第3試合 ミドル級戦/5分2R
○長谷川秀彦(2R 5分00秒、判定/2-1)佐藤光留×

長谷川選手はミドル級6位というポジションで、上手くて強いという印象です。そういう所が長谷川選手の最大の魅力です。体幹が強くて、打つ・投げるの思い切りの良さを感じる、体の強さが表に出ています。だてに6位ではないと思います。対する佐藤選手、今回はマスクをかぶって、眼鏡をかけたマスクマンという事で、総合格闘技とは別にプロレスもファンだという、そういう自分の形でリングインしてくれました。ですが佐藤選手は、そういうキャラクターのイメージでいるようで、実は物凄く練習をしています。ですから、この試合は勝負では佐藤選手が負けたと思いますが、力は決して劣っていないと思います。試合中に立った状態でコブラツイストを狙ったようですが、試合後に聞いたら、グラウンドコブラを狙いにいきたかったと言っていました。そういう、随所にプロレス技を見せてくれましたが、これがことごとく、後ろをとられたり、首を取られたりということになると、何の意味で出したんだ、という事になります。

技術的には練習しているので佐藤選手は相当上手くなっていると思うし、練習であれば佐藤選手は相当強いと思います。ただ、こういう試合の場合、技術、体力の他に、もう一つ必要なものがあります。それは勝負感です。ここのところ良い試合をしているし、対外試合でも一本勝ちしているし、私は褒めていますが、この勝負感が佐藤選手にはないから、これを持っていないと、やはり判定なり小さなところで損をしていきます。逆に勝負感が物凄くあった試合が、最近であれば菊田早苗vs近藤有己戦です。これは凄かったです。お互い立ち合いには入りたくない。入ったとしても絶対後ろには引かない。そういう菊田選手と、なるべく自分には手を掛けさせたくない、テークダウンを取らせたくない、取られたとしてもポジションは譲らない。良いポジションを取られたとしても、そこからは何もさせない、といった近藤選手の勝負どころです。今、自分は前にいかなければいけない、引いてはいけない、譲ってはいけないという、その勝負どころのみで闘っていた菊田vs近藤戦。これと対極するのが佐藤選手の闘い方です。相手がどんな状況であろうと、出したい時に出してしまう。そしてその結果、相手の体に余裕があるから、自分は簡単に後ろを取られてしまうわけです。そういう技をどんなに出しても構わないし、逆に総合の試合でプロレス技で勝とうとするのは横綱相撲みたいなところがありますから、それであれば相手を徹底的に弱らせて、それで仕掛けていく。正攻法をちゃんと使ってはっきりと力を誇示した上で、必殺技、ヒーローでいう光線というのを発射するべきです。互角の闘いの狭間で、唐突に出してもそれは捨て身技としか判断出来ません。ですから、そこにヒーロー像の格好良さは出てきません。それで勝ったとしても、圧倒的なプロレス技で勝ったんだということとは意味が違うと思います。やはり正攻法で何回か勝っていく間に、逆に正攻法の佐藤 光留の怖さ、何が武器なのかというものをしっかり相手に印象付ける様な闘い方をするようになってから、勝負どころで意外なプロレス技というものに入っていったら、私は見事な試合が出来ると思います。

鈴木みのる選手、高橋義生選手はパンクラスの試合の中でプロレス技を出していますが、彼等を持ってしても、やはり真剣勝負の世界でなかなか余裕の無い時にそういう技を出そうとすると掛かりにくいものです。相手が気が動転してダメージが溜まって、充分な状態では無くなってから、それを出していくという勝負感です。これをしていかないと、練習でせっかく実力が付いてきてるのに、最終的には自己満足の戦績になってしまいます。プロはお客様に自分のやってきた事の必然性みたいなものを感じさせなくてはいけません。そういう意味では、佐藤選手は付いてきた実力で何回か勝ちにいって欲しいと思います。長谷川選手はその様な奇抜な事に惑わされずに自分の闘い方に終始したところは、さすがだと思います。ただ、勝つチャンスは何回か来たわけだから、その中で一本を狙って欲しかったです。長谷川選手なら出来たのではないかなと思いますので、そのへんは残念です。でも良い試合だったと思います。


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