まずは5/28後楽園ホール大会でのvs杉内勇(team ROKEN)戦を振り返っていただきたいのですが、連勝ということで周囲の期待も大きかったと思います。その点でのプレッシャーはありましたか?
前田吉朗:普通通りですね。気負いとかもなく・・・序盤に顔面を蹴られて、まわりは「ヤバイッ」って思ってたみたいですけど、僕の中ではそんなこともなかったですし。試合に関して言うと、勝負の分かれ目っていうのはチョコっとしたことが意外とデカイと思うんですよ。イケルと思った時にイクというか、ここっていう勝負所を逃さないっていう。逆に他の選手を見てて、良い打撃を入れてるのに躊躇しちゃってる場面があると思うんですよ。相手がグラッときてるのに止まって見ちゃってるっていうのが。それを見てて「何でイカンの?俺ならイクで」と思っちゃいますね。「一発当たったら、二発、三発とイクやろ」と。別にそれは「今や、イカンとあかん」って意識してるわけじゃなくて、気付いたらイッテルという感じなんですけどね。

フィニッシュは見事な右フックによるKO勝ちでしたが、あの右フックには近藤有己選手の“ブルート”のような名前はあるのですか?
前田吉朗:あれは普通のフックですね。必殺技は別にあって、“めこレート”です。藤本(直治)のあだ名が“めこ”っていうんですけど、“めこ”を倒した左ストレートなんで“めこレート”(笑)。練習では出てるんですけど、試合ではまだ出したことがないんで、いつ幻の“めこレート”が出るのかは、お楽しみって感じですね(笑)

前田選手も近藤選手同様、打撃の“当て勘”が凄いと思いますが、それについてはご自分ではどう思いますか? 専門誌のインタビューでは、「パンチを出したら相手のアゴに吸い込まれていく」というコメントもありましたが。
前田吉朗:感覚ですね。稲垣さんに「もっとこうした方が良い」と教えていただいて。矯正というか、いろいろと改良した結果が出てるんだと思うんですけどね。最初から相手がよけるとは考えてないっスから。みんなも当たると思って出してるはずですし、「外れるやろな」って思ってパンチ出すヤツはいないでしょうし。まぁ、僕に関して言ったら、出したら勝手に当たってるって感じですね(笑)。最近4試合は打撃で倒してるというのもあるんで、打撃には自信がついてきてますね。当たれば倒れるなっていう。

改めて前田選手の戦績を振り返ってみると、10戦中6試合が一本勝ちですが、その中で極めて勝ってるのは、デビュー戦でのvs梅木繁之戦でのチョークスリーパーだけなんですよね。
前田吉朗:まぁ、あれは怪しい一本ですけどね(笑)。きっちりと技術でとったというより、勢いでとったっていうか(苦笑)


では、7/25後楽園ホール大会での『ネオブラッド・トーナメント』に同じ稲垣組の藤本直治選手が出場しましたが、その闘いぶりをどのようにご覧になりましたか?
前田吉朗:まぁ、良く頑張ったと思いますね。準決勝は「何しよんや、コイツ」って見てたんですけど(笑)。出見世(雅之)選手には「勝ってもらわな困る」って思ってたんで。5月の予選では(出見世選手に)負けてますけど、その時は藤本が一人でダメな方向へいって、最後に自分で潰れてしまってたんで。

決勝戦の山本篤選手との試合はどうでしたか? 山本選手に攻め込まれつつも、最後まで必死に何とかしようとする藤本選手の頑張りが見られた試合だったと思いますが?
前田吉朗:もっとあっさりやられよるかなっと思ってたんですけど(笑)。準決勝を見る限りでは、厳しいなと。でも、思ってたより良くやりましたね。1ラウンドの最初の2分ぐらいでは、「勝つんちゃうか」って思ってたんですが、まぁ、その後が良くなかったですね(笑)。でも、藤本の強い気持ち、あきらめない姿勢が見れたんで・・・久々に強い藤本が見れた気がしますね。

決勝で藤本選手に勝利をおさめた山本選手が、前田選手への挑戦権を獲得しました。山本選手にはどのような印象をお持ちですか?
前田吉朗:まぁ、優勝したんやな、強いんやなって。でも試合を見てて、対戦して(自分が)負けるとは思わな かったですね。確かに強くて穴がないんやけど、自分を倒す何かを持ってるとは思わないですね。

vs山本戦がいつどこでというのは具体的には決まっていませんが、「いつでも来い」という感じですか?
前田吉朗:いや、そんな偉そうなことは言わないですよ。対戦するのは楽しみですし、魅力ある選手なんで。対戦したら面白い試合になると思います。勝負をちゃんとするというか、勝ち負けをきっちりとつける試合をする選手だと思うんで、対戦するのは楽しみですね。


では、今回の試合に関してお聞きしていきたいのですが、前回の大阪大会の時は、初のメインイベント出場に関して「出来れば試合順を変えて欲しい」という弱気な発言もありましたが、最後は見事な勝利で大会をきっちりと締めました。
前田吉朗:2月はバッチリでしたね(笑)。どうなるかと思ってたんですけど、最後をきっちり締めることが出来たと胸を張って言えます。

