： いよいよ明後日(4/10・日)に大阪・梅田ステラホール大会が迫って来ました。今大会のセミファイナルで、総合格闘技道場コブラ会の花澤大介13選手との対戦が決定している大石選手ですが、vs花澤戦は昨年10月・後楽園ホール大会でのvs長谷川秀彦(SKアブソリュート)戦以来、半年ぶりの試合となります。そこでまず一つ目の質問ですが、この半年間、大石選手はどのような事を考えて過ごして来たのでしょうか？ ■ 大石幸史：まぁ、考えると言うより、思い出す事の方が多い半年間だったと思います。今思えば。これからどうしようとか、そういうのじゃなくて、昔の事ですよね。・・・楽しんで自分がやってないなって言う。昔はこんな事なかったのになって。パンクラスに入りたい、プロレスラーになりたいなって思いながらレスリングをやってた頃の事とか。パンクラスに入る前の方が楽しめてやってたんじゃないかなと。そういう昔の事を良く思い出してる時間が、いつもより割り合いとして多かったですね。最近は。 ： いつ頃から楽しめなくなったって思いました？ ■ 大石幸史：ん〜、(ウェルター級の)ランキングが決まったぐらいですかね。思い起こせば。もう負けられないって言うか・・・負けちゃいけないのかなみたいな。まぁ、当然今でも負けたくはないんですけど、何かこう、辛そうにやってたと言うか、そんな感じがしますね。 ： ウェルター級のランキングが決定して、「負けられない」というプレッシャーの中で、大石選手は1年近くランキング1位の座を守り続けてきましたが、昨年10月の長谷川選手との試合で、デビューしてから初の悔しい一本負けを喫してしまいました。そのvs長谷川戦の試合前のご自分の状況を、今どのように振り返りますか？ ■ 大石幸史：あの頃と言うか、昨年の4試合を見る限りは、去年はもうずっと同じ感じですよね。オファーがあった相手と「やります」って言って、何も考えずに淡々と試合をしてると言うか・・・。相手が誰であってもそういう風に臨んでいかないといけないって、そう思い込んでましたね。これからもそういう風にやっていくんだって思ってたんですよ。でも、それはただ単に自分の気持ちが落ちただけだったって。そんな感じですね。自分自身の先が自分で読めないって言うか・・・。自分では別に落ち込んでる事に気付かなかったんですけど、今思えば全然元気がなかったと思いますね。 ： vs長谷川戦の敗戦を、ご自分ではどのように受け止めていますか？ ■ 大石幸史：長谷川選手の方が強かったと。・・・自分のその心理状況とかは、全く勝負の言い訳とかには出来ないので。まぁ、あの時の僕はあれがベストだったと。それで負けたのだから、長谷川選手が強かったと。それで僕が負けた。そんな感じですね。 ： 去年の11月の東京ベイNKホール大会で、近藤選手から「勝つ！パンクラス」という発言がありました。大石選手はケガの治療に専念していた時期だと思いますが、近藤選手の発言をどのような気持ちで聞いてました？ ■ 大石幸史：ん〜、ちょうど何か、さっき言ったような事を思い出してた時期で、僕はやっぱりパンクラスが好きで入りましたから、近藤さんのその発言の前からパンクラスは勝たないといけないって思ってましたし、強いパンクラスじゃないと意味がないって思ってたので・・・。でも、それだけだと僕はダメになっちゃったので、あの発言を聞いた時は、勿論その通りなんですけど、ちょっと今は僕は休ませてくれと。あの〜、その枠からは、お休みを(苦笑)って感じですかね。別に近藤さんのあの発言が間違ってるとは全く思ってないし、当たり前の事だと思ってますし。でもまぁ、僕の中の気持ちの割り合いが、昔ほどはそんなに自分を追い詰めてないと言うか・・・。「勝つ！パンクラス」と言うのが、僕の中では悪い方向になってたので・・・。