では、ここではパンクラス所属選手に関して更にお話をうかがっていきたいと思います。まずは高橋選手ですが、高橋選手のパンチにはどんな特徴があって、どういうところが良い点なのでしょうか?
田代勝久:ん〜簡単に言うと、高橋君は基本に忠実な打ち方をしますね。雑さがないと言うか。まぁ、アマチュアボクシングっぽいですけどね。ちょっと。ホント基本に忠実ですね。

それが良い点でもある?
田代勝久:もちろん。基本は大事ですからね。

今後、高橋選手がパンチの技術をより向上させていくとしたら、どういう点になるのでしょうか? どういった点が更に上達していくのでしょう?
田代勝久:そうですね〜、やっぱり試合で(相手のパンチを)もらわないで、一撃必殺じゃないですけど、コールドノックアウトが取れるようなパンチをもっともっと磨いてほしいですよね。

ちょっと話は変わりますが、田代さんと言えば、近藤選手が昨年11月の両国大会で菊田(早苗)選手を破ったフィニッシュホールド、“ブルート"の名付け親として知る人ぞ知る存在だと思いますが、近藤選手同様、田代さんが名前を付けた必殺ブローが高橋選手にも何かあります?
田代勝久:ありますよ。高橋君は“アイスラッガー"。『ウルトラ・セブン』のアイスラッガーって知ってます?あの必殺技と一緒で、なぎなたのように打ってくる右フックですね。あと、“力石(りきいし)ディフェンス”。

あの〜(笑)、パンチが“アイスラッガー"で・・・
田代勝久:ディフェンス面が“力石"。それとパンチがもう一つあって、それが“ショットガン"。左のストレートです。

“力石ディフェンス"ってどんなディフェンスなんですか?
田代勝久:身体の軸をズラさないでシュッシュッってパンチを避けるんです。


それは『明日のジョー』(※ボクシング漫画)で力石徹がそういうふうにパンチを避けてたんですか?
田代勝久:そうですね。豚小屋のところでジョーがパンチを打った時に力石が避けるんですよ。その感じに似てるなって思って(笑)。それぐらいですね。高橋君は。

わかりました(笑)。では、次に近藤選手ですが・・・。
田代勝久:ん〜どうだろう? コンちゃんは・・・良いところって、これと言って別にないんですよね。コンちゃんって(笑)。パンチ力がズバ抜けてるとか、そういう感じでもないんですけど、全体的に打つことに関しても避けることに関しても、他の選手とは違う軌道で打ってくるし、他の選手だったらこういうふうに避けるっていう頭の持って行き方も、彼は彼なりにいろんなところに頭を持って行って、それでバランスを崩さないんですよね。“マヨネーズ・ウィービング"って俺は名付けたんですけど(笑)。まぁ、そう言ったことじゃないですかね。俺が言えることは。掴みどころがないんですよ。ミットを持ってても。この選手はこれが良いから、もっともっとこうした方が良いのかなっていうんじゃなくて、本人しかわからない何かがあるんですよね。彼は。何て言っていいのかわからないけど。だから、コンちゃんのミットを持ってる時に俺が重視してるのは、彼のディフェンスとリズムを崩さないようにってことですね。

では、高橋選手と同じように、今後近藤選手にはこういった点を伸ばしていってほしいというリクエストがあればお願いします。
田代勝久:ん〜、要するに高橋君と一緒だけど、もらわないで、極端に言えば一発ももらわないでノックアウトするってことじゃないですかね。カウンターでも良いし、パンチ力でも良いし。そういったことじゃないかと思います。

わかりました。近藤選手で田代さんが名前を付けた技は“ブルート”と“マヨネーズ・ウィービング”の2つですよね?
田代勝久:はい。そんなもんですね。コンちゃんは。今のところ。

では、3人目の國奥選手に関して。
田代勝久:國奥君はコンビネーションの打ち方が綺麗ですね。動きそのものが完全にボクサーっぽいですよね。基本に忠実ってことでもそれほどないんですけど、自分で研究した、有名なボクサーの動きを真似したりとかそういう器用さがあって、パンチの打ち方、コンビネーションなんかがとにかく上手いです。