2月に引き続き今回もメインイベントとなりますが、もうプレッシャーは感じてないですか?
前田吉朗:中途半端に2月が良かっただけに、それ以上のものを見せないとっていう色気づいてる部分がありますね(笑)。プレッシャーはないですけど、自分の中での盛り上がりというか・・・「どうやったら、前よりカッコええんやろ?」みたいな(笑)。でも、それがプロだと思うんですよね。「前回よりも良いものを提供する」っていうのが。前回来てくれたお客さんは、前回のイメージを持ってまた観に行こうとなって来るわけじゃないですか。「コイツは面白い」とか「コイツやったら何かやってくれる」っていうイメージで。そういうお客さんをまたその次も来たいって思わせるには、「やっぱりコイツ凄いわ」っていうのを見せないとダメですから。まぁ、偉そうなことを言ってますけど、実行出来るかどうかは別として(笑)。

今の発言は非常にプロ意識を感じさせる発言だと思いますが、いつ頃からそんな考えを持つようになったんですか?
前田吉朗:いつっていうか・・・今聞かれたからそう答えただけで(笑)。でも、最初は自分も観る方だったわけじゃないですか。パンクラスや『PRIDE』も観てたんで。で、段々と観る方の目も肥えてきて、その時は凄いなと思っても、一年後同じものを観てもそんな感動がなかったりするわけじゃないですか。常にそれ以上のものを求めてしまうっていう。その時の感覚でいうと、「やっぱり次もお客さんは期待してるんやろな」とは思いますね。

以前お話を聞いた時に、「大阪の興行は稲垣組が仕切るようにしたい」と発言してましたが、今年の2月、8月と続けて前田選手がメインに出場と、段々とその形になりつつあるんじゃないですか?
前田吉朗:なってますね。計算通りですね(笑)。まぁ、僕だけじゃなくて稲垣組の若い選手も相当力を付けてきてますから。武重(賢司)さんも自分なりの闘い方を見出してきてるし、(藤原)大地も実力を上げてきてますし、藤本も今回のネオブラで良い経験ができたと思うんで。やっぱり何回練習するよりも、一回試合をした方が凄い経験を積めますから。もう僕が稲垣組どうこうと言わなくても、自然と稲垣組が注目されるようになってきますよ。


では、対戦相手のフレジソン・パイシャオン選手に関してですが、『ブラジリアン柔術世界選手権』2連覇など、柔術で輝かしい戦績をおさめている強豪です。
前田吉朗:まぁ、情報はちょこちょこあるんですけど、出稽古に行かせてもらってるパレストラ大阪のタクミさん(プロ修斗選手)にいろいろと柔術家対策を教えてもらってますね。

2月に対戦したアレッシャンドリ・ソッカ選手と同じ柔術ベースの選手で、ジムも同じ「グレイシー・バッハ」です。当然パイシャオン選手は、ソッカ選手の敵討ちのつもりで挑んで来ると思いますが?
前田吉朗:まぁ、ソッカとは別モンと思ってます。でも、ソッカの時のようにイケルやろと(笑)。でも、どんな奴と闘っても打撃しか出来ないとか、寝技しか出来ないっていう選手はそうそういないんで、特に相手に対して作戦を練ってどうこうっていうのは考えてないですね。

パイシャオン選手は“モンジバカ”という手首を極める技が得意技で、あの中井祐樹選手にも“モンジバカ”で勝利をおさめてます。
前田吉朗:まぁ、そんな技にはかかりません(キッパリ)。逆に“マンジバカ”を極めちゃりますよ。

マンジバカ? 本当にそんな技があるんですか? 前も“電電(でんでん)”という秘密兵器があると言って、結局試合には出ないまま、お蔵入りになりましたけど・・・
前田吉朗:今回はマジで出します!(キッパリ)

ちなみに“マンジバカ”の名前の由来を教えて下さい。
前田吉朗:マンジっていうのも、藤本のあだ名なんですけど(笑)。その藤本に極めた技ですね。どんな技かは言えないんで、まぁ試合を注目してて下さい。

では最後の質問です。現在パンクラスマット以外での試合(※総合・シングル)も含めデビュー以来10戦10勝と連勝が続いてますが、連勝連勝と騒がれるのは本音としてぶっちゃけいかがですか?「もっと騒いでくれ」と思っているのか、「そんな騒ぐなよ」って思っているのか。
前田吉朗:まぁ、ゴチャゴチャ言われんでも、また勝ちまっせと。また騒いでくれって感じですね(笑)。って言うとまた調子に乗ってると思われるんで、やめましょう(笑)。特に僕の中で連勝に関して、「騒いでくれ」とか「騒いでくれるな」っていうのはないですね。まぁ結果ですから、やっぱり一つ一つ勝っていくだけなんで、連勝ということに関しては拘りもプレッシャーもないですね。

では、いつも苦手にしている(笑)、「当日の試合を楽しみしていらっしゃるファンの皆さんへのメッセージ」をお願いします。
前田吉朗:ありません(苦笑)。ん〜、そうですね・・・あっ、思いつきました! まぁ、今回皆様にお披露目するであろう秘密兵器、“マンジバカ”が極まれば、皆様に美しい風景をご覧いただけると思いますんで、楽しみにしてて下さい。ヒントは、まるで試合の終わりを告げる花火が打ち上がるようなイメージですね(笑)。ステラホールに夏の花火を観に来て下さい!

前田吉朗選手database