だから、僕は良い意味での「勝つ！パンクラス」を自分の中で実践したいなって思ってますね。 ： 昨年末から今年の頭にかけて発売された、いくつかの専門誌の選手名鑑の中で、「今年の抱負」の欄に大石選手は「復讐」と回答していました。それは何に対しての「復讐」なのでしょうか？ ■ 大石幸史：あの〜(苦笑)、まぁ、負けたので、「復讐」って書いた方がわかりやすいかなと思って書いただけなんですけど。ホントはまぁ、負けた人に復讐するとか、そういう殺伐としたイメージではなくて。でも、もしそれがあるとすれば、自分自身ですね。今までの自分自身って感じですよね。 ： 気持ちが前向きになったと言うか・・・ ■ 大石幸史：楽になった感じですね。 ： 楽になったのはいつ頃からですか？ ■ 大石幸史：負けた瞬間かも知れないですね。負けた瞬間に楽しくなったと言うか。あの〜、ゴング鳴った瞬間にですよね。「立てないな」ってことで、廣戸レフェリーから「じゃぁ、止めるよ」って言われた時から。で、ゴングが鳴った瞬間に楽になったと言うか。何かこう、変な言い方ですけど・・・負けるのって簡単なんだなって。何かすごい恐がってたのに、それに対して頑張ってどうにかしようとしてたのに、負ける時ってこんなんなんだなって。こんなもんなんだと。そういう感じで。で、それだったらこれからの僕の方が全然面白いなって、そういう風に思ったんですよね。負けて悔しいって言うよりも、負けて嬉しかったと言うか・・・極端に言うと。勿論負けるのはすごい嫌なんですけど(苦笑)、何かあの時は、そういうちょっと嬉しい気持ちもありましたね。実際。 ： 昨年10月の長谷川選手との試合で足を負傷して、今年2月の後楽園ホール大会で一度復帰戦が決定しましたが、今度はその2月の試合に向けた練習中に負傷してしまい、2月の大会は残念ながら欠場ということになってしまいました。ケガが続きましたけど、現在のコンディションはいかがですか？ ■ 大石幸史：コンディションは全然良いですよ。まぁ、去年からケガも続いてたし、そのケガが続いた事で自分の身体のどこが悪いのかも把握出来たので。それにもう、そんなに若くないって事も知って(苦笑)。だから最近は身体を大事にしてるんですよ。昔はやっぱり、ケガしても練習しながら治すぐらいじゃないとって、体育会系的なノリだったんですけど、最近はもう自分の身体にそういうサインが出てるんだったら、しっかりそれを聞いてあげるようにって感じに変わりましたね。勿論今も練習で身体は疲れますけど、最悪の状況は脱したと思ってます。 ： メンタルな部分ではいかがですか？ ■ 大石幸史：もう、今は楽しみですね。 ： 試合に向けて？ ■ 大石幸史：そうですね。 ： 何が楽しみですか？ ■ 大石幸史：楽しみって言うか、楽しんでやろうと。今の自分を表現しようと。そういう風に思ってます。 ： わかりました。では、今回のvs花澤戦についてうかがいます。花澤選手とは以前一度対戦していて(2003年5月・横浜文化体育館)、当時はまだ花澤選手に「13」も付いてない時で、花澤選手のパンクラスデビュー戦でしたけど、大石選手は判定3-0で勝利しています。一度勝っている相手との再戦、対戦相手に花澤選手の名前を聞いた時の心境はいかがでした？ ■ 大石幸史：「誰か違う人はいないんですかね？」(苦笑)って言ったんですけどね。やっぱり同じ人と試合するのはそんなに好ましくないと。それはまぁ、昔からあるんですけど。勝った負けたに関わらず、同じ選手と試合するのであれば違う選手と、みたいな感じで。でもまぁ、大阪だし、大阪の選手も出たいだろうし。僕も復帰戦ということで細かい事も言えないし。それに(花澤選手は)渋谷さん(※渋谷修身選手)にも勝ってるし、最近調子も良いみたいだから、まぁ、対戦しても別に損はないなと。