では、その國奥選手にもっともっとこういう点を伸ばしていってほしいというリクエストを。
田代勝久:そうですね・・・もっとパワーを付けてもらいたいですね。パンチ力の方で。一発で相手をグラつかせるぐらいのパンチ力を。

それは打ち方で変わってくるものですか? それとも身体全体の筋力になるのでしょうか?
田代勝久:ん〜、殴るコツっていうのをまだ微妙に掴めてないのかなって気もするんですけどね。コツ、殴るコツをもっと掴めば良いんじゃないですか。それは握力でも、スナップでも、後背筋で持って行っても良いし、肩とか足で打っても良いし。選手それぞれにパンチの打ち方っていうのがあって、それを早く見つけてもらって、國奥君らしいものを見せてもらいたいですよね。

選手それぞれのパンチの打ち方ということですが、高橋選手、近藤選手の場合はどうなんでしょうか?
田代勝久:高橋君の場合はキック力ですね。あとはスナップ。コンちゃんは身体全体のスナップっていう感じですね。部分部分に決められたスナップっていうものではなくて、身体全体のキレって言うか、スナップで打つ感じですね。

現在の國奥選手は、自分の中でそれをまだ確実には掴めてないということですか?
田代勝久:・・・良い動きはしてるんですけどね。良いフォームでパンチは打つんですけど。だからその辺のことを自分でも考えてるみたいですね。

その國奥選手にも、田代さんが名前を付けたパンチなりディフェンスって何かあります?
田代勝久:國奥君は“カーペンター・フック”です。要するに、大工さんが釘をドーンって打つじゃないですか。今はもうそんな時代じゃないかも知れないけど、あんな感じで身体ごと打つ姿が大工さんっぽいから“カーペンター・フック”って言ってるんですよ。それは右フックですね。

わかりました。では、最後に謙吾選手。謙吾選手のパンチの良いところ、特徴をお願いします。
田代勝久:謙ちゃんはホントに『K-1』選手じゃないですけど、良いフォームで良いワン・ツーとかフックを打ちますよね。ホント練習では彼も綺麗な動きをしますよ。

その謙吾選手ですが、これは國奥選手もそうなんですけど、高橋選手、近藤選手と違って、まだパンチでのKO勝利がありません。そこで、高橋選手や近藤選手のようにパンチでKO勝ちするために、謙吾選手はこれから何を変えていけば、また、どこを伸ばしていけば良いのでしょうか?
田代勝久:もっと場数を踏むことも大事でしょうけど、冷静さがほしいですね。謙ちゃん、すぐカーッとなるみたいだから。相手のパンチをもらうと。だから平常心。それを試合でも持てるようになれば良いんじゃないですかね。

謙吾選手がカーッとなった時、田代さんはセコンドの位置から見ててわかります?
田代勝久:えぇ。(相手のパンチを)もらうと、フォームが全くの別人になっちゃうんですよね。目の色が変わるんですよ。まぁ、格闘家としては良いことなんでしょうけど。根性があって。でも、もう少し平常心で闘えたら、練習の時のシャドーやミット打ちと同じようにパンチが出せれば、ホントにもっと勝ちがついてくるんじゃないかって思いますね。今言ったパンチだけじゃなく、分野は違いますけどグラウンドの面でももっともっと練習を積めば、自分なりの勝つコツっていうのを掴むんじゃないかなって思います。

わかりました。では、謙吾選手で何か名前を付けた技はありますか?
田代勝久:謙ちゃんは“エクソシスト”ですね。

“エクソシスト”?(笑)
田代勝久:それは何でかって言うと、謙ちゃんは左フックがすごく強いんですよ。これをまともに喰らったら『エクソシスト』みたいに首がグルッって一周回るなってことで、それで“エクソシスト”って呼んでるんです。大丈夫かな?こんなこと言ってて(笑)。

4月23日の後楽園ホール大会で保坂(忠広)選手を左フックでKOしたら、それが“エクソシスト”なんですね?(笑)。
田代勝久:はい。“エクソシスト”って謙ちゃんに言えって言ってるから、これはもう間違いないです(笑)。