まずは5月1日横浜文化体育館大会vsNUKINPO!戦を振り返っていただきたんですが、試合前はどんなご心境でしたか。
矢野卓見:かなり前のことなんで、忘れちゃったなぁ(苦笑)。

NUKINPO!選手とは、練習の時に偶然道場で顔をあわせる機会もあったみたいですが、そういう部分でのやりづらさとかはなかったですか。
矢野卓見:やりやすい、やりづらいってのは、あんまりないですよ。まあ、(試合が)決まったらやんなきゃ仕方ないし(笑)。基本的に、日本人同士だからとか、知り合いだからやりづらいっていうのはないですよ。あえてやりたくない相手っていうのは、嫌いな奴。試合をするチャンスすら与えたくないっていう(笑)。例えば○○○○とか(笑)。でもね、いいにしろ悪いにしろ、試合をするっていうのはチャンスだから、お互いに。仲いいからといって・・・まあ兄弟とかだとやりづらいかもしれないけど、対戦するっていっても、たいがい一回闘って終わりじゃないですか。「一回やったら、次はもう闘うこともねえから仲良くやりましょう。」ぐらいの感覚でいいんじゃないですか。

では、一度対戦した選手とは、だいたいその後仲良くなられていると。
矢野卓見:そうですね。試合して仲悪くなったのは、さっき言った○○○○ぐらいかな(笑)。

もうその話はいいです(笑)。では、実際対戦してみてNUKINPO!選手の印象はいかがでした。
矢野卓見:結構(NUKINPO!選手の)攻めが単調だった気はしますね。もっと色々やってくるかと思ってたんだけど、スタンドでも単調だった気がしますね。

試合は矢野選手のアームバーで見事レフェリーストップによるTKO勝利だったわけですが、リングに上がる前は、「寝技で極めてやろう」という気持ちで試合に臨まれるのですか。
矢野卓見:最近はもう何も考えてないけど・・・「お仕事、お仕事、早く終わんねぇかな〜」って(笑)。まあフルでやっても15分なんで、3Rの試合だったら、3R闘えるくらいの組み立てはしないとっていうのはありますね。前の試合は、1Rは流して、1R終わった時点で、なんも疲れてなかったから。息も乱れてなかったし。2Rに勝負を賭けれるなっていうのはありましたね。

矢野選手は試合中、常に冷静なイメージがあるのですが、試合中に慌てたりすることはないですか。
矢野卓見:まあ慌てるような展開にならないから。みんな寝技になると警戒してくれるし。微妙な間になるというか、あんまりガンガン攻めてこないから。

寝技では、絶対的な自信をお持ちだと思いますが、対戦相手から一本とられるという不安もしくは恐怖心はあるものですか。
矢野卓見:まあ相手によりますよね。十段(今成正和選手)みたいな、力も凄くて、どっから技がくるかわからなくて、いきなり極めてくるような選手だとシャレになんないし。まあ大体は相手と組んだ瞬間に、「大丈夫だな、コイツは。そんなに力はなさそうだな」っていうのは、ありますね。

矢野選手はパンクラス戦績6戦5勝1分けのうち、寝技での一本勝ちが4試合あるのですが、最近の総合格闘技では、寝技で決まる試合が少なくなってきてる気がするのですが。
矢野卓見:まあ確かに、グラウンドでサブミッションのテクニックがある選手が減ってきてるのかもしれないですね。

当然対戦相手も矢野選手の寝技を警戒している中で、それでも寝技で一本をとることができるのは、何か秘密というか秘訣があるのですか。言える範囲でいいので、教えていただきたいのですが。
矢野卓見:う〜ん、まあ最近で言えば力の使い方がうまくなってきてるってことじゃないかな。まあ、どう背筋につなげていくかっていう。相手の手なり足なりに自分が絡んだ時に、その体勢からどう背筋の力を使って、極めるように持っていけるかっていう・・・手の力だけで極めようとしても絶対無理だから。

