第6試合 ライトヘビー級戦 5分3ラウンド
ランキング7位
佐々木有生
(パンクラスGRABAKA)

バック・メリディス
(チーム・クエスト)
2R 3分13秒、ギブアップ/三角絞め
■佐々木有生(86.5kg) セコンド:菊田早苗、郷野聡寛
■バック・メリディス(84.0kg)
レフェリー:梅木良則

久々の佐々木選手の一本勝ちでした。この日も第5試合まで判定が続きましたので、どんな状態であれ一本を取り、流石ランカーだなという部分を見せてくれた試合でした。

佐々木選手はここのところ自分に迷いがあったり、試合中も一皮剥けきれないという様な、自分の中のイメージも当然あったと思いますが、メリディス選手に対峙した佐々木選手は、まず立ち方が良いなと思いました。構えた時の重心の位置等も、随分練習をして持ち変えていて、良いスタートだったと思います。佐々木選手の好不調は、まず左のミドルとローキックです。それらを蹴った時の身体の揺るぎがあるか否かと、佐々木選手の真骨頂は左ミドルのスピードで、振幅が小さく、内側から強くバシッと繰り出され、身体がブレません。これにより相手がガードを下げたり、後退する時に、彼の波状攻撃というのが始まるし、その様に自分の間合いを作っていくのがポイントですが、ここ何試合かは重心がずっと後ろ足に流れていて、左の蹴りを出す時に頭が揺れる、身体が倒れ、結局それは構えてる時に手がブレるという事で、それに因り、逆にカウンターを打たれることが凄く多かったです。ですから、相手のリードパンチを小さく小さくセンターで受けてしまうという事が続いてましたが、この日の佐々木選手は、要所要所でそれがありませんでした。今回はミドルというよりは、相手の右足内側へのクロスの左ローキックをバンバン決めました。開始早々1分過ぎぐらいから、メリディス選手の体が起きてしまいましたから、そういう意味では、自分の間合いでじっくり闘えたなというところです。それ故に佐々木選手としては、まだまだ自分が、以前の様に積極的に出れないという、自分の心の中では「ん〜」と首を傾げたり、口を真一文字にする部分はあると思いますが、相手が崩れてくれて、その中で自分のペースで闘った事自体は事実なので、自分の感覚を求めるよりも、冷静になって今回の自分の試合を見てもらいたいです。そして、なるほど、自分の真骨頂はここなんだ、自分のスタイルはこういう事なんだなとしていくと、今の佐々木選手の悩み、もやもやは消えていくと思います。

実はこれは色々なスポーツにある事です。例えば、ガンガン打っていた野球選手が、あるところでパタッと打てなくなり、スランプになります。野球でも何でも、スィートスポットというものがあり、ポイントで綺麗に捌けば、ボールは飛んで行く様になっています。テニスでもゴルフでもそうです。手応えが無く、実は綺麗に捌けた、気持ち良く振れたというのが、実は本当の感覚です。人間はそれを繰り返し、記憶すると、物凄く手応えがあったと勘違いをします。本当は手応え無く振りぬけたものが、手応え無くふりぬけたという、手応えを求めてしまいます。そうすると、どんどん手応えとして求めていく限り、力みを生んだり、強い衝撃を求めたり、力を求めていってしまい、自分の本当の形を崩してしまう事があります。これはパンチもそうです。軽く振ってヒットしたら、パンチがぬけ、相手がスコーンと倒れてしまうものだけど、その手応えが無かったことを自分が憶えてしまうと、狙って打ちにいく様になります。これは強い衝撃を与えるという練習になって行ってしまい、そうやって崩していってしまいます。これは佐々木選手がそうだと言う事ではありませんが、そういうのと同じ事です。ですから、本来自分の形はこうではないというのは、実は後天的に頭の中で増幅して作ってしまった、そういうものを自分の感覚だということで求めているとしたら、「それは本来の佐々木君とは違うぜ」と言いたいです。彼はもっとスマートで、軽快で、肩に力の入っていない中で、矢継ぎ早に色々な技を出してくれるという柔軟なファイトスタイルというのが、私は彼のパンクラスのリングにパッと飛び出て来た時の、最大の彼のイメージです。それが今は固すぎです。負けたくない、GRABAKAのメンバーとして、みっともない試合はしたくない等、色んなプレッシャーはあると思います。自分の今まで勝って来た、一本勝ちの山を築いて来た等、そういうイメージを追い求めたり、色んな事があると思います。ですが、それは本来は結果であり、違うプロセスの中で君は闘ってるんだと言う事を私は佐々木選手に言いたいです。そうしたら、今あるもやもやは、もっと簡単に消えると思います。前にも言いましたが、ビデオを見る時、声援とか、そう言ったものを消して、ボリュームを絞って、客観視して自分の試合を見て下さい。今回の試合は、いかにも佐々木選手の立ち技の試合でした。そこから何が足らなかったか? 思い切り良く、打撃からテークダウンを取っていく所に佐々木選手らしさが無いだけだと、私はそう思います。下からの展開自体には、私は佐々木選手らしさがあったと思います。そういう点では、そんなにもやもやが長く続く程の状況では無くなって来たと私は感じます。まずファンの皆さんも、佐々木選手の真骨頂、左ミドルキックのスピード、今回は左ローキックのスピード、この辺が戻って来たという所に、佐々木選手の復調を私は見ました。自信を持って闘ってもらいたいです。

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