そんな感じですかね。 ： 花澤選手は昨年パンクラスで3戦2勝1分けの戦績を残していて、その3試合の中でも特に渋谷選手に勝利した試合(11月・後楽園ホール)が光るんですが、vs渋谷戦での花澤選手をご覧になっていかがですか？ ■ 大石幸史：やっぱりビデオで試合映像を見ても、昔は使ってなかった動きとかがあるので。それは僕も一緒ですけど、彼も負けた事を反省材料にして、日々強くなろうということをしてるんだと思うんですよ。だから勿論気は抜けないし。でも、そんなに自分を追い詰めないでって感じですかね。 ： 先ほどおっしゃった「楽しんでやろう」という事と被ってしまうかも知れませんが、今回のvs花澤戦での、大石選手の中でのテーマってどんな事でしょうか？ ■ 大石幸史：まぁ・・・個人的に技術とか、そういうのは色々意識すべきところはあるんですけど、やっぱり心の部分ですよね。楽しんで出来るか出来ないかって。心の部分を今回は重視しようと。重視しようと言うか、最近の練習の中で特に意識しているのはそれですね。気持ち、気持ちが良い自分を維持しようって言うか。 ： フルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジした大石選手という感じですか？ ■ 大石幸史：でも〜、心・技・体って言いますけど、やっぱり心が変わるとすごい変わると思うんですよね。けどまぁ、見た感じはそんなに変わらないかも知れないですけど。でも、僕の中では大きく・・・やっぱり去年が落ち込んでた分、今の自分はすごい楽しんでると言うか、そういう事が出来てるので。「僕はもう大丈夫だ」みたいな、そんな感じに思えるんですよね。 ： あの〜、大石選手の試合を見続けている皆さんの中には、やっぱり大石選手のイメージにポーカーフェイスというのがあると思いますけど、勝つために敢えて表情に出さないというのがポーカーフェースで、その逆で、試合中にとても表情豊かにその時の心理状態等を現す選手もいます。大石選手はその辺をどう考えていますか？ ■ 大石幸史：ん〜、難しいですね・・・。僕の中で目指すと言うか、考えている事がすごく矛盾してるんですよ。言葉に出来ないものだと思うんですけど、言葉にしたらすごく矛盾しているものが僕の理想で・・・。攻めるけど、攻めないって言う。あとは・・・熱くなきゃいけないけど、冷静でなくちゃいけない。ん〜、動きで例えるなら、前に出るけど後ろに下がる、右に動く時は左を意識するみたいな、そういうイメージなんですよね。だから、その辺を考えると、僕はポーカーフェイスの方なんですかね。 ： 大石選手の試合を観終わったお客さんが、どういう状態であるのがご自分としては理想ですか？ やっぱり試合展開がシーソーゲームだと盛り上がる事も多いと思いますし、逆に一方的に勝利してしまうと、お客さんも盛り上がる、声援を送る間もなく試合が終わって、それで静かなままという事もあると思いますが？ ■ 大石幸史：まぁ、自分の身体的には一方的に倒したいですけどね。でもまぁ、観てる人にどう思ってもらいたいかって考えると、「何か良くわかんないけど、アイツ楽しそうだな」って。「勝って良かった」みたいな。そんな感じですかね(笑)。 ： お客さんにはそう思ってもらえるような試合が出来れば良いかなと。 ■ 大石幸史：そうですね。やっぱりこのパンクラスismを目指したくなるような、「何かあのチームに入りたい」みたいな。「あのチームに入ると強くなれるのかな」みたいな。今、色んなジムとかがあるじゃないですか。そういう中で「パンクラスismって良いな」って思えるような、そういう感じが良いですね。 ： では、今回のvs花澤戦から話題を変えて、大石選手の今後について少しうかがいます。