メインイベント パンクラス(ネオブラ優勝者選抜チーム) vs チーム・クエスト【3 vs 3 大将戦】 ミドル級戦 5分3ラウンド
○三崎和雄(2R 3分31秒、KO/肩固め)エド・ハーマン×

ハーマン選手、最後は落ちてしまいましたから、強烈な肩固めでした。試合は序盤、互角の打ち合いの中からハーマン選手がテークダウンを取っていきながら、三崎選手を上から攻める展開でした。私が担当レフェリーでしたが、ここで1つ危惧したことがありました。ハーマン選手は反則こそしてませんが、大変ダーティーな試合をしました。ビデオ等で見て頂ければわかるのですが、三崎選手の右目がかなり腫れていました。あれはパンチもありますが、意図的かどうかは別として、殴った後に肘に移行しています。それを私は1Rからずっと注意していて、肘が当たりそうな所で1度試合を止めて、注意を与えようと思っていたぐらいギリギリの線でした。但し、肘は当たらないのですが、前腕部、手首から肘に架けての腕の骨の部分、そこの所がパンチを打った後のフォロースルーで当たります。それで三崎選手の目が腫れ出しました。「こいつダーティーだなぁ」という感じでした。ただ肘先は当たらないので反則ではありません。それが初めからその部分を当てにいくなら注意も出来ますが、その部分で見た目のダメージが凄く大きくなってしまったところに、1Rはそういうことが終始があったので、ラウンド間にセコンドとハーマン選手に「肘が危険だから気を付けなさい」という注意をしに行きました。三崎選手には「しっかり見てますから」という事を伝えての第2Rです。スタンドの展開の中で今度はハーマン選手はロープを掴みます。細かい所で足を引っ掛けたり、手を止めたりしてるので、丁度ニュートラルコーナーの近くで三崎選手が投げを打ちにいき、ロープを掴まなければ、そのままテークダウンを取れそうな勢いの場面がありましたが、しっかり掴んでいて、注意しても離さないので、しょうがなく私がその手を上から掴んで逆にハーマン選手が手を離せない様にして、ブレークをかけました。そして「この手は誰の?」と聞いたら、「アッ、俺のだ」という様な中で(笑)、「今、掴んでいるでしょ」という話をして、「次はカードですよ」という事で、本当に反則ギリギリでした。それが意図的に狙っているのか、ダーティーな心持ちでしてるのか、恐怖感の中でついついしてしまうのか、をれは計り知れませんが、そんな試合の中でも、やはりタフな男はきっちりと1本を取りました。この肩固めは相当良い形で入りました。入った時点で見込み1本にしたかったぐらいですが、流れの中で、見込み1本は出来なかったので、タップもしなかったといより、出来なかったというのが正しいと思いますが、良い形で入り、あっという間に締まったので、そのまま落ちてしまい、KO勝利という形で、山宮選手と三崎選手の勝利に因って、今度はDAYの借りを返す形で、2-1でパンクラスチームの勝利という結果でした。

総括としては、やはり練習の中で何かを見つめている人達が、NIGHTの試合も含め、勝利を手にしたような気がしました。三崎選手、大場選手、山本選手、そして過去の自分を大切にしてリングに上がって行った太子郎選手。タフな事をずっとして来て、そのタフな自分を信じて歩を進めた人が、やはり確実に勝利しているという、パンクラスのリングを垣間見た様な気がします。DAYもNIGHTも同じ様な感想になりますが、練習とは何の為にするのか?プラクティスを重ねて、技術力を上げるというだけではありません。1つ1つ毎日の練習を積み重ねて、それを身に付けていくという、1つの自分の確認儀式というのもあります。これだけ今日やったという。一切妥協せずにやってきて、1つの勝利を突きつけたという中で、私は凄く勉強になった後楽園ホール大会でした。ゲートの試合も含め、この日行なった試合で、ゲートに出たP'sLABの植村選手は、試合前に肩が外れて手が上がる状態ではありませんでした。そんな中で試合に臨んでいく、そういう本来、格闘技の中のドロドロした厳しい所を真正面から受け取って前に進んで行く、要するにリスクを負っても、それを跳ね返すだけの体力を付けた者が前に進めます。リスクを負ったらいけないと思い、風が止んだら前に出ようと思ってる者は、ここからどんどん取り残されると思います。風が吹いていても出なければならない時は出、出た時に辛いから普段から体力を付けて行くんだと言うシンプルな形にパンクラスは段々なって行くと思います。
そういう意味の中で、今回、私が昼夜の中でMVPを選ぶとしたら、北岡選手を押します。
彼がクラスを無視して、軽いクラス、自分のクラス、重いクラスの選手と闘いながら、自分の体重に変化をかけるという事は、並大抵ではありません。文字にしたら簡単なことですが、食べたい物を押さえ、練習内容を変え、自分の信じる技術を求めながら新しい事をやり、本当に頭の中にはそれだけしかないという日々を、彼は2年過している事を、私は十分知ってます。それだからといって、当然の事ながら判定に影響するなんていう事はありませんが、勝利を聞いた時、若しくは見た時に、「アッ、やっぱりな。良かったな」と思う気持ちは、何かささっとやって、才能だけで勝った人間の勝利とは、私は比べ物にならないぐらいの感動を与えてくれたという事で、あの日は北岡選手の日だったと思います。その北岡選手のイメージはismのパワーだという事です。ここから稲垣組を含めパンクラスの面々は、ハートをいかに外に向けて発信していくかという、そんな勢いの付く後楽園ホールでした。