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およそ50秒で、高森選手の試合としてはやや長めの、と言って良いぐらいの試合でした(笑)。何故長めになったのかと言うと、開始から15秒、これはネツラー選手の試合でした。開始早々にお互い打ちにいき、高森選手が良いのを受けました。逆にいいのを与えて、流れを自分の方に引き込んだネツラー選手の試合でした。ここで謙吾選手ならば、一旦耐えて組んで、という風にしてしまうのかも知れませんが、実際してしまいましたが、高森選手はその場面でも打ち返していきます。これは技術として良いか悪いかは別として、それにより逆に、高森選手のパンチがネツラー選手の顔面を捉えて、攻守が入れ替わっていきます。後半20秒からのおよそ30秒間、高森選手の独壇場になりました。考え様によっては、49秒の開始20秒はネツラー選手の「TKO勝ち?」、後半30秒は、高森選手の「1R30秒KO勝ち」という、一粒で2度美味しかった様な試合かも知れません。その部分に、やはり高森選手の集中力とタフな心。そういうものが反映してるように思います。特に最後の35秒ぐらいからの、10秒前後の最後のKOシーンのところまでは、私の担当試合でしたが、どこで止めようかと思いました。試合が終わった後のレフェリー会議の中で、「あそこ以外では止め様がないですね、というところで止めましたね」という話を、梅木レフェリーや和田レフェリーから言っていただいたのですが、本当に止めるのが難しい試合でした。ダメージもありましたが、ネツラー選手もまだ意識があるし、と言っても、どこまで続けさせるのかという所での波状攻撃は、それは凄いものでした。メインイベントとして華々しい試合でした。 これでまた高森選手には、秒殺神話が1つ増えたわけですけど、試合が終わり、高森選手が試合の感想というか、反省を、「今日のはちょっとな」という事を話していたようですが、そういう意味では大変危険な橋を渡った、そんな試合展開をしてしまったというところは、自他共に認めている事だと思います。ここからスーパーヘビーのベルトを云々となると、この階級の最大の特徴は、謙吾選手の試合もそうでしたが、ワンパンチでも良いのをもらうと結構大変です。とうい事は、スタンドでも適確な仕事をしなくてはなりません。怖さ等、色々なものがあると思いますが、開始早々の闘いをきちんと凌げるか、もしくはファーストチャンスをちゃんと取れるか否かです。ネツラー選手はそれを取り損ね、そのお陰で、最終的にはセカンドチャンスを取られて負けてしまった形になると思います。そういう意味で高森選手には、序盤の一気果敢な攻撃以外の展開をそろそろ見てみたいです。そう思います。このパターンになった時は、あまり勝率が良くないと思うから、良い形で、自分の新しいパターンを作ってもらいたいなと、贅沢な注文をしたいと思います。ネツラー選手は良いキャラクターもあるし、今度謙吾選手と闘ってもらったりして、面白い試合をしてもらいたいなと思わせる様な、多分、謙吾選手となら手が合うのではと思いますので、それで良い試合をしてもらいたいなと思います。高森選手はMEGATONのリーダーとして、良いパンチで試合をしてくれているみたいで、会場にも柔道時代の仲間と思える応援も凄くあった様なので、ますますもって高い頂に立ってもらう為の練習に励んでもらいたいなと思いました。 ■ 総括 今大会は、結果的には一本勝ちが2試合でしたが、第3〜5試合、第7試合、いずれもあと少しで一本というところまでの試合でした。そういうところを見ていくと、この日の後楽園ホールというのは、皆自分の色を出しつつ、一本を狙いにいっている選手というのが目白押しという感じです。強烈な個性の間で拮抗していった試合でしたから、判定の試合は続きましたが、決して時間の止まった退屈する試合ではなかったところに、パンクラスのリングが色んな意味で進化しているんだなと、強く感じさせた大会でした。ここから、ポイントを拾って勝ちにいくというよりも、勝負を取りにいく選手が結果的には強いんだと言う事で、試合巧者ではなく、勝負師が上にいく大変厳しいパンクラスマットというものが浮き彫りになって来たと、そんな印象が強く残った後楽園ホール大会でした。 さぁ、この秋、パンクラスは試合が続きます。選手も大変だと思いますが、一本勝ちを狙っていただいて、自分のクオリティーの高さを示すという事、ただ単に勝率だけでは、私は中々ファンの方々を魅了出来ないと思います。逆に良い試合であれば、ドローであったとしても、お互いが光る、納得する、そういう試合になって来ると思います。【シムズvs北岡】戦は、3ラウンドフルタイムの引き分けでしたが、お互いに評価を得た良い試合だったと思います。こういう試合を期待しつつ、激しい一本を取りにいく試合を演出してもらいたいと、それ目指して練習してもらいたいと、そう思った後楽園大会でした。 ■ 和田良覚レフェリー 今回の大会から、和田良覚レフェリーがパンクラス審判団に参加をしてくれるようになりました。レフェリーとしてのキャリアも経験値も大変あって、柔軟な姿勢と、ルールディレクターという肩書きも長い間お持ちですから、そういう意味では、実際の闘いの中の、注意すべき狭間、見逃してはならない事、イレギュラーに起こりうる事、試合とはなんぞやという事、そういう色んなものにおいて、凄く私なんかと同じ意見、認識を持ってくれている、知識者として、大変心強く迎える事が出来たという事と、今迄やってきた、パンクラス生え抜きレフェリーとは違い、彼に新しい事を体験してもらうわけですから、そういうものを改めて伝える上で、自分達の意識も新たになって来ました。実際、以前からパンクラスのレフェリーはismに肩入れしてると言われたりしましたが、逆に言うと、その辺のジャッジングは凄く難しく、逆に初めてパンクラスのジャッジングをした和田レフェリーの方が、パンクラスの選手に高い点を付けてしまったりという事実をわかっていただけたたらと思います。それは誰が見ても、ルール上の中で、パンクラスの試合はこういうルールの中で採点していますという決まりがありますから、ismの選手も私達に文句を言うし、他団体の選手も文句を言います。皆が「そうだよね」なんて思う試合は少ないものです。野球では、バッターはハーフスイングでも止めたと思うし、打っちゃいけないと思うからハーフスイングをしたバッターは止めてるので、「止めたじゃないか」というのが素直なところです。ピッチャーは振らせようと思って投げたボールですから「振ったじゃないか」と思うわけで、そのハーフスイングをストライク、ボールと言ったりする事自体は、「絶対にそうだよね」というケースの方が少ないのです。そういう意味も含めて、和田さんという人が入ってくれる事で、もっともっと緻密なレフリングが出来、もっともっと緻密なジャッジングが出来るんじゃないかという、一つ新しい展開が生まれたというところで、私達にとっては幸せなスタートを切れた大会だったと思います。ますます頑張っていきたいと思います。 |