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: 11月の鈴木vsライガー戦、12月の郷野発言があって今年いよいよ10周年を迎えるんですけど、今年パンクラスはどう進んでいくんでしょうか?
■ そうですね。要するにパンクラスは1種類じゃなくていいんですよ。パンクラスがなぜ総合格闘技とプロレスの両方の顔を持っているのかは、総合格闘技の競技性とプロレスのプロフェッショナルな部分をハイブリッドさせるためなんですよ。でもまだハイブリッドできてないんですよね。その両方を追いかけないといけないんです。これは6〜7年前からずっとなんですけど、散々格闘技記者の方に「プロレスの冠外して、総合格闘技のみでいってくれれば、いくらでもページ割けますよ」って言っていただいているんですね。でもその度に「いや、ウチは両方、総合の競技性とプロレスのプロフェッショナルな部分の両方でやっていきます」って言ってるんです。よく二兎を追うものは一兎も得ずって言いますけど、うちは片方の兎ともう片方の兎を交配させて新しいハイブリッドな兎を作りますと。
: ハイブリッドレスリングと銘打っている以上、二兎を追いかけていくよと?
■ いや、最初はいろいろな格闘技を取り入れてテクニックをハイブリッドさせていってたんですけど、最近はそこにイデオロギーも入ってきてますよね。総合格闘技の持つ競技性、勝つことだけを一番に考えていく競技としてのパンクラスだけなのか? それじゃぁパンクラスにプロレスのプロフェッショナルな部分は必要ないのか?って、その辺のことがここ2〜3年で考えられてきていますよね。だから僕はずっと前から「パンクラスは両方やっていくんだ。そこにハイブリッドの意味を見つけていくんだ」って言ってるんですよ。
この10年を見ていただくと分かると思うんですけど、これはウチに限ってのことじゃなく、総合格闘技の競技性を追っかけてきたところもあるし、プロとしての興行を追っかけてきたところもある訳です。UFCなんかはそうですよね。それで最近は、プライドにしてもレジェンドにしても、プロレスからの選手参入もある訳ですよ。どんどんミックスされてきてる訳ですよね。で、パンクラスは両方目指していくんだっていうポリシーを持ち続けてきたんですよ。
総合格闘技はまだまだ発展途上でどんどん変わっていくと思います。当然それを見ているお客さんも混乱していくと思います。そして僕らのやっていくことは、そんなお客さんをどんどん混乱させていくことだと思ってます。この1〜2年でプライドという総合格闘技の土俵の中でプロレスの選手という方がどんどん出てきてますよね。藤田選手や高山選手とか。だからもっと混乱させて、もっとハイブリッドさせますよ。
: それはパンクラスのリング上でということですか?
■ パンクラスのリングの上でもです。だって、今年のツアータイトルって何ですか?
: ハイブリッド・ツアーですね。そうすると、今までのお話を聞いて真っ先に浮かぶのは、昨年11月に行った鈴木vsライガー戦のようなものを今後も行っていくということですか?
■ えぇ、やっていきますよ。ただ固定的にはしません。お客さんが見たいもの、選手がやりたいもの、それをその都度見つけてリングで実現させていきたいと思ってます。例えば、そのヒントはこの間のDEEPがやった興行の中にもある訳なんですよ。たとえばキックの選手が総合のリングに上がりだしてますよね。でもDEEPでうちの砂辺なんかも試合をしたけど、ムエタイの選手なんかとのハイブリッドはまだこれからですよね。もしかしたらムエタイの選手が総合のリングに上がりだしてきた時には、物凄いものが見れるんじゃないかという予兆はあったんです。少なくとも僕には見えましたね。新しいハイブリッドが。
: 確かに打撃系よりもグラップリングに目を取られすぎてた感はありますね。
■ グレイシーなんかの柔術が入ってきた事で、ここ数年はグラップリングが重要視されていたかも知れないけど、打撃も着実に取り入れられてきてますよね。シウバ選手を見てもそうだし、ティト選手を見ても分かるでしょ。ボクシング、キック、ムエタイって取り入れてるじゃないですか。打撃というものが重要だということに間違いはない訳です。
: 近藤選手なんかは打撃で試合を組み立てていける選手ですよね。そういう技術もこれからはより必要になってくると。
■ そうですね。でも、菊田なんかは打撃が下手だとか思われているかもしれないけど、打撃は立っている状態だけでのものではないし、タックルにいってから、倒してからの打撃もある訳でね。そういった打撃に関しては上手いですよね。だから例えばムエタイの選手なんかでも倒れてからの打撃、ランバー選手なんか見ても下からの打撃って上手いですよね。彼は彼なりに今までのムエタイの打撃を応用してますから。ましてやDEEPは肘までOKしてますからね。怖いですよ。あと、フックでも首相撲でもそのあたりを応用されると強いですよね。キックよりムエタイってクリンチが多く認められてるんですよ。クリンチってのは凄く力を必要とするんですけど、そういう意味でも総合に取り入れられるムエタイの技術っていうのは多いと思いますね。
それで、ちょっと話を戻しますと、まだハイブリッドしないといけないモノってたくさんある訳です。今までもパンクラスのリングでは取り入れ続けてきたんですけど、まだまだ取り入れきれてないモノもあるんですよ。禅道会さんといった立ち技系の選手も多く上がってきましたけど、これもまだまだ表しきれていないし、取り入れきれてないですよね。だって、たかだか10年しか経ってない訳ですから。まだ10年。でもあっと言う間の10年でしたけどね(笑)。
: まだまだ色々な技術をハイブリットしきれていないということですが、その辺は選手には伝わっていますか?
■ 十分伝わってますよ。十人十色で考え方、捉え方は人それぞれでしょうけど、みんな郷野が言いたいことも分かってると思うし、各個人が自分のするべきことを一人一人が暗中模索しているはずですよ。
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