第8試合 ライト級戦 5分3ラウンド

アライケンジ
(パンクラス)

ファジャル・デ・ヴィント
(チーム・シュクライバー)
3R 5:00、判定/3-0
判定:廣戸聡一(30-29)大藪吉郁(30-28)松宮智生(29-28)
■アライケンジ(68.4kg) セコンド:高橋義生、謙吾
■ファジャル・デ・ヴィント(67.8kg) セコンド:コリン・マンサー
レフェリー:小菅賢次

アライ選手はクラスを落としての、仕切り直しの試合でした。ヴィント選手はチーム・シュクライバーというのも手伝って、立ち技でガンガン来るタイプのイメージで、どんな感じで噛み合うかなと思ったら、完全に柔術の選手でした。アライ選手としても相当闘い辛かったと思います。あれだけ組んで固まってしまったら、中々自分の展開には出来ません。といっても守っているだけかといったら、下からそれなりに攻めて来る上手い選手でした。一言で表すと、強いというよりは、上手い選手でした。これだけ技術が世界に広まっていますから、その上手さだけでは、やはりプロのリングは中々一本は取れません。アライ選手も確かに一本取られそうになったりしたので、ジャッジの中では、29-28という判定もありましたが、事前に対処も出来ているし攻撃をしていくプロセスの中ではあれだけ守られてしまえば仕方無い事です。その中でアライ選手はやはり、苦言ですが、それだけ攻め込んでないという事です。アライ選手もカウンターで取ろうという気持ちがまだ強いからです。

途中2ラウンドを越えた位から、やはり自分で何とかしようと、どんどん仕掛けにいくところでは試合は全部アライ選手が作って、決められなかった試合、と一言で表すとそういう試合ですが、大変言い難いのですがヴィント選手のイメージがありません。下から三角絞めと腕ひしぎを狙う、ただそれだけで、選手として他に何の印象も残りませんでした。それは逆に言うとアライ選手が常にプレッシャーをかけて、アライ選手の光でヴィント選手の姿が何も見えなかったそういう試合です。アライ選手はこのペース良いから、もっと積極的な試合を、落ち着き無く何でも良いからどんどん打ちに行くという事では無く、圧力をかけて相手が動いたところを、もしくは自分のかけた圧力で相手を自分の思った通りに動かしながら仕留めるために必要な物をきちんとプロらしく出してくれると、アライ選手の場合はまだまだ期待できるから、そういう意味ではアライ選手はスターになるという事を、自分の内部に持たなくてはなりません。体育会系の凄く良い部分は、がっと行く時に、下から突き上げる、上から引きずり上げられる無理矢理でも良いから強くさせられるという事もありませ。ですがネガティブな部分は、周りを見て自分を決めていくという、要するに突出しても問題が起きます。そいう意味ではアライ選手には突出する位の生意気さが練習の中では必要です。練習場で生意気になれる位の必死さが必要です。

アライ選手はこれから必死さが加わったら、何かを仕出かす男だし、もっと世の中に出て行ける物を持っている選手だと思います。ここからは24時間闘う為に使うか否かという必死さです。これは廣戸道場の若いスタッフにも言いますが、24時間考えているかどうかという事につきてしまいます。人の体の神秘、治す事の難しさという事を日常の中にどれ程取り入れているかという事です。特効薬なんかありません!この部分では黒澤道場の黒澤師範と良く話すんですが、24時間自分の人生を格闘技者として、どうしちゃったんだよと言われる位までに持って来られるかです。彼の年代であれば自分のやりたい事というのはたかが知れています。美味しい物を食べたり、女性と遊んだり、コンピューターゲームをやったり等、そんな物です。私自身も散々そんな事をしてきていますから、それがどれ位楽しいかはわかりますが、自分の手に入れたいという物はそれよりも崇高な物であって、価値の高い物に見えたから秀出でた物を手に入れるには、下らんものは切れ捨てないと、人間は手に入れられません。その部分の必死さが見て取れるかどうかを、パンクラスファン、格闘技ファンの方から、アライ選手がリングに上がる時、どれ程刹那的に見えるかです。皆さんが見ていて不安に思える位、アライ選手がリングインする姿をみせた時に、実はそれを見てぞっとする相手がそこにいるという、そういった事もアライ選手が自然と結果として見せられる様になったなら面白いと思います。来年に期待します。

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