セミファイナル 第2代王者決定トーナメントAブロック 準決勝 5分2ラウンド
ランキング1位
ポアイ菅沼
(TWIST)
vs 桜木裕司×
(掣圏会館)
1R 4:47、TKO(レフェリーストップ)/グラウンドのパンチによる
■ ポアイ菅沼(95.7kg) セコンド:花井岳文
■ 桜木裕司(92.0kg) セコンド:瓜田幸造、長谷川秀彦
レフェリー:廣戸聡一

ここまで危なげ無い勝ち方をしている菅沼選手と、逆転男の異名をとる桜木選手の試合でしたが、今回の桜木選手は逆転を狙うと言うよりは、序盤から飛ばして行くのがありありと見えましたし、これは掣圏会館の二人に言える事ですが、結果的に逆転勝ちにという結果になっておりますが、スロースターターではありません。やはり序盤から出し切っていきますから、そういう点では、臆する事無く向かって行ったという所がこの試合の第一印象でした。

勝負を分けて行ったのは序盤の立合い、パンチの応酬で桜木選手が見切り入って行くところで、その部分は凄く面白く、菅沼選手も良いパンチを喰らい、ちょっと距離を取る事もありました。
菅沼選手は思い切りの良さが最大の長所ですが、それが桜木選手の固い組み立てを上回りました。何と言っても思い切りの良さは冷静であるという事で、このパンチが効いたと思ったらもう一発行きますが、初めからもう一発行こうと思っては攻撃をしていません。その部分でのフレキシブルさが勝負を決めたという感じではありました。桜木選手は相当我慢しましたし、下からも随分と攻撃を仕掛けましたがそれを許さなかった菅沼選手が冷静に対処して行きました。

結果的にはパウンドなり、パンチという物が、菅沼選手のイメージから出て来ますが、唯一菅沼選手らしい試合をしたのは、佐藤光留選手との試合だったと思います。組んで投げる能力を発揮した試合でしたが、良い選手というのは両足でしっかり立っていながら、組んで行くという事をきちんと身に付けている選手で、安定しているので、打撃も結果的に強くなります。ですから組む以前に、当たって倒れてしまったという試合になってしまいます。ですから、そういう意味では、菅沼選手らしい展開にはなりました。首を狙いながら、軽く打つけど鋭い感じのパンチを敢行しながら、相手をコントロールしていったという所では、決勝進出に相当する勝ちっぷりでした。この試合は私がレフェリーでしたが、もう少しやらせてあげようと思えば出来たのかもしれませんが、口の中がざっくり切れていましたし、これ以上は続行不可能という判断で止めましたが、大きなダメージになってしまうと、桜木選手の素晴らしいポテンシャルが下がってしまいます。

人間の体というのは不思議なもので、大きなダメージを負うと、体の細胞自体が壊れるプロセスを憶えてしまいます。ですから一回怪我をしてしまうと、なかなか怪我をした後の体の癖というのが抜けません。これがスランプを長引かせる最大のポイントです。そういった事をさせたくないので、勝負は勝負ですが、決して自分の人生、命を賭けることではないと思います。そういう価値の有無しではなく、人生、命に関する事を私が決める事ではないと言う事です。私達レフェリーは人生を一生左右させる様な事まで決める権利はありません。試合の優劣を決めるという事での全権限はメインレフェリーが持ちますが参加選手の運命、人生まで決めるほどの責任は負わされていませんから、そういう意味では大怪我になる前に、ここまで行けば試合は決まったなという所で止めるとなると、今の総合格闘技の試合というのは、どちらかが倒れるまでやらせてしまうという風潮にありますが、そうまでしなくても良いような気がします。パンクラスという総合格闘技の常に変換、ハイブリッドしているリングという中では、ここまで来たら一本で良いではないですかという所にレフェリングの方向性というのは決まって来ていて、そういう意味で試合を止めたという所で、明らかに決着の付いた試合でした。
菅沼選手はこれでヘビー級の王者に近づいたので、どういう試合をしてくれるか、楽しみな決勝戦です。

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