第5試合 ウェルター級戦 5分3ラウンド
ランキング7位
×伊藤崇文
(パンクラスism)
vs ロバート・エマーソン
(ノーリミッツ/チーム・オーヤマ)
3R 5:00、判定/0-3
判定:廣戸聡一(28-30)和田良覚(28-30)小菅賢次(29-30)
■ 伊藤崇文(72.4kg) セコンド:渡辺大介
■ ロバート・エマーソン(73.5kg)
レフェリー:梅木良則

キックボクサーという肩書きも手に入れ、それを総合の試合でどう活かしてきているかと言う事で、前回の試合の中では、キックを始めてきちんとした、自分に合った形の打撃というもののイメージを掴んだので、凄く強いスタンドになり良い形だ、という話をしましたが、それは今回も変わりませんでした。特に、今までだとどうしても、ローキックを蹴るためのローキックという印象が強くありました。特に総合ではそうでした。総合では実はローキックはあまり美味しいところがなく、危険性も高く、カウンターを取られ易く、ローキック自体の一発で倒れる事も殆どありません。ですからそれでカウンターを合わされてしまったり、もしくはそれに合わせて組まれてしまう事等を考えると、リスクの高い攻撃です。が、今回の伊藤選手に関しては、ノーモーションの引きの早いローを併せながら、相手を動けなくしていくという点では伊藤選手のローは凄く効いていて、目的は十分果たせていたと思います。ただ、多分2ラウンド辺りだと思いますが、ミドルキックがエマーソン選手の肘でディフェンスをされた時に、足首を痛めてしまった様で、ここから精彩を欠きました。これが蹴りを出す怖い点でもあります。ディフェンスとしたら良い角度で、オフェンスとしたらとても嫌な角度で足首に肘が当たっていましたから、その後の展開がどうしても後手に回ったのは、一つのターニングポイントだったと思います。

しかしながら、今回の判定勝利の部分というのは、そういう意味で転がり込んで来たものではありません。伊藤選手自体は間違いなく実力が上がっています。ですが、エマーソン選手の一つずば抜けた才能がこれを阻みました。これはタックルを切る背筋力の強さでした。十分とは言いませんが、タックルが8割良い形で入っても、全て切られました。物凄い背筋力でしたから、それが伊藤選手としては予想外だったと思います。それが分かっていたのなら、他の崩し方に入りたかったと思いますが、それにしてもエマーソン選手の対応が早かったです。それ程に背筋力が強いと、実は細かいパウンドも強いです。腕力で打っている訳ではないので、背筋力を一瞬だけ活かし、細かなパウンドや鉄槌を打って行ったりという中で、自分のペースを作って行きました。伊藤選手は少し浅めのタックルという形になってしまっているので、そこから無理な体勢で力を使ってしまっている為、後半は後手に回る事が多くありました。ただ、伊藤選手が素晴らしいと思うのは、3ラウンドになり、息は上がっていてもスタミナは落ちませんでした。こういう点はやはり、もう10年程前になると思いますが、ネオブラッドの天才・伊藤現るという、今でも忘れません、決勝は柳澤龍志選手でしたが、伊藤選手のあの縦横無尽に動き、後半になり息が上がっていても、出たり入ったりを繰り返す伊藤崇文が未だここにいて、それだけを見れば安心です。勝負だけを見ればエマーソン選手は上手く強かったですが、伊藤選手が弱かったという事ではないので、それが入れ替わる可能性が次の対戦では起こりうるのが格闘技の世界です。そういう意味では内容の濃い試合でした。エマーソン選手の質の高さは十分わかりましたので、次のマッチメークは要注意、大注目の選手だと思います。

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