PANCRASE 1998 ADVANCE TOUR 1998.9.14 日本武道館

第6試合 15分1本勝負
  • 鈴木みのる
  • vs
  • 高橋義生
×鈴木みのる(8分6秒、TKO)高橋義生○

前試合のルッテン選手、渡部選手戦入場の雰囲気と、本当に観客が総立ちという形で、もう単純にこの2人の闘いを喜んだという雰囲気が場内を包みました。観客、関係者がいよいよだと身を乗り出して大喜びというのとはまた違いまして、何といいますか鈴木、高橋戦がみたいだとどんな試合になってしまうんだろう、見たいぞという気持ちと裏腹に、いよいよこれが始まってしまうのかといった、会場の観客の皆さんが拍手ともどよめきとも困惑ともつかない空気リングをつつんでいきました。

選手はこのカ-ドが発表になった時に覚悟をするわけです。ですが観客の皆さんは頭の中で闘うんだな、楽しみだな、という形だと思うんですが、いよいよそれが目の当たりに今から始まるぞというときに、もう一回新たに腹を決めなければいけないという、それだけこの二人のキャラクタ-というものがファンの皆さんにものすごく受け入れられてて感情移入しやすいこの二人が同時にお互いを潰し合うという部分で複雑な目で試合開始のゴングを待っていたと、そんな感じがしましたね。不思議な感覚でしたね。ある方にいわせると船木、鈴木戦をみたときと同じ様な気持ちがしたという事を聞きましたね。その様な感じのスタ-トだったと思いますね。

高橋選手が勝ったんですが、やはりそうとう緊張してたと思います。試合前にテ-ピングを巻いたりするときも手も小さく震えていましたしね、気丈な事をいって自分を鼓舞していくタイプの選手ですからそういうことを言いますけども、やはり心中、心を鬼にして闘うだという部分での武者震いといいますか、手の震えを隠せない、そんなところに高橋選手のよさがありますし、鈴木選手も試合前ゆっくりと色々なことを考えながら、私に色々話しかけてくれるんですが、その言葉は自分を納得、説得させる、落ちつかせるために私に色々話しかけてくれているというそんな両雄でした。本当に複雑な気持ちで試合前の二人を見ていました。

やはりある関係者の方が本当に二人は仲悪いんじゃないですか、今後この二人はどうなってしまうんでしょうというような心配される声があったんですが、私はこれに対してこう答えたんです。本当に子供のころ=10代のころからお互いを知っていて、そして苦しい時パンクラスを旗揚げするまでに一緒にいたって、それから5年間、現在まで一生懸命やってきて、高橋選手がU.F.C.に出場する時、鈴木選手はケガをしていました。U.F.C.に向かって練習している時に鈴木選手は私にこう言いました。僕は高橋になにもしてあげられない、彼がパンクラスをしょって海外にでていくとき、僕は彼に何もできなかった、心から応援する事しか出来なかった。それがすごく悔しい。という事をポツリと言った事があります。逆に鈴木選手がスミス選手戦で苦渋をなめた時、もう一度闘って勝利を修めた時真っ先にうぉ~うぉ~泣いてたのは高橋選手ですからね。それだけ二人の心は通じ合っていますから、ある面心を非情にしなかったらこういうファイトは出来なかったと思います。ですからファンの皆さんに、今後どうのこうのあるという事ではなくて、そういう二人だからこそ、こういう試合になっちゃったんだよというふうにとらえて下さい。心配はしないでください。

鈴木選手もやぶれはしましたけども、この二人なんでこういう試合になったかといいますと二人の間合いの取り方が実に似ているんです。闘いのなかの間の取り方がすごく似てるんですよ。ですからもちろん私もこういう試合になるんではないかなと、この対戦が決まる前からもし二人が闘ったらかみあっちゃうんだろうなということは充分考えていました。激しいしばきあいというかたちのように見えますが実はそこにもやはり間合いをコントロ-ルしたりなにかするという形で技術的な部分もあるんですよね。そこで自分の間合いとファイティングスタイル、こういうふうに闘うだと決めてそれを終始崩さないで闘えたと言う部分が、アルティメットという一つの目標で間合いをどうしよう、どういうふうに闘うだということをきちんと理路整然と自分の中で体現したり経験のある高橋選手に一日の長があったというような形だと思います。

ですからこの後鈴木選手が今回のこの敗因から間合いをこうもっと実戦的にこう使うんだということが出来てくると次の対戦では同じ結果がでると限らないですね。まだまだ高橋選手もあの間合いからでしたら、フックぎみの掌打よりストレ-トの掌打のほうが的確に鈴木選手をとらえることが出来たと思います。ようするに鈴木選手の中心に向かってストレ-トを打ち込むという技術の方がリスクも少なかったと思うし確実に倒すことも出来たと思います。それも課題だと思います。

でかい相手と、手足の長い外国人選手と闘うであれば外側から打っていった間合いが損をしますからね。折角間合いというものをコントロ-ル出来てるんであればセンタ-から打ち込む。真っ直ぐ打ち込むという高橋選手のそういう姿を期待したいと思います。色々ありますけども技術的な部分でも一つ大きくみてとれた試合だったと思います。

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