第5試合 スーパーヘビー級 5分2ラウンド

河野真幸
(フリー)

玉海力剛
(パンクラス チーム玉海力)
1R 1分10秒、レフェリーストップ/アームロック
■河野真幸(109.4kg) セコンド:関直喜
■玉海力剛(103.6kg)
レフェリー:和田良覚

プロレスからフリーになられての河野選手の参戦。大相撲から総合デビューを果たし、今回2戦目の玉海力選手。スーパーヘビー級の試合という事で、極める時の出力を凄く感じました。河野選手のアームロックの極めが強く、玉海力選手の腕は脱臼をしていました。そうなってしまう程の河野選手の技も凄いのですが、脱臼するまで顔色一つ変えず、試合後にその腕で相手のコーナーで握手をしようとする玉海力選手を見て、逆に戦慄を感じました。大相撲から総合へ転身されて来る選手というのは、やはりそのなごりを体形の中に残されているのですが、今回、玉海力選手のコンディショニングをお手伝いさせて頂いて、この半年で体形が変わっている事、30代半ばを過ぎ、あれだけ体の形を変え、体をいじめというのは、本当に頭が下がります。体は本当に正直なので、ちょっと痩せた、何キロ減ったという事ではありません。体の形が変わって来るという事は、痩せた、太ったという次元を大きく超え、自分の体を作り変えたという事です。これが肉体改造の本当の意味です。

この後の佐藤光留選手のコメントについて言いたいのですが、佐藤選手はもっと人生の経験を積むと良いです。生半可な気持ちで玉海力選手が“パンクラス チーム玉海力”を命名し、パンクラスマットに上がったのではなく、それはただ単純に勝った負けた、そういう事でもありません。玉海力選手が、どの位体を変えたか、フィットネス等で体を変えるわけではありません。一生懸命格闘技の練習をしたから、総合格闘技の体に変わって来たんです。そういう事を考えたら、勝った、負けたよりもリングに上がったという事、そして闘ったという事、この事実は素晴らしい事だと思います。いくつも怪我をして、それでいて何の口も開く事無く、黙々と闘って帰って行きました。その浮ついたところのない男の姿が凄く印象的でした。覚悟した男の姿を若い人達は、勝ったから格好良い、負けたから格好悪いでは無く、もっと人生の経験を積んだら、今回の玉海力選手は物凄く格好良く見えると思います。闘い方ではなく、彼から人生を学ぶべきです。そんなリングに見えました。それを光らせてくれた河野選手も思い切りの良いファイトでした。あそこから腕を取りに行くとは思いませんでしたから、河野選手も物凄く良く練習をしているんだなと思いました。総合格闘技デビュー戦で対処も冷静にしていたのを見て、今のプロレスラーの人達は、総合の練習もしているんだろうなと思いました。100点満点に近いデビュー戦だと思います。リードジャブ等も、あの前に立ったら、物凄く見えづらい様な打ち方をしていました。距離感のつかみ難いジャブを、もっと上手く使えるようにリードジャブをうんと練習すると、河野選手はもっともっとシャープな試合が出来ると思います。そういう意味では、新たな船出をする男の勇気と、人生の覚悟を決めた男の勇気。“勇気”対“勇気”の闘いだった様な気がしました。ですが、この1分10秒という短い時間ではなく、もっと勇気と勇気のぶつかりあいが見たかったです。

この試合、凄く叙情的に見えました。これは人生を経験してくれば解ると思いますが、ただ勝った負けた、そういう闘いでは無かったと思います。ただ、これもパンクラスのリングらしくて、この試合は中々忘れられない気がします。玉海力選手は早く怪我を治して、また練習をしている姿を見たいなと思います。

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