メインイベント 第12回『ネオブラッド・トーナメント』ライトヘビー級決勝戦 5分2ラウンド
川村亮
(パンクラスism)
vs 小谷野澄雄×
(烏合会)
1R 1:15、KO/グラウンドパンチによる
■ 川村亮(88kg) セコンド:渡辺大介、北岡悟
■ 小谷野澄雄(89.5kg) セコンド:
レフェリー:廣戸聡一

前回の両選手の試合でも、パンチで川村選手が優位に立ち、判定3-0で勝利を収めています。小谷野選手が打撃をどういう風に、扱いながら、離れた間合いを扱いながら、自分の強靭な体の出力で、相手を封じ込んで自分の形に持って行くか、というのが一つの見所だったと思います。川村選手はスタンディングのパンチとキックというものから、どうやってシンプルな技で、勝っていくかという所が、課題であったと思います。再戦という形ではありますが、川村選手としたら以前の様に、組んだら負けるから、組まないで闘おうという焦りの部分も無いし、小谷野選手もカウンターで合わせて行くフック等は相当に威力のある打ち方でしたし、川村選手が遠間気味から打って来るリードパンチに対しても、前回は敢えて受けてしまうという部分がありましたが、それも上手く体でかわしながら、何とか相手を引き込んで行こう、組んで崩して行こうというビジョンも凄くあり、打撃をわざわざ嫌う事はありませんでした。打撃を嫌い組もうとするが為に、逆に打撃でコントロールされてしまっていた部分等も修正されていて、打撃は打撃で、自分で出して行き、何とか相手を捕らえるというところの部分等、両選手修正を加え、ワンランク内容を上げてきていて、さすが決勝といえる高い次元の試合だったと思います。そこがこの試合の切れ味になったので、このクラス位になると、ワンパンチ、一つの技自体が、全てが大きなダメージ、KOに繋がって行くという点では、そういう凄みも見えての、今大会唯一完全決着の試合だっただけに、見所は十分あったと思います。

試合開始早々、川村選手は左のリード、パンチを上手く使いながら、小谷野選手を上手く詰めて行き、対する小谷野選手も以前であれば後ろに下がり、体を固くしてパンチをガードするという場面が見受けられましたが、今回は自分から足で回り、上手く距離を詰めながら、打てるところでは左右のパンチをきちんと繰り出し、川村選手が逆に下がるシーンもあった位です。そういうところでの攻防というのは見応えがありました。

試合が動いたのは45秒過ぎ、川村選手が踏み込んで行き、距離が半端な中距離になったときに、左アッパー、もしくはフックがきちんと当たり、その距離を嫌い小谷野選手が離れる所に、もう一度、追撃の左右のストレートが入る展開の中で、小谷野選手は距離を取り出してしまいました。中途半端な距離感の中で、コーナーを背負ってしまったので、そこで左右に動けず、ちょっと目線を切った所に、すかさず川村選手が踏み込んで行き、顎先にパンチをヒットさせ、小谷野選手は沈むような形で腰を落としたところを、川村選手が上からパンチを振り下ろした形でした。それが何発か当たり、何発かはガードもしていましたが、一瞬意識が飛んでしまいました、直後は、このクラスでは大きなダメージとなりますので、そこで試合を止めました。そこから十数秒して意識は戻りましたので、大きな事なきを得たと思います。小谷野選手としては、一瞬の隙を突かれての強いパンチに試合を動かされてしまったので、大変惜しかった、というところです。今回は上手く体を密着させたり等の形に持っていっただけに、そこから上手く川村選手をコントロールしてもらったらなというところ等では期待できたのですが、一瞬の隙を突かれ、一気に強力なパンチ力で決着を付けられてしまいました。ですが打撃を克服しつつある小谷野選手が、違った相手、もしくは、同じ様な体形で組んでから殴るタイプの選手との試合を見てみたいなと思います。川村選手に連敗した形になりますが、その中に進歩が見えるだけに、組んでから殴った時の小谷野選手の強さいうものを、打撃に対し覚悟しているだけに踏み込みも強くなり、組む力も倍増していますから、そういう意味では豪快な勝ちっぷりが見たいなと言うのが、小谷野選手に対しての期待です。

優勝した川村選手は、総体的にらしさが表れ、経験のなさ、若さを、勢いというものに変換して、闘っていたように見えました。そういう事では、ネオブラッドらしい勝者という感じはしました。ただ左のアッパーでいきなり入って行くというのは、危険なので、もう止めた方が良いと思います。頭を下げ、一旦フェイクをかけ、下から単発のアッパーを仕掛け入っていくというのは、相手が打撃の上手い選手であれば、ミドルを合わされます。今度は一発で倒されてしまいます。気をつけてもらいたいなと思います。

川村選手がトーナメントの最優秀選手を獲得しましたが、唯一完全決着をつけ、これは問題なしです。ですが私的には、今大会で、明らかに何が一番面白かったかと聞かれたら、MVPを本田選手に付けたかったです。というのは、パンクラスの選手全体的に言える事ですが、仕掛けが遅いです。スロースターターもしくは、開始のゴングと共に、相手に一気にまくられやられてしまうケースが、ここのところパンクラスの選手に多いです。自分のリングであれば、何となくそういうリズムで闘って良いとは思いますが、ある程度それは楽な闘い方です。危機感のある試合であれば、相手をじっくり見るというのと、カウンターを取り、楽に勝つというのは全然違う話です。ですから、そういう意味で言うと、自分のスタミナとかを一切考えず、じっとしていたらやられちゃうだろうと、自分から動かなければという、その心だけで、相手を翻弄し、最後まで闘い抜いた所が、P's LAB横浜の選手だけに、道場の中で今何となくそんな空気が発せられつつあるのかなという期待も含め、細かい算段をせず、練習の中では反省したり色々考えてしなければいけません。ですが試合の時にこざかしく考えるより、思い切り行き、本能だけで勝って来てしまう方が、明らかに選手としては魅力的です。そういう事を踏まえたとするならば、とにかくやられるのが嫌だから、とりあえずやっつけてやると思って、単純に豪快に動き続けたというところでは、今後のパンクラスの選手の進む道を、彼がこじ開けてくれた様な気がして、今後はそういう所に注目したいなと思います。