックにしても、過去の成績にしても、グラウンドもさる事ながら、スタンドのパンチでも、スタンドの攻防でも、相手に打ち負けず、体の寸法からいうと手が長くて、打ち合いにも対応出来ますよという点で、他団体でのリングを意識した近藤選手には一つの良い意味での突破口、一つ自分を試すという事も含めて、そんな余裕は近藤選手には無いし、彼の性格からそんなところで計算するタイプの選手ではありませんが、そういう意味では注目の集まる一戦でした。試合は、序盤の立ち技できちんとバランス良く攻めて行く、大振りは無いけれども、きっちり近藤選手特有の効かすパンチ、そういうものの中で上手く相手をコントローしていきましたが、その近藤選手もスタンドかでのタックルの形からボディーコントロールされて、ロープ際で危ういシーンもありました。流石ヒース選手だなと思わせる攻防もありましたが、それを凌ぐコントロール、相手の首、頭を殺して潰していくという、スタンドレスリングの勝負がこの試合を分けたところだと思います。最終的に相手を上から潰して、自分の形に持っていき、間髪入れず相手を潰しつつ、相手のタックルを切りながら小さなパンチを入れていく。その部分で上手くポジションを作っていった所に勝負があったかも知れません。ですから、立ち技、タックルにいって引き込むという所までは、ヒース選手からは勝負に対するオーラみたいなもの、勝つ意欲みたいなものも凄く強くほとばしっていましたが、それを潰されて切られて、グラウンドの展開で小さなパウンドがこつこつ当たり出してから、近藤選手のパワーがどんどん勝っていき、彼の強さであるパウンドを最終的に打ちながら、自分が相手に対していかに良いところにいるかという、ボディーコントロールをしながらパウンドを打っていきます。そういう意味でスタンドに対しても、組み技に対しても、グラウンドに対しても、ポジショニングが凄く重要だと思います。ポジショニングを日本語で言うと「間合い」です。「間合い」の事です。離れた、ディスタンスは関係ありません。間合いを取りながら、バランスをキープしながら、攻撃を休まず繋げていく。そういったものがヒース選手の光を奪ってしまいました。最終的には、あのシーザー・グレーシー・アカデミーの総合12戦のキャリアを持つヒース選手さえも、そのパウンドの攻撃に耐え兼ねて結局後ろを向く形になって、そこからチョークを許すという試合展開になってしまいました。流石、近藤選手という形です。決してその先の選手を想定しての闘いではありませんが、彼がやるべき事を、その瞬間瞬間にきちんと選んでしています。寝た相手に対しても、上から頭を狙って打ちにいったり、足を殺しにキックを打ちにいったりしながら展開していき、終始、近藤選手らしさを見せたところに、ヒース選手の心の力を折った、そんなチョークでした。

次から次に新しい選手が、期待できる闘い方をしてくれるのが凄く印象深いのですが、強い選手、勝つ選手というのにはどんな共通点があるのか。そういう点が何となく見えてくるような大会でした。私が見ているのはパンクラスの選手が多いけれど、そうではなくても、練習を具体的にしている人、その選手はやはり消化する練習をしていません。そういう事が一つパンクラスのリングで生き残る結果になるのではないかなと、何となくこの大会を見て思いました。本編では触れませんでしたが、ゲートの試合で松本 光央選手という方が参戦してくれました。ベテランの選手なんですが、腕を取られて耐えに耐えたのですが、危険な状態で耐え過ぎて、腕を大きく損傷してしまいました。特にゲートに出場する選手、若しくは本編に出場する選手も、今はそこまで来たらギブアップする時代です。2戦目、3戦目、若しくは自分の私生活に影響が出てしまうような闘い方はしないようにしてもらいたいなと思います。心が折れなくて立派ですが、本編では止めてしまうケースですが、レフリーが止めたくても、あくまでアマチュアのゲートの選手なので、極めが弱いということもあり、ここからどちらにも変化します。攻めあぐんで技がパスしてまうケースもありますし、そのまま思いきり壊れてしまう場合もあります。レフリーの立場からすると、ある意味、本戦よりも恐い試合です。そういう意味ではあくまでアマチュアの登流門なので、ギブアップなり、何なりというサインは、不幸な事故を起こさなない為にも、きちんとして貰った方が良いなと思います。そんな感じで、恐い試合があった事を報告しておきます。