5月1日(日)の横浜文化体育館大会で、現在空位のウェルター級王者が決定しますが、そういう状況の中、今後大石選手は何を目指して、また、何をモチベーションにして試合を積み重ねていくのでしょうか？ ■ 大石幸史：自分が楽しめそうな場所であれば、別に何でも出ます。何でもやるし。だから・・・まぁ、今年の前半戦は、僕は勿論タイトルには絡めないんですけど、今はそういう何かの枠にハマってやるような試合じゃなくて良かったなって思ってるんですけど。ホント自分自身が楽しんで出来れば良いなってぐらいしか今は考えてないし・・・。まぁ、今は実際どうなるかわかんないですしね。やっぱり半年も試合をしてないし。実際どうなのかな？って気持ちもありますけど、とにかく自分らしく試合をすることですね。それがどこなのかは、今は全く見当もつかないですね。自分の中で。 ： ウェルター級のベルトに関してはいかがですか？ ■ 大石幸史：今はだから全然気にしてないですね。4人でトーナメントをやってますけど、ウェルター級の上位4人、トーナメントに出るに相応しい4人がやってるので、早いところチャンピオンを決めてもらってっていう。まぁ、僕はちょっとお客さんとして見てる感じで、そこに自分自身はいない気がしますね。今は絡んでない気がします。でも、いずれいくんじゃないですかね、やっぱり。でもまぁ、どうなのかな？ わかんないですね。何が僕を楽しませてくれるのか？ やっぱりそれを期待出来る場があれば、そこには出て行きたいですね。 ： では、大石選手ご自身の事からちょっと話題を変えます。4月10日の梅田大会で、パンクラスismの先陣を切る形で大石選手が試合に出場して、その1週間後の17日(日)には、道場長の伊藤崇文選手が『全日本キックボクシング』さんでキックデビュー戦に臨みます。そしてその6日後(4/23・土)には、今度は近藤選手が『PRIDEミドル級GP』の一回戦でイゴール・ボブチャンチン選手と対戦します。その伊藤選手と近藤選手の試合は、やはり気になったりしますか？ ■ 大石幸史：ん〜、先ずはやっぱり自分の試合っていうのがありますけど、でも勿論協力するつもりですし、勝ってもらいたいって気持ちもすごいありますよ。でもまぁ、やっぱり今僕が思うのは、みんなも楽しんで欲しいと。伊藤さんも近藤さんもパンクラスのリングではなくて、全くの外部で試合すると言うことで、意気込み過ぎなきゃ良いなとか。やっぱり「勝つ！パンクラス」っていうのがあるからには、特に伊藤さんや近藤さんは先陣を切ってそう言ってるので、それが重荷にならないように・・・。それはそれで、でも個人は個人として楽しんでリングに上がって欲しいという気持ちはありますね。 ： わかりました。それではこれで最後です。心・技・体の心の部分に大きな変化があった大石選手ですが、今回の大石選手の試合を楽しみにしている皆さん、そして大石選手を応援しているファンの皆さんへメッセージをお願いします。 ■ 大石幸史：まぁ、今回はステラホールなんですけど、やっぱり大阪でも、大きな会場で大きな試合をしたいと僕は思っているので、その中に僕も入れるように、今年1年を頑張っていこうと。パンクラスも、大阪で大きな大会が出来ることを望んでいると思うので、その時に参加出来るように、自分で上手く流れを持っていきたいなと。そのための復帰戦がこの大阪になるので。まぁ、とにかくメインイベント、前田吉朗の試合まで、皆さんにはリングに熱い声援を送っていただいて、楽しんでもらえたら良いなって思います。・・・・・・どうですか？(苦笑) ： 素晴らしいです(笑)。 ■ 大石幸史：でしょ？(笑)。この辺がもう、心が変わったって感じがするでしょ(笑)。 ■ 大石幸史選手database