メインイベント 第2代ウェルター級王者 決定4人トーナメント 第1試合 5分3ラウンド
ランキング3位
ヒース・シムズ
(チーム・クエスト)
ランキング6位
井上克也
(和術慧舟會RJW)
1R 4分40秒、KO/グラウンドのパンチ
■ヒース・シムズ(74.4kg) セコンド:ダン・ヘンダーソン
■井上克也(74.8kg) セコンド:光岡映二
レフェリー:梅木良則

小さな短い打撃を使いながら組んで行こうとする井上選手.対して長めの距離を取る打撃で相手を翻弄し、入って来る相手に組み付き、膝蹴り等で主導権を握ろうとするシムズ選手、という展開でした。試合が動いたのは3分半過ぎでした。激しい小さな打撃の応酬が続き、先手を取ったのはシムズ選手でした。井上選手が入ろうと間合いが詰まった所に、良い形でカウンターパンチが顔面に当たりました。シムズ選手はカクンと来ましたが、井上選手の真骨頂はここからでした。膝が崩れながら前に出て、逆に距離を詰め内側から自分の間合いで連打しました。傷口が大きくなる前に、本能でピンチでも前に出て自分の闘いに持ち込んだ所に井上選手の強さ、トーナメントに名前を連ねているだけの試合でした。ベルトを目指し、盤石の態勢で臨んでいるのが見え、スリリングで面白かったです。パウンドに入ってからは、シムズ選手の意識が飛びかかっていましたから、最後は失神してしまいました。井上選手の快勝でした。この後上がって来る選手がいますから、次の展開が楽しみですが、鬼気迫るものが両者には見え隠れしてましたので、そういった気迫の試合は一瞬の隙で決まるという試合でした。

総評
今大会は流れも速く、竹内選手の試合以外は1本で決着がついてます。必死さというものが、今大会の根底に流れたテーマだったと思います。年末の『K-1ダイナマイト』で、私はボビーさんというタレントのセコンドをしました。番組中では、彼は順調な試合の流れであるなかのように映っていますが、実は私が彼を見始めてのは11月からでしたが、その時点でケガをしていて、外れかけている状態の彼の右手は上がらず、それで彼は私の所に来ました。それで彼の試合へのアプローチは右肩の治療からで、それをしながらトレーニングをし、番組収録をし、それから試合に向けての練習をするという形でした。治療、リハビリ、フィジカルエクササイズ、番組収録、試合への練習という難しいアプローチで、彼も試合直前まで本当に疲れていたと思います。そんな状況下でも、彼は知的な男で、一生懸命自分の現状を見ていました。そして彼は、相手は誰でも問わず、理想とするプロの試合に出場ならば、覚悟し臨むという事でしたので、私もそれに対応し、色々な事を教えました。彼は素直にそれを受け入れ、練習し、結果も付きました。展開は作戦通りでしたが、構えて打てると思ったらタックルで一気に詰め、得意の刺し合い、グラウンドに持ち込むというプランを組み、その通りに彼は闘いました。でも、言うは易し行なうは難し、です。相手の打撃の重圧に対し、一気に踏み込むのは1、2度殴られた人は、その恐さが良くわかると思います。しかし懐に行く以外、彼に活路はありませんでした。彼は練習でそれを理解し、作戦ではなく、彼にはそれしか出来ないんです。それがわかってるからこそ必死で突っ込んで行きました。相手にしてみれば予想外だったと思います。

そういう“必死さ”が今大会の全てだったと思います。判定でも熱戦で、お客様を引っ張り込み、そしてKO決着が続いたのだと思います。トップに立つには、技術だけでは通用する時代ではなくなってきています。全身全霊で闘った16選手からの年頭の贈り物を受け取った気がします。本当にありがとう、という気持ちです。2005年スパイラルツアーは“必死さ”が鍵になる様な気がします。次の大会で初試合の選手にこのメッセージが届いてくれている事を期待してます。