矢野選手は、オリジナルの技というか独特の技をお持ちですよね。“センタク挟み”とか、昨年10月vs宮田卓郎戦で極めた変形のニーロックとか。
矢野卓見:あのへんは結果論というか、そういう状況で極まった技が何かっていうだけで、特にあれやってやろう、これやってやろうって、技を出してるわけじゃないんで。一般的によく使われる技もあれば、あんまり知られてない技、要は名前もついてないような技もあるし、状況状況でかかりやすい技っていうのがあるんで、たまたまその体勢でかかったり、この体勢ならこっちに捻れば極まるんじゃないかな、っていう感じでやってるだけですね。

特に関節技の中で、得意技というかこの技で極めてやろうというものはないですか。
矢野卓見:まあ練習とかだとね、今日はアキレス腱固め、今日はフロントチョークの日とか決めてそればっかりやることもあるけど、試合の時は狙っても疲れるだけなんで(笑)。適当にやってる中で、その流れでいけそうなのをポンポンってやってる感じですね。

矢野選手はずっと寝技を突き詰められてきたという印象がありますが、矢野選手の目指す寝技の最終到達地点を100とすれば、現在はどの辺りまで来た感じでしょうか。
矢野卓見:う〜ん、どうなんだろうな・・・60、70ぐらいじゃないかな。まだ知らないことも色々ありそうな気はするし。まあ、適当にやってる中で、何気ない動きでも、意識的にやったら使えそうなものもあって、時々そういうのがポンと出てくるし。

寝技嗜好は元々ですか。格闘技は柔道を最初に始められたんですよね。
矢野卓見:22歳で柔道を始めて。まあそん時は、寝技はほとんどやってないけど(笑)で、柔道は2年ぐらいやってたんだけど、10ヶ月ぐらいした時から、まあ体力的にも大丈夫かなと思って骨法にも通い出して。

今更ながらですが、22歳にして柔道を始めようと思われたきっかけは、何だったんですか。
矢野卓見:まあ、22歳というとみんな大学を卒業する年齢じゃないですか。俺は高卒で、4年間でなんも身についてなかったから、こりゃダメだなと(苦笑)。じゃまあ、好きなことやってみようかなと。元々プロレスも格闘技も好きだったし。自分でもやってみたいなっていうのがあって、柔道の町道場に通い出して。その後の骨法は、まだ骨法がの大会をやる前で、そんなに格闘雑誌でも取り上げられてなかった時だけど、骨法に入ろうと思ったのは、船木(誠勝)さんのせいじゃないですか。船木さんが掌打で高田(延彦)さんをKOしちゃたのがいけないんだよ(笑)。あれで、俺骨法に入ろうと思ったんだから(笑)。

骨法に入門されてからは、寝技を重点的にされていたわけですか。
矢野卓見:いやいや、3年間いたけど、最初の1年は打撃しかやってないんじゃないかな。

では矢野さんの寝技技術のベースは、何がベースとなっているんですか。
矢野卓見:まあベースって言ったら、自分の経験てことじゃないですかね。(寝技が)好きで練習してるうちに身についたんじゃないかな。

その矢野さん培ってきた寝技が直接習える“矢野卓見道場”ができるとお聞きしたんですが。(※“矢野卓見道場”8月22日OPEN/西武池袋線「ひばりヶ丘駅」北口から徒歩1分/お問合せ0424‐23‐3644【受付時間:金、日曜日を除く17:00〜22:00】)
矢野卓見:まあ俺は自分でいうのもなんだけど、ちゃんと指導できるから(笑)。俺は、優秀な指導者を見たことないんだよね。総合に限らず、格闘技の世界で。結構みんな偏ってる気がするんですよ。根性論に走ったりとか、できもしないような技術論を語ったりとか。なんだかんだ言って、パワーに頼ってる部分もあるし。要は力まかせにやって、正しくない形でも極まってしまうっていう。俺の場合は、自分の持ってる感覚・イメージをどう伝えていくかっていう、多分そういう部分では非常に優秀な気がするんですよ。まだ始めてないからなんとも言えないけど(笑)。まあ俺は高卒なんで、高卒程度の頭脳と能力があれば、理解してもらえると思うんだけど(笑)。

