第3試合 キャッチレスリングルール ライト級戦 5分2ラウンド

矢野卓見
(烏合会)

宮田卓郎
(名古屋ブラジリアン柔術クラブ)
1R 4分59秒、ギブアップ/ニーロック
■矢野卓見(66.8kg)
■宮田卓郎(68.9kg)
レフェリー:和田良覚

久しぶりのキャッチレスリングでした。矢野選手が病み上がりという事もありますが、比較的大きなケガだったので、「その部分はどうですか?」という話をしたら、「様子を見ながらやるしかないですよ」という話をしてましたが、その様子を見る相手が宮田選手では辛いんじゃないか?という感もしましたが、試合は終始矢野ワールドを展開してくれて、お客様も堪能してくれたようでした。不思議な世界と思われてしまうかも知れませんが、実は矢野選手ほど、闘う基本を絶対に崩さない選手もそうそういないです。だからこそ勝利の鉄則として、要所要所は絶対に譲りません。その他の所を崩してるから、一般的な尺度で言うと、変わってる様に見えてしまったり、奇襲攻撃の様に見えてしまったりしますが、彼のしているプラクティスというのは、大変基本に忠実であって、守るべきこと、やる事というのを、きちんとやりながら試合を組んでいきます。

今回そういう部分では、打撃が入るとなかなかその形が見え難いのですが、キャッチレスリングという事で、私は思う存分堪能させてもらい、大変面白かったです。フィニッシュになった技も、一見どこで極まったかという様な終わり方でした。担当レフェリーの和田さんも、矢野選手から「膝が外れてしまってますよ」という事から、試合を止めるという様な、ワンテンポ不思議な感じのフィニッシュにはなりましたが、それも技術です。周りはアクシデントの様に思えてしまいますが、何気なく相手をコントロールしています。今回は相手に何となく引っ付いている様に見えながら、取り敢えず技に捕らえておいて、捕らえておいた形を察知されないように、凄く自然な状態でホールドしておきます。そして極める時に一瞬にして極めていくのが、矢野選手の闘い方の基本になります。それをただ忠実に行なったんだと思います。大変そういう意味での技術力の高さというものを見せてもらったと思います。

今回キャッチレスリングで打撃がありませんでしたから、自分から、矢野選手が上を向いて寝てみたりだとか、相手に対してただ単に仰向けに寝て、練習の様な雰囲気を醸し出したりしてますけど、それで逆に宮田選手もどうして良いのかわからなくなってしまったのかなと思います。何故かと言ったら、人間は外から入って来る刺激に対して反射的に何かをするという事が約束付けられています。相手に反射させない様にしてしまうと、相手は途方に暮れてしまう事になります(笑)。ただ単に、何の変哲も無い山なりのボールも、150kmを越える快速球の後に投げられたら、手足が出ず、動く事も出来ず、見送る事も人間にあったりするわけです。ただただ山なりのスローボールを見送ってしまうという事です。格闘技は、そういう人間がしているものなんだと言う事を、皆さん知る事です。ただ単に機械的に手順を憶えて、それを順序立ててやれば技が掛かると思ってはいけません。相手も人間、自分も人間です。その部分の葛藤の機微が2人の間にあるから、NUKINPO!選手にしても、志田選手にしても、矢野選手にしても、唐突に技が終了してしまったり、よもやという展開になるというのは、そういう事だと思います。ただ単に技の種類を知って、それで納得するのでは無く、人間的なゲーム展開というのも堪能してもらったら面白いと思います。返す返す宮田選手は大変苦労したと思いますが、良い経験になったと思います。それに対して矢野選手はケガで、所々技を途中で止めたりしているみたいだったので、私としては心配ですが、病み上がりとしては良い滑り出しだと思いますから、練習で無理せず、次の試合でも矢野ワールドを見せて下さい。

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