「パンクラスの周りで起こっている出来事」ということで言えば、昨年11月、横浜大会での鈴木選手の『10周年のリングを仕切る』発言、それに対抗する形で出てきた、12月・ディファ有明大会での郷野選手のマイクアピール、そして最後に今年に入って4月に『パンクラスMISSION』の設立が発表されましたが、現在に至るまでのこのパンクラスで起きた3つの出来事を、伊藤選手はどう考えているのか? 先ずは鈴木選手の昨年11月の『オレが仕切る』発言に関してですが、伊藤選手はどういう心境であの言葉を聞いてました?
伊藤崇文:いや、全然すんなり受け入れられましたね。別に郷野選手みたいに反発するような気持ちもなかった。それよりもあの時は鈴木さんがライガー選手に勝ったっていうことで、ワァーッってなってましたね。でも一方で、『仕切る』って言ったって別にそうなるとは限らないしって、どっか冷静に受け止めてましたけどね。そうなるとは限らないじゃないですか。

あの日の鈴木選手と獣神サンダー・ライガー選手の試合を伊藤選手はどうご覧になってました? 会場の雰囲気も含めて。
伊藤崇文:全く違いましたね。悔しいけど、メインの試合だと思いますよ。オレは。だって会場の雰囲気がそれより前の試合とは全く違いますからね。理想っていう訳じゃないですけど、プロレスの会場って興奮度が低いと誰も熱狂しないじゃないですか。そういうものがやっぱり発展するじゃないですか。お客さんが熱狂するって。あの技上手いな、オオ〜ッていうだけだとセンズリと一緒でしょ。知ってる人だけの。当然、郷野選手の意見も僕は分かるんですけどね。



その郷野選手の発言に関してですが、あのマイクアピールは会場で聞いてました?
伊藤崇文:そうですね。

率直にどう思いました?
伊藤崇文:いや、別に坊主からやったことのないヤツに何も言われたくないよって感じでしたね。オレ、リングに上がってたんで、何か言い返したろって思ったんですけど、言葉が出てこなかったですね。先輩の鈴木さんがライガー選手に勝って正しいって思ったし、良かったって思ったし。ホントに。それとこれとは別で、オレだってメインをはりたいし、当然デッカイ会場でメインをはりたいのは一緒だから。だからそれを身内の発言だって郷野選手は言うんでしょうけど、坊主からやったことのない選手にオレがそんなことを言われる筋合いもなし。だってお客さんがそれを求めてチケットを買って、一方でいくらオレは頑張ってるって言ってもお客さんがそれを認めなかったら、頑張ってないってことと一緒じゃないですか。そう思います。基本的にはお客さんが決めることやとホンマに思いますけどね。オレは。だって郷野VSライガーだったらあそこまでならないでしょう。オレとライガーでもあそこまでならないと思いますけど。だから、その選手のバックボーンがどこまで伝わってるかだと思いますよ。ああいう試合、鈴木さんとライガー選手みたいな試合は。新日本からのドラマがあって。郷野選手にもバックボーンがあるんでしょうけど、伝わってないって言ったら悪く聞こえるかも知れないですけど、伝え方が上手いっていうセンスもあるだろうし。鈴木さんとライガー選手には。バックボーンの大きさがあそこまで(試合を)大きくさせたと思いますよ。当然人間は誰でも今を生きてるんでしょうけど、そういった記憶、バックボーンに対してみんな何かしらの感情があるから、そういうのを観たいんでしょう。昔はこうやったけどって。そういうのを知って観た方が実際試合も観やすくなるし。そういうことだと思います。

わかりました。では最後の『パンクラスMISSION』についてですが、鈴木選手の新日本プロレスさんへの参戦表明をどう受け止めてますか?
伊藤崇文:あの〜ismはismじゃないですか。ちゃんとイデオロギーがあって。鈴木さんはそこを抜けての新日本への参戦表明なんで、(鈴木選手が)そこのところをキチンとやってくれてのことだから基本的にはOKです。要するにパンクラスはこんなことはやりませんって言ってたじゃないですか。オレだってプロレスラーって言ってますけど、純プロレス的なことってやったことないし。やってることはヴァーリトゥードであって、純粋なプロレスじゃないじゃないですか。どう考えても。でもあそこの道場で育ったからオレはプロレスラーっていう気持ちがあるし。あそこでやってきたことは、間違いなくプロレスラーになるために通ることだし。オレはパンクラスを観てプロレスラーになりたいって思ったから、今でもプロレスラーっ言うし。だから(鈴木さんが)そのプロレスをやることに関しては、全然、オレは最後まで頑張ってほしいと思います。だってできる人がやるわけですから。最近どこかでやってる、格闘家が遊びでやってるプロレスごっこにはならないと思うし。だから全然反対はないですね。(鈴木選手が)どの階級でやるかはわかんないですけど。

鈴木選手の純プロレスの試合を観に行きます?
伊藤崇文:行きますよ。頑張って勝ってほしいですね。

伊藤選手は『パンクラスMISSION』に興味はありますか?
伊藤崇文:今、現時点では考えてません。いわゆる純粋なプロレスをやることについては。まだまだismでやるべきことが多いから、頭がそっちにまで回らないですね。まぁ、今までキャリアを積んできて、今後いろいろ引っ張っていかなきゃいけないオレ的には、やっぱり自分の立場があるから。でも鈴木さんも一人の選手やから、当然名前を上げたいやろうし。それ以上に多分(自分は)自分の名前を上げたい人やと思うから、それ(鈴木選手)には絶対負けたくないし。もっと言うと、『パンクラスMISSON』でパンクラスを外に広げるってことですけど、ismで十分、自分がやっていきますって感じですね。負けたくないですね、それは。勝ちたいですね。やっぱりネームバリューがあるからこそ、ああいう純プロレス的なこともできたりとか、キャパの大きな会場で試合ができたりするわけじゃないですか。負けたくないですね、基本的には。当然立場的には結構上になると思うんです。でも1選手として考えたら、これで鈴木さんが新日本プロレスに上がって、成功してパンクラスっていう名前が広まると、基本的に鈴木さんがパンクラスismにいて、「10周年をオレが仕切る」って言ってる状態と変わらないですからね。だから『MISSION』にいて、パンクラスという名前を広げていこうとする一人の選手には全然負けたくないですね。そういう野望が鈴木さんには多分あると思うから。例えパンクラスという名前を広げることよりも、新日本プロレスという大きな舞台で、鈴木みのるという一人の名前を上げたいっていう野望でも別にいいですよ。それでも負けたくないですから。お互いそれで上がっていけばいいし。別に鈴木さんと勝負してるわけじゃないんですけど、そういう気持ちっていうか、とにかく勝ちたいですね。