第3試合 キャッチレスリングルール 無差別級 5分2ラウンド
佐藤光留
(パンクラスism)
vs 花井岳文
(TWIST)
2R 5:00、判定/0-0
判定:廣戸聡一(20-20)梅木良則(20-20)和田良覚(20-20)
■ 佐藤光留(81.9kg) セコンド:渡辺大介、川村亮
■ 花井岳文(82.7kg)
レフェリー:小菅賢次

キャッチレスリングというと、どうしても拮抗する印象がありますが、過去を見ると意外に選手自身が動かそうという試合が多いので、動きはあるのですが、この試合は緩急が凄くありました。一本を極める実力者同士の面白い試合で、私からすると、大変実力のある、コミックバンドのショーを見ている様な感じでした。これはふざけているという事では無く、会場から真面目にやれという声がとびましたが、ある意味褒め言葉だと思ってもらって良いと思います。それを発しているのが、どう見ても格闘技に精通されている方々ではありませんでした。コミックバンドというのは普通のミュージシャン以上に技術力、実力がないと人を笑わせるコミカルな演奏が出来ないという事と、音楽に造詣が深くないと、コミカルに演ずる曲の選定から、アレンジまでが出来ないし、笑わす対象のお客様に合わせてショーをコントロール出来るかどうかが大切なところです。今回は二人とも、リングが高く感じられるほど、高いところで試合をしているというところに凄く興味が沸きました。実は試合後両選手にコメントを取りに行き話を聞いたのですが、お互いを褒めて、尊敬をしていました。ここにお互いが実力を発揮して、相手の実力を計り知れた上で試合をしていました。

花井選手は開始早々、素晴らしく良いタイミングで下から三角絞めに入り、対して佐藤選手は物凄い速さで反応して、ちょっと腕を引き抜いて腕を曲げ、自分の肘を支点にして花井選手をリフトし良い角度で落として行きました。普通は上げたら落下させますが、それを下に投げに行ったのですが、これを素早く感じた花井選手が受身の為に技を外しましたが、これを執拗に追うと頭から落ちそれだけでダメージを受けてしまう事があります。序盤は花井選手が足首を取りに行きましたが、佐藤選手も足首を取りに行き、これを繰り返している内に、花井選手は佐藤選手の足首関節の能力を感じたので、花井選手が足首を取られまいとしながら、足首を取りに行く、そういった素晴らしい応酬がありました。佐藤選手がヒールを取りに行き、それが浅かったとは本人は言っていましたが、少し応用をかけ、修正をかけたなら、十分一本取れる形に入っていましたし、それを許さない花井選手の、これら技のアンサンブル見たいなものが凄く見取れて面白かったです。前回の佐藤選手の試合が凄くプロレス的でしたが、それと同じ楽しみ方を今回は柔術っぽく、グラップリング色を強くして佐藤選手がそれに対応した感じでした。花井選手は余裕を見せる様に、もしくは相手に一歩先手を取らせる様に足を取らせる様にし、それを無視していた佐藤選手ですが、要するに先手を取らせるという事は、実は先手を取っている事で、ここを攻めて良いよという事は、待ち受けている事なので、約束稽古のカウンター練習の様なものです。それに乗らないようにして、そこに色んなセッションが入り、相手の実力を見つけて行って、お互いに引くに引けない状態をどんどん作っていき、今度は自分が取らしてやる、といった感じでお互い取らし合わせようとして見たり、こんなところの意地のぶつかり合いがり、相手を尊敬するが故に、お互い意地をむくむくと見せながら技の応酬をして行く状況なんかは凄く面白かったです。

ちょっとお客様を置いてけぼりにしてしまったというところでは、あまり知られていない選曲を披露してしまって、崩して、自分達は凄く楽しかったという、そういうコミックバンドの演奏の様な印象が沸きました。その位面白かったです。今度は相手を変えて、花井選手の総合も見たいと思いますし、彼はもっと思い切りの良いことをすると思います。佐藤選手は試合中に無駄な事を段々しなくなってきましたが(笑)、彼が素晴らしいと思うところは、自らプロレスラーというイメージで、そういう意味の鈴木選手を啓蒙しながら、プロレスラーという背中を追っかけたりしている事、試合前の何週間で準備しての様な要するにセオリー等はどうでも良いから、不可能を可能にして行くんだという、飽くなき挑戦をリングの外にちゃんと置いている点です。実はこれが、先程の玉海力選手にも通じる自己への挑戦で、これが修業です。花井選手も修業という段階を自己消化しているから、準備段階が足らなかろうが何だろうが、その中で自分の力を出すんだというところで、この試合は凄く面白かったし、武道チックで面白かったです。映像を見る機会のある方は、ところどころスロー再生で見て下さったら面白いのではないかなと思います。

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