第3試合 無差別級戦68kg以下契約/5分2R
○前田吉朗(2R 5分00秒、判定/3-0)渡辺 智史×

この試合には注目点が2つあります。まず、前田選手の連勝街道がどこまでいくのか?という事です。そろそろプレッシャーもかかってきますし、周りが騒いで喜んでくれればくれる程、前田選手としてはどんどん重圧を感じる、という状態です。そして対戦者がどんどん良い相手になっていく。そういう意味での、胸突き八丁の大阪だったと思います。試合を終えて花道を帰る時も、前田選手のファンの方はどっと周りを取り囲んだりしてくれますから、この日1番の実質的なメインイベンターだった様な事さえも感じさせる前田選手でした。そして、もう1つの注目点は、無差別級の試合だと言う事です。先に出た武重選手の弔い合戦、敵討ち、仇討ちという形で、前回、武重選手を膝蹴りで葬った渡辺選手が相手でした。しかも渡辺選手も波に乗っている選手ですから、そういう意味では目の離せない、注目のカードでした。

試合は序盤から良い攻防でした。手数の前田に対して、適確にリードパンチ、もしくはストレートを当てていく渡辺選手。やはり基本に忠実であるからこそ、飛び膝蹴りであるとか、そういう大きな技もがっちり取れるわけです。コブラ会の選手は、やはり良く鍛えられていると思います。ですから渡辺選手のストレートで前田選手のぐらつく場面も見られました。前田選手は、今迄の中では焦った試合だったのかも知れません。それぐらい追い込まれたと思います。ただ、やはり前田選手の場合は、卓越した技術と強い信念、それと根性があります。浪花のド根性があります。それが最終的に渡辺選手を追いこんでいった、というところです。最後には渡辺選手は立てなくなりましたから、足の蹴りも効いていました。立ち難くなったので、猪木vsアリ状態と言うのでしょうか、そういう形も多くなってしまいました。2Rも中盤になった時点でその形になると、圧倒的に、そこまでの流れの中で試合をそこまで動かしていますから、ポイントを奪いにいったりと、なかなか普通の人だとそこから攻めません。ですが、リスクを全く無視して、どんどん上から、そこから、攻めていくという所に、私は前田選手の試合は判定になっても、またKO、一本勝ちに関しても、見る人は起承転結をはっきり見せてもらえたというところで、やはり前田選手はプロ指向なんだと思います。ファンの人も喜べると思います。

勝ち負けは戦歴ですから、もちろん大切です。野球で言う、ホームラン、安打数、打点、というような、勝っていくという積み重ねの様な、そういう評価のされ方もプロにはあります。ですが、常にこういう力を出しています、というアベレージというものも、実はプロの選手には物凄く大切な事です。良い試合は良いけれども、つまらない試合はつまらないというのは、それは、打つ時は打つけど、打たない時はからっきしだね、という事であり、毎試合ヒットを打っていく人の方が、やはり実力という意味では高く評価される様になります。それが、アベレージです。前田選手は今、アベレージヒッターでありながら打点、ホームランも打っているという、三冠王の風格さえ持ち併せようとしています。近頃判定が多くなってきました。この大坂の試合も、矢野君のKO勝ち以外は判定になりました。そういう意味で判定が多くなるという事は、実はどこかで守りに入っている部分があるとすれば、そういう人は格闘技をする意味が無いと私は思っています。私の判定は、あまり動きが無く辛いです。それは何故かというと、基本的に判定の試合は引き分けでも良いと思っているからです。倒すか倒されるか?で行われるのが格闘技の基本です。そこでお互いに倒せなかったら、引き分けで良いじゃない、というのが私の武道的観点です。武道的観点で言えば、私はそういう主義です。審判部長という形になるとそれは違いますが、私は基本的にはそういう風に思っています、人生というものは。ですから、自分が格闘技者と自負するのであれば、ファイターであるというのであれば勝ちにいって良いけど、自分は格闘技者、武芸者、であるという認識を持つのであれば、あくまでも最後は自分の一太刀で相手を倒すつもりで5分を闘ってもらいたいです。そういうお手本の試合だったかも知れません。

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