第5試合 ミドル級戦/5分3R
×窪田幸生(2R 2分46秒、TKO/グラウンドのパンチ)中西裕一○

第4試合と同じパターンです。要するに『ネオブラッド・トーナメント』の優勝者が、そのご褒美も含めてパンクラスのランカーに挑戦するという形です。挑戦した側が力を振り絞って出したという事では、やはりこの中西選手を大変褒めるべきだと思います。彼の良い所は思い切りの良い事です。素晴らしいなと思うのは、リング上での立ち振る舞いが、良い意味で面白く、好感が持てます。逆に入場の方が、彼の色を薄くしている様で、中西選手ぽっくないです。リングに入った時の中西選手の方が、彼らしいなと感じたりします。でもそれが彼の入場スタイルなので、それはさて置き、闘いのスタイルはやはり素晴らしいです。本当に素晴らしい。思い切りの良い中に、時折正確な技がきちんと出て来る事です。その部分が、見ていて何をしたいのかはっきりしています。切り替えも速くつけて闘ってきます。そういう意味では、2004年、来年に凄く期待したい。そんな選手です。私は、彼は応援したくなります。もっともっとリングの上で喜怒哀楽が出て、もっともっと彼が何がしたいのか? それがマイクパフォーマンスではなくて、試合の、闘っている形の中で伝わってきたら、私は来年中にベルト挑戦というのも十分可能性のある、それぐらいのキャパシティーを持ち合せている選手だと思います。ここで終る選手ではありません。

それに対して窪田選手。元気がありません。その中で彼は、やってはいけない事を完璧にやってしまいました。私がこういう事を言っては厳しいかもしれませんが、今最もismらしくない選手です。パンクラスismの中で最もismという言葉から遠い所に窪田選手は陥っていると思います。何故ならば、何がしたいのかわかりません。私から見たら只単に力んでいる男としか映らない。ハートフルなものも何も無いし、お客様に伝わって来るものも何もありません。それは何故かと言ったら練習に内容が無いからです。この後の試合の寸評で話をしますが、何がismなのか?何がパンクラスなのか? そんな区分よりも、GRABAKAの選手にしても、SKアブソリュートの選手にしても、V-CROSSの選手にしても、フリーの選手にしても、気持ちは同じです。色々なものを犠牲、または糧にして、時間を費やして、そして、どうなりたいかを自分で見付けていくという所では、それを表現しようとして闘うわけです。その意味では窪田選手の闘いは何の面白味もありませんでした。中西選手が面白くしてくれたというところで、私から言わせてもらえば、どっちがプロなんですか?という事です。今日は、大変きついですよ。窪田選手はもっと、もっと日常を変えなくてはいけません。練習の仕方、プロとは何か?といった事を、腰を落ち着けて、頭で考える状況ではありません。今迄のプライドも捨て、自分の理想の元に、悩んで悩んで痩せ細るぐらいの苦労をしなければ、そしてそのぐらいの日常を過さなければ人間は変る事はありません。それぐらい、自分を戒めないと歯止めは掛からないと思います。そんな試合でした。

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