第4試合 ウェルター級戦 5分3ラウンド
○和田拓也(3R 5分00秒、判定/2-0)門馬秀貴×

久しぶりの和田選手は髪型も一新していましたし、何と言っても表情の無い、淡々とした闘い振りが、私は大好きです。それでいて、負けず嫌いのオーラが一杯出ていて、試合に集中しているのが表に出て来る選手なので、私は凄く好感を持って見ている選手です。対する門馬選手は実力もあるし、表に出していく魅力というものが凄くあり、大変器用な選手です。能力も高く、今登り調子の選手ですから、この2人の対決と言ったら、やはり注目せざるを得ませんでした。この日の一番楽しみなカードだったと私は感じていました。

その注目の一戦ですが、私は門馬選手が試合を引っ張っていくのかなと思っていました。門馬選手が動き、和田選手がそれに対応していくのかなと思っていましたが、意外な事に、上手く間合いをコントロールして、門馬選手の打撃を間合いによって封印しながら、思い切りの良いタックル、踏み込みで和田選手が試合を動かしていきました。そしてグラウンドのコントロールまで和田選手が一気に持っていくという、そういう試合の流れになりました。ただ、門馬選手の面白いところ、凄いところは、私は2002年の『ネオブラッド・トーナメント』優勝の頃から思うのですが、彼は何が優れているのかと言うと、1本取る集中力、エネルギーが凄くあり、どんなところからでも、1本取れると思ったところから思い切り良く1本を取りにいきます。この試合も完成しかける1本の形というところで、門馬選手はかなり良いところまで和田選手を追い詰めるシーンが何回か見られました。その部分では、本当に1本への集中力というところが門馬選手の真骨頂でした。これが良く見られた、大変面白い試合だったと思います。それに対して和田選手は離れて、組んで、倒して、そこからポジションを決めて取りにいくという、大変スタンダードな積み重ねを、きちっ、きちっ、きちっと作っていきながら、その瞬間瞬間で思い切りの良い技を仕掛けていく、大変和田選手らしい試合運びだったと思います。髪型は変わりましたが、和田選手らしさは、まるっきりそのまま大変良い形で試合を展開してくれたと思います。アマチュアの選手は和田選手の闘い方を参考にしたら凄く良いと思います。一般的に簡単に言ってしまう様な、組んで良し、離れて良し、寝て良し、絡んで良しという、そういう単純なものではありません。もっと引き出しが多くて、どの状態からでも、上手く組み合わせていけるだけの積み重ねの良さ、組み立ての良さが和田選手の真骨頂だと思います。アマチュアの選手はそういう形を真似していける様に練習をしていくと良いと思います。総合格闘技をしていくと、総合をしているはずなのに、段々と打撃に生きようとしたり、寝たらこっちのものだとか、偏りを見せるアマチュアの選手が多くなってしまうのは、私は総合格闘技をする意味が無いと思いますから、すぐに勝てる勝てない、そういう事では無くて、総合格闘技の醍醐味を知る為には、私は和田選手の様な積み重ねて構成していく能力、そういうものを勉強したら凄く参考になると思うし、凄く強くなる、短期間で強くなると思いますから、そういうところを真似してくれたら良いなと思います。 判定は僅差でしたから、また夏の暑い、ムンムンした夏の夜に、長谷川vs中西、和田vs門馬、この2試合をもう1回見たいと思います。今度はどちらかが1本取る予感がします。

この和田選手と門馬選手の試合中に、一旦試合が止まった場面がありました。これは和田選手のパンチが門馬選手の顔面を捕らえて、門馬選手がちょっと効いたところに踏み込み良くトライして、ニュートラルコーナー付近のロープ際で和田選手がテイクダウンをしかけました。そこから門馬選手のポジションが悪かったということで、彼は閃きで身体を反転させて、ロープの外に反転してポジションを守ろうと思ったのだと思います。それが結果的に両者の身体がリングから出たという判断で、メインレフリーからはブレークがかかりました。これはルール上仕方ありません。両者の身体の半分以上、若しくは片方がリングから転落して、試合中のそのままのポジションで続行が出来ない場合はスタンドに戻してリング中央から再開する、というルール規程があります。そしてルールに則ってスタンドからになりました。和田選手としたら、「パンチでテイクダウンを取って良い形になったのに何でブレークだ?」と思ったでしょう。「STOP/DON'T MOVEではないのか?」と。和田選手側としては納得いかない形でしたので、そこで和田選手にはルール上仕方無いということを説明しました。但し、門馬選手に対してはもう1つのルールがあります。自分からロープ外に出てはいけない、それが著しければ試合放棄で負けになるというルールです。ですから門馬選手にはその部分が見受けられましたよ、ネガティブファイトとも取れますよという事で、でもそんなに露骨ではなかったこともあって、口頭で注意をしました。ロープを掴んで外に出る、相手を突き飛ばして外に出るというよりは、門馬選手が反転して外に出た感じだったので、和田選手としては、そうされたくなければ、反転する門馬選手を掴んで引きずり込んでも良かったのですが、それも出来ない状況で試合が流れたので、この試合担当の岡本レフェリーが、大きな放棄性があるものでは無いと判断して試合はそのまま続きました。但し、その様な行為が門馬選手に続けば、カードが出ることもありますという事を伝え、門馬選手の消極的な闘い方は、我々レフリー陣も確認、見ている事を試合中に和田選手に伝えました。そして和田選手の技術性の高さとポイントも確認している事、但しルール上スタンドからのスタートが義務付けられているので、それに従って下さいという事を、門馬選手が岡本レフリーから口頭注意を受けている間に、私が和田選手にその旨を説明しました。

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