|
大石選手が序盤細かい立合いの技、パンチで相手の間合いを追い込んで行く形で、その間合いをロドリゲス選手がローキック、パンチの上下で打ち分けながら、何とかタックルで突破口を開けるかの攻防が1ラウンドでした。2ラウンドはお互い懐に入れないのならばという事で、立ち技で両者終始した、殆どキックボクシングの様な試合になりました。大石選手としては、今回空手という物をバックボーンにして闘いましたが、今年の大石選手は残念だなという印象です。というのは、試合でのダメージが大き過ぎます。1試合でいつも顔を腫らし、鼻の骨も曲がり、歯も欠け、ダメージが大きいです。大石選手の良い時というのは、きちんと足が動き、レスリングをベースにした動きの中で、それでいてパンチが出るから相手が倒れるし、パンチを食ってくれました。これだけ足を止め、正面からスッと入ろうとしたら、あの間合いならばあれ以上入っていけません。まずあの間合いは蹴りの間合いです。蹴りの間合いで蹴られて我慢し、手で打とうとしたり、蹴られるのを我慢して、パンチを打って来る瞬間をカウンターで打って行こうとする事がどれ程無謀かという事を考えた方が良いです。2ラウンド以降、ダメージもありましたが、大石選手も良いパンチを十分放ち、十分プレッシャーもかけ、ロドリゲス選手はタックルにも行けず、立ち技で闘わざるえない状況を与えているのは大石選手です。ですが具体的に良いパンチを貰っているのは大石選手です。これは完全に受けの試合をしているからで、カウンター待ちの練習をしているからです。大石選手の強かった時というのは、自分で立合いの間合いから、飛び込んでいく瞬間、組んで行く間合いの中に必ず今使いたいと思っている打撃の間合いがありました。その間合いに条件反射でパンチが出ていたから、自分からの踏み込みの良さでパンチを当てていました。そしてその踏み込みの良さがあるから相手が倒れてくれました。 少年の剣道大会なんかを見ていると分かりますが、片方が飛び込むと、片方も必ずつられて飛び込んでいき、お互いが当たりあっているというのが、小学生の武道の試合などのパターンです。相手が飛び込んでいく時に、自分も必ずつられて飛び込んでいきます。ですから大石選手が離れた間合いから、組みに行く、もしくはスタンドレスリングの感覚でスパッと飛び込んでいく、それを無意識に組み易い位置に飛び込んでいきます。組み易い位置に飛び込んでいくという事は、当然そこには打撃の通路があります。それを利用し、飛び込んで行きながら、感覚的に自分の打撃の間合いになった時に、衝動的にパンチが出てきます。その時に相手もつられて前に出てくるから、強いインパクトで自分で踏み込んで行きながらカウンターが取れました。それが大石選手の強い打撃の正体です。それを、足を止め打ち合って行く事に因り、相手のリードを受ける事が多くなりました。強い選手はリードパンチでも凄く強い物を打ちますから、それで自分のリズムを崩されて行く、もしくは、鼻血が出たり、口を切ったり等の見た目の印象があります。近頃試合直後の鼻血と口の中をざくざくに切っている大石選手はもう見たくありません。そろそろ自分の形を直して行かないと、今迄経験した事の無い、大石選手の望む強い選手とは一生手合わせ出来ないという事です。今の自分のやり方で闘えるランクの選手としか試合は組めないという事です。己の進歩を止めるかどうかは、ここでしっかりレーンを変えられるか否かです。十分自分の間合いに引き付けて、そこでプレッシャーをかけながら闘う事は空手の世界です。総合でやるのならば、お客様はそういった事は期待していません。相手の出してくる打撃をきちんとかわし、自分のダメージが少ない中で、あっさりテイクダウンを取り、安定した力で圧倒して勝ってくれる事をお客様は望んでいます。見てもわからない様な間合いだの何だのとか、自分のやりたい事が少し出来たと言っても、お客様には伝わりません。採点では1ポイント取られていますから、もう1人ロドリゲス選手に付けたら、この試合は負けていました。試合で負けて、圧倒的に見た目で血だらけにされて、内容でも負け、第3者が見て負けだとしてしまっている試合で、やりたい事が少し出来たから、この試合は価値があったというのは負け犬の遠吠えでしかありません。プロフェッショナルというのは、あっさり分かりやすくないと良いマッチメークはされないし、一流として名を連ねられません。自分の体を犠牲にしてやっているということを考えなくてはいけません。今のままでは選手生命は危ぶまれるから、大石選手に早く以前の自分の闘い方に戻してもらいたいと思います。彼が高尚な目標を持っているのは十分わかりますし、何をやろうとしているかは、私も武道家でしたから分かります。でもそれはもう少し練らなければ出来ないと思います。 >>> N E X T |