第3試合 フェザー級戦 5分2ラウンド

前田吉朗
(パンクラス稲垣組)

築城実
(パンクラスP'sLAB東京)
1R 4分02秒、KO/スタンドのパンチ
■前田吉朗(63.1kg) セコンド:稲垣克臣、武重賢司
■築城実(62.4kg)
レフェリー:梅木良則

築城選手は異例の大抜擢と言うのでしょうか、前田選手の対戦相手にピックアップされ、練習の仕上がりも上々という評判でした。前田選手には煩わしい事ではありますが、今の段階では連勝記録というのが、彼の冠に付いてしまいますが、それはただの連勝記録ではないと思います。相手によっては判定になりますが、彼は1本取りにいく、もしくは倒して勝ってます。判定に持ち込んでという事も少ないし、その場合でも明らかに攻め続けた前田選手がいての判定というケースが多いですから、本当に強い選手という印象です。それに対して、上手くなってきた築城選手がどう対応するかという試合だったと思います。その上手さが一瞬光るところがあり、前田選手のグラウンドコントロールから、築城選手がチョークを取りにいきましたが、これが上手さです。これが強くて上手い選手であれば決まりました。築城選手は未だ“上手い”選手だから、そこのところで前田選手は上手く凌げたと思います。技の完成度ということよりは、良い形で入られたということが前田選手の反省点かもしれないし、逆に言うと、前田選手を相手に、そういう形を展開したところに築城選手の非凡なところが見て取れ、凄く良い展開でした。前田選手はそれを仕切り直し、立ち合いで、良いコンビネーションでどんどん築城選手を崩していき、最後はパンチでスタンドダウンに近い形で決めました。その後追い討ちでキックが入り、築城選手の前歯が吹っ飛び、グラウンドにその歯が落ちていましたが、かなり危険な形で倒れ、試合後には騒然となりましたけど、強い選手と上手い選手というコントラストが、決定打という形で色濃く出た試合でした。

ただ、試合後に注意した事があるのですが、前田選手が蹴りで試合を終わらせる、その前のパンチで試合は終わっていたので「最後のキックはいらなかった様な気がしたんですよね」と、試合後に彼はポロッと言いました。それに対して、確かに人道的に考えたりしたならば「そうだね」と言いたいのですが、その判断はレフェリーがすべきもので、選手は判定が下らない限り倒し続けなくてはいけません。「やり過ぎたかな?」という部分は、試合馴れという部分で出てくると思うので、そこは鬼にならなくてはいけません。強い選手は、普通にした事でも、それなりの結果を導き出してしまうものなので、「反省をする必要はない」と彼に伝えましたが、厳しく闘ってもらいたいと思います。

KO率も上がり、連勝記録も伸び、来年はもっと期待されると思います。それを過剰に受け止める必要はないけれども、期待される故に、厳しい世界にどんどん入っていかねばなりません。これは格闘家の宿命です。対戦者を木っ端微塵にして、その場から去った時点で、優しい、普通の人間になる。そういう部分では、「やり過ぎたかな?」等で反省する必要は無いと思います。2004年最後の大会で強い前田選手を見ることが出来て良かったと思います。築城選手は惜しかったです。あのファーストチャンスをしっかり生かせたならば、金星を取れました。しかしこれは前田選手を追い込んだという実績になりますし、逆に見れば前田選手に最後の一撃まで打たせた自分の上手さ、技量の高さを、来年更に伸ばしてもらいたいなと思います。

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