野球少年からプロ格闘家へ

●そういえば、子供のときに大きい病気をやられたとか。
郷野:1歳のときに肝臓ガンで手術したんですよ。

●ガンですか!
郷野:でも小児ガンって、結構治る確率高いらしくて。それでも1度は最初に行った病院で「ウチでは手に負えない」って断わられて病院移ったらしいですけど。

●1歳じゃ、手術の記憶なんてないですね。
郷野:ないですね。だから物心ついたらキズがあって。別にそれで病弱になったとかもなくて、運動神経とかはクラスで1、2。いつも運動会ではリレーの選手とか。

●最初に始めた格闘技は何でした?
郷野:最初は友だちに誘われて、自宅の近くにあった空手道場に。

●中学?
郷野:いや、高校で。中学~高校とずっと野球やってたんですよ。野球部引退した後もプロテストとか受けようと思ってましたね。何でもいいから一芸で身を立てたいっていうか、普通にサラリーマンになっていくのが嫌だったんで。でもそのちょっと前頃から格闘技に興味が出始めて。結構野球やってたときもウエイトとかガンガンやってて、体だいぶできてたんですよ。で、その空手やってた友だちが「絶対やったら強くなれる」って熱心に声かけてくれて。

●その、野球のプロテストって受けたんですか?
郷野:いや、受けてないですね。野球のテストってだいたい秋口じゃないですか。その前に雑誌に「スポーツ会館のコマンドサンボの道場で、プロ格闘家を養成する」っていう記事が出ててそこにも通うようになって、それが5月か6月だったんですね。

●コマンドサンボはどれくらいやってたんですか。
郷野:結構やりましたね。いまは総合格闘技のクラスに変わって、それはいまでも週に1回くらい行ってるんですけどね。

●そこでサンボをやって、空手をやって。これ、同時進行でやってたんですか。
郷野:ま、同時進行ですね。空手のほうは、コマンドサンボ始めた頃に別の道場に移りましたけど。

●最初の試合というと?
郷野:トーナメント・オブ・J(ジャケット有りの総合格闘技大会/96年と97年は菊田選手が優勝)の1回目が長崎であったんですよ。94年の4月。もう8年前になりますか。格闘技を本格的に習い始めて十ヵ月で初めて試合に出て。負けましたね、一回戦でコロっと足首固めで。サンボにはないんですよ。アキレス腱と膝十字しかない。ヒールホールドとか足首とかは僕らの中ではやっちゃダメだというふうになってて。だからディフェンス知らなくてコロっとやられちゃったんですけどね。

●トーナメント・オブ・J、その後も出ましたよね。
郷野:そうですね。その後2回続けて出ましたね。

●村上(一成)選手に勝ったっていうのは?
郷野:次の年ですね。

●当時もう村上選手といえば名前のある選手でしたよね。
郷野:慧舟會期待の星みたいな感じで。体もでかかったですからね。よく倒せましたよ(注:ハイキックでKO)。

●サンボと空手とを合わせる、いわゆる総合の練習は、どこかでやってたんですか。
郷野:いや、やってなかったですね。別個の練習としてやって。ま、総合やるためにどっちもやってたんですけどね。総合の格闘家になりたくて。

●総合格闘家になりたいとハッキリしたのはいつになるんですか。
郷野:平(直行)さん見てからですね。リングスの実験リーグ(93年2月)。その頃はいつかやってみたいなと感じだったんですけど、スポーツ会館に入ってからは完全にプロを目指して。

●プロシューターになったのは…
郷野:96年ですね。

●で、デビュー戦が、パンクラスにも上がっていたトッド・ビョーナサン(注:パンクラスではヨナサンと表記)。
郷野:そうです。それもスタミナ負けですね(笑い)。そっからすでにスタミナ負けの歴史が始まっていた。

●その頃は、もう菊田選手とは知り合いだったんですか。
郷野:デビューする半年くらい前から。最初は菊田さんと佐々木の二人だったところに俺が一緒に練習するようになって、そっからのつきあいですね。

●最初の菊田選手の印象は?
郷野:正直、なんか、ま、柔道上がりの冴えない兄ちゃんだな、と(笑い)。

●結局、修斗では1位まで行きましたね。それを昨年辞めて、いろいろ進路が取りざたされてましたが、最終的にパンクラスのリングに上がった理由は何ですか。
郷野:5月の興行で佐々木と石川が負けて、菊田さんが「メンバーがほしいな」っていうふうに言ってたんですよ。「1回出てまた盛り返して、その後また他のとこにも出るかもしれないけれど、それでもいいんだったら出るよ」って感じで。それは菊田さんも「別にしばる気はないから」と。グラバカは基本的に出たいヤツは出たいトコに出られるっていう、何の拘束もしない、ただみんなで一緒に練習して強くなって、少数精鋭でどこ行っても勝てるチームになろうっていう。そもそものコンセプトがそうだったから。

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