第5試合 ライトヘビー級戦/5分3R
×佐々木有生(1R 4分18秒、KO/パンチによる)渡辺大介○

大変密度の濃い試合でした。1Rで決着がついた試合で、ファンの何人かの方から「早い決着でしたね」という言葉を耳にしましたが、2人のキャリアであればフルラウンド闘っていく内容なのかなという予想の元に、1Rで決着がついたという事で、そう言われたのだと思います。試合を一番初めに決定付けたのは、佐々木選手の左足をとらえた、先制の渡辺選手の右のロー。このローキックは物凄かったです。佐々木選手の右足前左構えに対して、渡辺選手は左前のオーソドックスという対決でした。佐々木選手は、左のミドル、ハイというのが一つの武器なんですが、この武器の足に向かって、いきなり渡辺選手は右の物凄く重いローキックを放ちました。当たった瞬間にリングがドンッと縦に揺れるぐらいでした。これは旗揚げ当初のルッテン選手、そしてシュルト選手の一発というぐらい、リングがドンッというほどの蹴りを渡辺選手は見せてくれました。そこからのスタートでした。

逆に渡辺選手の右のローに合わせる形で、佐々木選手が左のローをかぶせて、お互いの膝と脛がぶつかり合うような、そんな重い一発一発。佐々木選手の変幻自在のミドル、ハイが渡辺選手の鼻先を切っていく、ガードの上から蹴っていく、という形の中で、佐々木選手は気が付いたら右薬指を脱臼していました。同じく気が付いたら渡辺選手の左中指も脱臼していて、腱が切れていました。そんな中でお互いグラップリングが出来ない、お互い足も殺し合ってきている。そんな中、3分を経過した時点で、お互い武器が一つ取られてしまって、決死の覚悟の中での攻防でした。そこで先にパンチで勝負を挑んだのが佐々木選手。そのパンチは当たってはいるのですが、試合後、渡辺選手は良く見えたと言っていました。当たっても、冷静にダメージのない受け方が出来たと言っていましたが、そこで返す形で渡辺選手のストレートが佐々木選手の顔面を捕らえました。それに因っての仰向けに倒れてしまったダウン。試合はそこで終ったのですが、ここでもう少しそのままグラウンドの状態から攻防に移行する事も考えられると思うのですが、そこで思い出して欲しいのがこの日の第1試合、武重選手の大きな事故です。2人の選手の間合いが近くて、そういう状態になると、今のルールでは絶対に二の矢、三の矢という次の波状攻撃が待っています。しかも佐々木選手は両肩をべったり付ける形でダウンしてしまいましたから、これは間違いなくダウンです。一瞬の判断なのですが、ただ、それを継続させるかどうかというのは、次の波状攻撃で大きな事故が起きてはいけない、それから既に両選手の指が折れている事、そういう事柄を考慮して、ここで勝負あったでいいだろういう結末だと思います。それは何よりも、ライトヘビー級でキャリアのある佐々木選手、渡辺選手の一発一発というのは本当に恐ろしいという事です。この後、引退する稲垣選手が、「パンクラスのリングは命のやりとりなんですね」という話しをしていましたが、まさにそういうものを感じさせるだけの、一発一発を本当に思い切り、きっちり打っていって、そしてお互い刺し違いながらという中で、からくも渡辺選手が勝利を拾いました。私は勝負で言えば互角だったと思います。本当に良い試合でした。ですから、そういう意味では、こういうチャンスカードを自分のものにした渡辺選手も、普段の練習がこういう所で生きてくるのだと思います。佐々木選手は負けはしましたが、これは紙一重の世界ですから、指を治して、そして仕切り直してもらいたいと思います。


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