第5試合 ミドル級戦 5分2ラウンド

金井一朗
(パンクラスism)

秋元駿一
(和術慧舟會岩手支部)
2R 4:32、ドクターストップ/スタンドのパンチによる
■金井一朗(81.6kg) セコンド:渡辺大介、北岡悟
■秋元駿一(81.8kg) セコンド:岡見勇信
レフェリー:岡本浩稔

金井選手は練習中の怪我で、その間は試合が出来ず、調整という形となり、そしてこの復帰戦はどういう試合になるのだろうと思いました。対する秋元選手は、大変上手い選手というイメージがあります。試合なれもしてきて、試合前にも来年のネオブラッドを狙いたいという言葉を彼から出ていました。凄くアグレッシブな選手で、期待出来ると思います。
試合は、序盤秋元選手が落ち着いて前に前にじっくり出て来て、色々な形でスタンドの投げを駆使してテイクダウンを取りに行くというプレッシャーをかけて行き、それを金井選手が短めの速いパンチを繰り出しながら、対応する展開でした。1ラウンド自体が、互角に打ち合うという形に流れていきましたが、その中で幅広い攻撃を見せたのは秋元選手だと思います。パンチを見せつつ、キックを見せ、両脇を取り何とか展開しようとしました。金井選手はデビュー戦の頃から大人しい選手だなというイメージで、素材が良いだけに、この真面目さが災いしなければいいなと、そしてもっとらしさを見せて欲しいのに、というイメージの選手でした。今回は“ism”という一つのキーワード、これが金井選手を後押しした様な気がしました。追い風になった様な気がします。今迄、もしかしたらパンクラスという名前が金井選手にとって足枷になっていたのではという気がします。パンクラスだから負けられない、がんばらねばならいないといった様な足枷になっていたように感じられました。それに対して今回は、川村戦、WINDY戦と、思い切りの良い試合が続いて、さあ自分の番、でその後には先輩選手達が続くわけです。この挟まれた金井選手の胸中は如何に、といった感じで、これは興味深かったです。試合後、金井選手を捕まえて、話を聞きたいなと思った位です。金井選手は試合が終りホッとしていました。

戻って、試合が変わったのは、金井選手が前に前に出始め、右のストレートが当たりだした事からです。それに因って秋元選手が正面に立つ時間が長くなって来て、体が起きて来てしまった事で、序盤出して来たローキックと同様ではなく、浅くなり出しました。そしてクロスのイン・ローが凄く良かったのですが、これも影を潜め始めました。これが見えない“ism”から後押しされて前に出て行った金井選手が、今回勉強した部分だと思います。自分から動く、何かして行く事です。今迄はどうしてもお互い打ち合っている間に運悪くとらえられた側だったのが、初めて自分の意思で強く試合をしたという印象でした。そういう意味では金井選手はismという見えない気に、強く影響、そして勉強させられた試合の様な気がします。パンクラス初勝利という事もありますが、それより先に、こうやって勝つんだなという事が何となく分かったなら良かったと思います。試合中、秋元選手はダメージも大きくなり、カットも増えて来て、結局右ストレート、またはフック気味のパンチが当たるので、左目が開かなくなってしまいました。ドクターの裁定は数箇所の細かいカットと左目のダメージが重いということで試合を止めました。残りは28秒で、最後まで試合をさせてあげたい気持ちと、セコンドからのそういう声がありましたが、ドクターがダメージに因り決定したので、今回、秋元選手はがんばったけど打ち負けたという風に考えてもらった方が良いかも知れません。ダメージという点では、金井選手も最後足が止まり、ふらふらして打っていましたが、2ラウンド3分半過ぎ辺りから、試合終了までの1分間はお互いパンチは遅いしふらふらしてました。この中で金井選手が最後まで打ち切ったところに、今回のism主催の意義があった一つのポイントの様な気がします。パンクラスのファンとしては金井選手の嬉しい初勝利だと思うし、秋元選手としては後30秒がんばりたかったという惜しい試合だったと思いますが、こういう事から一つ弾みを付け、公言したネオブラッドで栄光を掴んでもらいたいなと、益々の努力をしてもらいたいなと、そんな秋元選手で、そしてそんな金井選手でした。

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