セミファイナル ライトヘビー級戦 5分3ラウンド
○ニルソン・デ・カストロ(2R 1分14秒、KO/膝蹴りによる)渡辺大介×

【シュートボクセvsパンクラス】という、近藤選手の敵討ちの様な形で、そういうところで渡辺選手も随分肩に力が入ってようです。カストロ選手はローブローの多い選手なので、その辺は懸念されていたのですが、今回もぎりぎりのローブローがあって(苦笑)、私がレフェリーだったのですが、ポイントも取らないし、カードも出しませんでしたけど、当人はちょっとふてくされていました(苦笑)。でも、やはりローブローですから。要するに良いタイミングでインローを蹴ると、当たってしまうのは良く解るのですが、それはそれで気を付けて貰った方が良いなと思います。

試合は1R序盤、前半の半分ぐらい何も起きないまま1分が経ち、しっかり距離感を持って、中々渡辺選手は良い圧力を出しながら、試合を展開しました。この辺は近藤選手と同じ様な試合展開となりました。相手を見て、プレッシャーをかけて、カストロ選手も中々入れない状態で、良く周りを見ながら、距離をしっかりと確認して、踏み込めない、踏み込みさせないという拮抗した試合が1R前半は続きました。ただここで、渡辺選手も距離を取り、フェイント等を入れましたが、これは余計でした。これをする事に因り、隙を作りました。そうしたイメージで余裕を持たせて、自分の中でフェイクを入れたりした事で、カストロ選手の右のローをカット出来ずに足に貰い出しました。良い所に当たっていましたし、やはりカストロ選手はキックボクサーですから、そのローは相当きついと思います。3発ぐらい貰い、足が鈍りました。そして鈍ったところで距離を詰められました。ファンの皆さんはビデオ等で見て頂ければ良く判ると思いますが、ローというのはそれで倒すのでは無く、相手が足をちょっと引き出したりした時に、距離感というのは一気に変ります。ほんの数cm、蹴られるのが嫌で足を引いた事に因り、踏み込む距離は数倍になります。それが勝負の分かれ目でした。

逆に上手くローキックを脛受け、膝受けするという事で、蹴った方を壊す事が出来ます。逆に蹴った方も出足が鈍ったりします。ディフェンスが攻撃になる事もありますが、こういう練習は地道で、痛いので、あまりやりません。私はこれは絶対した方が良いと思います。パンクラスの選手も含めて、総合をする人は、蹴る事より、そういう受ける事をちゃんとしていく事。受ける事が出来れば、受け返しと言って、受けた後に、蹴って来た足を蹴り返したりする事がきちんと出来ます。これは立ち技等の試合では、蹴られたら絶対返します。『K-1』の一流の選手達は、パンチでもキックでも、貰ったら絶対直ぐに返します。これは鉄則です。それを守り切れないで、知らず知らずに受けに回りました。試合の構図は簡単で、首相撲からの、顔面への膝蹴り、それが得意なだけに、それをきっちり狙っていきました。ただ普通の選手と違ったのは、その形になっても渡辺選手は頭を下げる事をしませんでした。これは相当強い筋力を持たないと、カストロ選手の首相撲で頭を下げたり前に崩されたりしないというのは、相当なものだと思います。ただそこまでで、そこから自分で何かを仕掛けていく事が出来ませんでした。立ち技の間合いは互角ですが、KO出来る技があった者と無い者との差でした。ここで渡辺選手は打撃に付き合うべきなのか、投げを打ってグラウンドに持ち込むのか、その辺のテーマ不足が渡辺選手の敗因だったと思います。カストロ選手はやはり自分のパターンを遺憾無く発揮して、勝って試合が終ってみたら、2R1分少しの中で、自分としたは大きなダメージも無く安定した勝利という図式になりました。最後の膝蹴りは凄かったです。ゴスンという、もの凄い音がして、渡辺選手は真下に沈みました。

その後カストロ選手は追い討ちをしませんでしたが、それだけ手応えもあったし、最終的にはそれだけ余裕があっての勝ちだったのでしょう。余裕がなければ、その後殴ったり蹴ったりしにいきます。それだけ渡辺選手としては、良いところが無くやられました。カストロ選手は、このVS渡辺戦でちょっとまたファイターとしての株が上がったなと思います。これは本来逆でなくてはいけません。私は彼の試合前の勝率を聞いていて、彼はご存知のように、デビュー戦から敗戦街道まっしぐらで、デビューするのにも苦労して、してからも苦労していました。そういう中で勝ち星と負け数の差が随分縮まって来て、言われてみたら、ここ数年はあまり負けていないのだなという事を、何となく思っていたのですが、そういうイメージをお客さんが持ち出した時にきっちりと勝たないといけません。ましてやこのマッチメークはライトヘビー級の第6試合です。メインイベントを控えた第6試合にこの試合を組んで貰い、これは絶対に勝ちにいかなくてはいけません。その為には勝ちにいく姿勢です。今日の大会の一貫したテーマですが、勝ちにいく姿勢が渡辺選手にはありませんでした。こんな所で守っている状態ではありません。勝ち負けに拘わらず、何をしたいかをアピールする事がお客さんの心を掴みます。でうからここは仕切り直して、勝率だの勝ち星だの勝ち方だのという事よりは、闘い方を見せるのがプロなので、それを見せられるような選手になって貰いたいと思います。カストロ選手、豪快に勝ちました。

>>> N E X T