メインイベント 全日本キックボクシング連盟公式試合 ヘビー級 3分5ラウンド
王者
郷野聡寛
(パンクラスGRABAKA)
ランキング4位
桜木裕司
(掣圏会館)
2R 1分17秒、KO/パンチ
■郷野聡寛(88.7kg) セコンド:石川英司
■桜木裕司(94.65kg) セコンド:小林聡
レフェリー:大成敦

 郷野選手は、試合以前から「省エネで勝つ」という事を言ってましたが、これは更に言うならば、テクニック、ヒット&アウェーというものを使いながら、技術というもので勝つという事の裏返しだったと思います。蓋を開けてみて、総合の世界だからという事を差し引いて余りある形の郷野選手のキックボクシングのテクニックというものを、十二分に見せた第1ラウンドだったと思います。離れて相手をすかして、小さなカウンターを打っていき、出て来ないと見るや強い打撃を打ちながら自分が出て行く。間にフェークを入れてかく乱させながら、的確な技を、ダメージを与えていき、そしてダウンを奪いました。ターニングポイントがあるとすれば、ここです。そこからは少し相手を見ながらという1ラウンドでした。逆に言うと桜木選手は倒されても、そこで逃げ腰にならず、前回の謙吾戦同様諦める事なく、1回ダウンを奪われても自分のやれる事だけは守り、やっているという様な試合展開でした。試合は2ラウンドで大きく変わりました。このラウンドの最初の1分も郷野選手のペースで試合が進んでいます。小さなコンビネーションで翻弄していって、本当にエアーポケットに落ちたようなものだったと思います。スッと出ていった郷野選手に対して、ポンッと合わせた桜木選手のカウンター1発で決まりました。やはりヘビー級のパンチは1発で決まってしまうこともありますが、99%抑えていたのですが、ちょっとしたタイミングで、本当にその瞬間だけ完璧な桜木選手のタイミングになりました。無防備なところに思いっきり入り、桜木選手の大逆転勝利という幕切れでした。これは見る人が見れば、桜木選手は良く頑張ったという試合だったと思います。桜木選手は、単に負けた勝っただけでは許されない色々なものを背負っています。1人の試合ではないという、昭和の匂いのするような部分ではありますが、孤軍奮闘ではない色々なものに影響しあって闘ってるんだというところが見所だったと思います。郷野選手は油断をせず、1からやり直しながら是非ともリマッチに挑戦してもらいたいと思いますが、諦めずに頑張った桜木選手の踏ん張りが全てでした。良く頑張りました!



3.6横浜文化体育館大会総評
 今回のテーマも“必死”という事で、それが印象的でした。本当の自分の居場所を手に入れたいと思っている選手の切迫した闘う姿勢。折橋選手、郷野選手は若干試合に慣れてしまった様な部分で、タイミング悪く、色々な意味で自分の弱い所をつかれたなと思います。運で言えば不運だと思いますが、やはりそこには何らかの意味があり、やはり一筋縄では試合はいかないという事を理解してもらって、大変怖いモノであるという事だと思います。そういうことを解ってもらいたいです。カストロ選手、シム選手にしても、相手が誰であろうと、恐るべき肉体的な集中力も含めて挑戦してきます。和田選手、長岡選手の相譲らぬ攻防も見られましたし、長谷川選手、北岡選手の、やはり高い所に水準を置いての、ウェルター級の攻防もありました。そういう中で負けはしましたが、佐々木選手は随分復調し、すごく心強いと思います。試合中、嗚咽する等が昨年何試合か見受けられましたが、それを精神的にどうだとか、こうだとか言うことではないと思います。それよりはどうやってなおってきたのかというところを、佐々木選手は明確にしていくともっともっと強くなると思います。これで息を吹き返してきましたから、そういう意味では佐々木選手の今後の闘いはすごく注目して欲しいですし、郷野選手がどうやって巻き返すのか、また三崎選手はどうやって自分の地位を進めるのかという所では目が離せません。今回は、前回辛い思いをした選手がしっかりと成長しているというところを良く見せてもらえた、良い大会でした。