第3試合 ウェルター級戦 5分2ラウンド

アライケンジ
(パンクラスism)

野沢洋之
(スタンド)
2R 3分33秒、KO/顔面への左ハイキック
■アライケンジ(74.5kg) セコンド:高橋義生、大石幸史
■野沢洋之(74.3kg) セコンド:関直喜
レフェリー:梅木良則

スリリングな試合でした。負けん気、向こう気、スタイル、そしてバックボーンも、両選手同タイプという感じがして、大会前からこの試合は注目と思っていました。試合は、前へ出て行くアライ・ケンジ対、前へ出て行く野沢という、予想通りのスタートでした。初めに良いパンチを当て、ペースを掴んだのはアライ選手でした。試合後に聞いたのですが、今回のアライ選手は、野沢選手は大変心の強い選手で、カウンターなり何なりという気持ちでいたら踏み込まれて、絶対に押し切られてしまうので、それに負けない為にはリスク大きいですが、それに負けない強い気持ちで自分から前に出て打ちに行くしかない、という様な作戦を立てての試合だった様で、その通りに動いていきました。

野沢選手の印象は大変打たれ強いというものですが、1ラウンド序盤でアライ選手にペースを取られてしまいました。しかしそこから凄いと思うのは、インファイトで互角に打ち合った時に、今度は野沢選手のパンチが、これで五分という感じでアライ選手の顔面を捕らえ、一進一退のラウンドでした。途中、膝蹴りがローブローになってしまう部分が両者あり、特に野沢選手の膝が細かくアライ選手のカップを突ついてたので、レフェリー陣はそこが気になっていた様ですが、決定打ではなく、触れていると判断したので、ギリギリまでは見ていた様です。2ラウンドも一進一退でしたが、アライ選手は鼻血の出易いタイプですから、良いのを貰ってしまうと結構出てしまうので、印象点は悪かったかもしれません。ですが、内容自体は互角でした。そして2ラウンド3分33秒、見事でした。それまで左のミドル繰り返し、それを強調して右のリードをちらつかせ、そこから左のボディーをストレート気味に打ちに行き、野沢選手の視線、意識がそれに釣られた時、パンチを引くのに合わせて左ハイでした。これが見事に野沢選手の顔面を捕らえました。当たって、倒れて行く時に、既に野沢選手の意識は飛んでいました。完全な、見事な1本です。

今回の勝因は、前に前に出て行くのですが、焦って打ちに行かず、要するに必要以上に打ちに行かないという意識がアライ選手に見えた所です。今迄なら、夢中になって前傾して打ちに行き、自分の頭が突っ込んでいる分、カウンターで良いのを貰ってしまっていました。それで、せっかく攻めているにも関わらず、足が止まり打ち返されるというのが凄くありましたが、今回は足が動き、ヒット&アウェーを繰り返しながら自分のペースを掴んで行き、必要以上に遠くに打ちに行かない。それを徹底した事が野沢選手のハードパンチを食らわない一つの要因だったと思いますし、最後に左ハイを有効打に出来た踏み込みの強さというのも、そういう所から出てるなと思いました。アライ選手の見事な1本勝ちでした。

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