今までも烏合会の選手に指導されていたんですよね。
矢野卓見:あんまり指導してないな(笑)。みんなね、俺の技術を信用してないんですよね。俺だから出来るんだと思ってて。そういうのを押し付けても仕方ないし。やっぱりね、価値があるって思ってる人じゃないと身につかないから。何でもそうじゃないですか。やっぱり疑心暗鬼でやってたら、いい結果でないし。実際価値があるんだって思ってやるのと、なんだかよくわかんねぇなって思ってやるのとじゃ結果が違ってくるから。やっぱり俺のイメージもあると思うけど、変わった技とかアイツしかできないって思われたりしてるんだけど、俺が出来んだから、他のヤツも出来るだろって。そんな特種な体系してるわけでも、特殊な才能があるわけでもないし。

では、7月31日後楽園ホールで対戦しますクンタップ・ウィラサクレック選手についてですが、ムエタイ歴15年の現役ムエタイ王者です。ムエタイ選手ですと、過去にランバー・ソムデート選手と対戦(2001年12月『DEEP』ディファ有明大会、矢野選手の判定負け)されてますよね。
矢野卓見:まあランバーは(体重が)軽かったからね。今回は相手がどんな選手かもよくわかんないし、試合って、やってみないとわかんないですからね。グラップラーだと多少計算が出来るんですけど、ストライカー相手だと計算ができないですよね。どうなんですかねぇ、蹴りとかパンチがシャレなんないくらい強かったりするんすかねぇ。う〜ん、まあ試合自体は盛り上がるんじゃないですか。結構ビシビシ蹴られたりして(笑)。わかんないけど。多分ね、普通によくあるムエタイの凄いチャンピオンを総合に連れてきて、いきなりタックルで倒れて、極められておしまいって展開にはなんないと思いますけどね(笑)。俺タックルできないから(笑)。まあリング上で相手みて、どの辺に隙があるとかないとか、いきなりガッと来る相手なのか、カウンターを狙ってくる相手なのか、様子を見て適当にやりますよ(笑)。

現在矢野選手が試合に臨むにあたってのモチベーションは、どういうところにあるのですか。
矢野卓見:まあ試合自体に対するモチベーションはあんまりないけど(笑)。まあ試合は定期的にやっていかないと・・・経験になりますからね、試合は。ケガすんのが嫌なだけで(笑)。

最近矢野選手の試合をみてて、非常にコンディションがよさそうに思えるのですが、現在35歳という年齢で、体力的な限界を感じたりすることはないですか。
矢野卓見:今は全然感じないけど、どうかな・・・俺は引退する時は、辞めるって言って辞めないんじゃないかと思うんですよ。自然とフェードアウトしていくみたいな・・・試合が組まれなくなって出なくなるかもしれないし、またやりたくなったら出てくるかもしれないし、その辺は複雑な乙女心ですよ(笑)。今は全然できるし、やっぱりやれる時にやっとかないと、50歳、60歳になってやりたいって言っても、誰も相手してくんないし。今多少モチベーションが上がらなくても、リングに上がらなきゃいけない年齢というか、まだまだできるんだから、やらなきゃいけない年齢だと思いますね。

では最後に試合にむけての意気込みをお願いします。
矢野卓見:試合のことは考えないようにしてんだけど(笑)。多分リングに上がった時に、「あっ、試合か」って(笑)。「早いなぁ、時間がたつのは」という感じで、当日リングに上がってると思いますね(笑)。「テンション上がる前にリングにあがっちゃったよ」みたいな(笑)。まあでも、試合になれば入場曲がかかった時点で、ちゃんとスイッチ入るんで、まあ適当に楽しんで下さい(笑)。

矢野卓見選手database