セミファイナル ウェルター級戦 5分3ラウンド
ランキング4位
大石幸史
(パンクラスism)

花澤大介13
(総合格闘技道場コブラ会)
3R 0分31秒、KO/グラウンドのキック
■大石幸史(74.8kg)
■花澤大介13(74.9kg)
レフェリー:松宮智生

 個人的には今大会の大注目試合でした。何故かと言うと、前回敗れはしましたが、大石選手はものすごく高い勝率を残している選手です。前回足の大きなケガをしましたが、それでもタップせず、淡々と試合をするぐらい強い選手です。1回負けたからどうこうという選手ではありません。ましてや高い技術を持っての勝率です。それに対して、コブラ会の中でも一際私の好きな花澤選手は雰囲気があるし、以前の映像を見ていただければわかるのですが、これだけ試合毎にイメージの変わる選手は珍しいと思うぐらいです。パンクラスのリングではまだ負け越していますが、その存在感、そして花澤選手は良い選手と対戦しているので、勝敗の中ではなく、試合の中で進化しているのが見て取れます。すごく期待出来る選手で、良い選手です。

 この試合は私の予想を上回る良い試合でした。試合が拮抗する事がなく、序盤に見応えがありました。1ラウンドの立ち上がりから1分過ぎは本当に見応えのある攻防でした。開始ゴング早々、花澤選手のものすごい強い当たりのタックルがあり、大石選手は一気にコーナーまで押し込まれました。ですが、さすが大石選手は顔色1つ変えずに淡々と対処しながら、きちんと元通りに出来る技術力の高さがあります。高い技術を駆使しながら、また強い心を前に出しながらの、序盤の拮抗というのはすごく面白かったです。仕切り直してからの、再び花澤選手の強い前進に対して、今度は冷静にパンチを合わせていく大石選手がいて、何回かの攻防の中で、強い左と強い右が、花澤選手の顔面を捕らえていきます。その辺りから花澤選手のプレッシャーが徐々に弱まります。やはりそういうところから見ても、今まで大石選手はパンチやパウンドが強いと思われてきましたが、パンチの特徴としてカウンターが上手でした。これはリスリングの基本でもあります。強く組む瞬間がパンチを当てるツボです。そういう意味では、今までの大石選手の特性を出してのパンチの使い方です。そこから今度は離れ際、打ち際の感の良さ、そしてその後に大石選手が伸びたのは、パンチの回転の良さです。バランスの良い中での回転の速さ、そしてコンビネーションが出せるバランスの良さです。今回は本当の意味で、今まで言った事を全部併せ持ったハードパンチャーとしての特性が身に付いていました。強く出てくる花澤選手に対して自分の体勢を崩さず、良い距離感で強く正確に打つことを身につけていました。ですが、力で打ち切ってるわけではないので、打った直後に対処が出来る。そこが実は回転の良さの秘訣です。ですから、パンチ1つでも4段階ぐらいの成長を見せている大石選手がいて、ケガの後の久しぶりの試合ということは微塵も見せずに、逆に言うとただでは起き上がらない、休みをプラスにしたところが良く見られました。ウェルター級は益々厳しい階級になるだろうと思います。多分、今迄大石選手と闘った選手は、再び拳を合わせる時に違った印象を感じ取ると思います。それぐらい大石選手は成長していました。花澤選手もすごく良かったです。実質2つのラウンドの中で、2回ドクターチェックが入り、左目尻が結構深く切れはしましたが、目尻の奥だった事と、幸いに血が止まりやすかったので試合は続行しました。良いパンチを鼻っ柱に受け、前歯などにもダメージがあったと思います。前歯がグラつくくらい良いのをもらっても臆することなく出ていき、何とかグラウンドの展開で足を取りにいこう、何をしたいかというところを見せながらの攻防でした。ですが、いかんせんスタミナを奪われている事と、ダメージを積み重ねられたという事で、徐々に対応力が落ちていきました。それが結果的にグラウンドでのキックに繋がります。前にはたき落とされ、体勢が整えられない間に、サイドステップした大石選手のキックが顔面に決まりました。グラウンドでのキックというのは、良い形で立てていないと咄嗟に出すことはなかなか出来ません。バランス良く立てていないと足はスッと出ず、一拍遅れてしまいます。遅れてしまうと、リングのキャンバスと手の間から出てた顔は、意外に打てる場所が消えてしまいます。そういう意味では、最後は対処が速く余裕のある大石選手と、対処の遅かった花澤選手とに分かれてしまいましたが、1ラウンド序盤の1分、2分を制したところに大石選手の3ラウンドのKO勝利が待っていました。逆にそれを花澤選手が制して、執拗な波状攻撃をして、自分の形を取れていたとしたら、大石選手はタジタジだったのではないかと思います。それ程、内容の濃い面白い試合でした。1年後ぐらいにこのカードがタイトルマッチになっていてもおかしくないほど内容の高い試合でした。

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